286話
本日分です
「うーうー♪」
「なんや、楽しそうやん」
「う~♪」
「ワフ」
「まぁうれしいのはええこよとやな」
「ちったぁ手伝ってくれませんかね?」
久しぶりに料理するからなんかうまくいかんなぁ・・・別に失敗はしてないけど、要領よくいかないって感じ。
うーん。『真化』もこういうことには効かないんだから。
「いや、単純に恭輔が鈍ってとるだけやと」
「そうですね。あくまでも技能の習得加速ですし」
「忘れるのも早くなってない?」
投げ捨てたいその効能。
慣れない・・・忘れてしまった調理に四苦八苦しながらなんとか完成。
ハンバーグ!!・・・ニホリが忘れたから俺もこれが初めてだったか自信がない。カレーだった気もしてきた。
「ぴ?」
「すらっぴは母さんが上げてたお菓子じゃん。流石に作れない」
てか、うちの子の初めてのご飯って大体母さんが食べさせた物になるな・・・・そうなると市販品ばっかりなのでは。
い、いや。食事って意味で、俺の手作りって意味なら違う物だしセーフ。
まぁ大体肉なんだけど。ピッちゃんくらいじゃない?野菜盛ったのって。
「ほーれはこべー」
「ワン!」
「「「ちゅちゅ!!」」」
ねっさんとコロちゃんにみんな分のご飯を渡して・・・フミとニホリと俺分は俺が運ぶと。
一端テーブルに置いたら庭に出てしーちゃんたちの確認。
「足りてるー?」
「めぇ」
「・・・!!」
「うむ。問題なさそうね」
まぁ飯作る前に見たからないとは思うんだけど。時々馬鹿食いするからなぁ・・・ユニちゃん。
成長期だからか食べる量が読めない読めない。特にダンジョン潜った日で激しく戦った時とかはすごいことになる。
お庭でゆっくり食べている二匹を見てほっこりしつつ、俺も自分のご飯を食べようと家に戻る。
すると、先に食べていると思っていたフミとニホリが食べないで待っていた。
「あら、先に食べててよかったのに」
「ニホリが待ってるーって。それでうちも待つーって」
「うーうー!」
「一緒に?」
「う。うう」
「うん?」
とりあえず席についてと言われたので座る。
すると、自分の分のハンバーグを俺の前に持っていき、ニホリ本人は俺の膝の上に着席・・・?
「何故に」
「うー」
「食べさせて?・・・まぁいいけど」
「あー!!ニホリズルイで!!」
「うーうー♪」
「クッ・・・恭輔!明日うち!うちに!!」
「へいへい。わかったよ」
ニホリは甘やかされたいようだ。
まぁそれくらいお安い御用だ。フミはうらやましがっているが、明日でいいっていうだけ、ニホリの事を見ているのだろう。
てか、今日のニホリ本当に機嫌がいいな。普段なら箸持ってこんなにゆらゆら動かないのに。
お行儀良くないぞ
「う~♪」
「マジでご機嫌」
「うー・・・まぁそれだけ我慢させとったわけやしー」
「確かになぁ・・・俺とお前がいろいろあった時も気を使わせてたしなぁ」
そう言うことでも。気が付かないうちに、ストレスを貯めさせていたのだろう。
コロちゃん達には定期的に好きにさせてるのに、ニホリにはそういうのなかったのもでかいな。
何かしてやれれば、もう少し変わったかもしれないのに。
「・・・う?」
「・・・定期的にあーんする?」
「う!」
「よしよし」
「う~」
「なぁなぁ。はよ食べようやぁ」
「ふふ。それもそうだな。それじゃ・・・」
「「いただきます」」
「うー!」
ご飯を食べさせて、時々俺も食べさせてもらって、食べ終わると、普段のニホリ復活。
食器洗いの仕事を俺から華麗に奪い去りただいまデザートのアイスを堪能しております。
「神業やったな」
「まさかあの瞬間に浮かされるとは・・・」
食器をキッチンに運んで、さて洗うかと洗剤を持ったところでニホリに浮かされた。
『浮遊』だな。あれは自分以外も浮かすことができる。もちろん俺も例外じゃない。そのままソファまで一直線に飛ばされて、俺から洗剤を奪取。流れるように皿洗い開始。
いきなり飛ばされて呆然としている俺はフミのしっぽに受け止められてニホリの皿洗いをボケーっと見ていた。
見てることしかできなかったよ?びっくり。
「てか、そんな強行するものか?」
「う」
「ええ・・・」
私の仕事ってええ・・・。
普通食事の皿洗いってその日ご飯作った人間がやるものなんじゃ・・・ああ、そっか。本当は私が作るはずだったからってことか。
「う!」
「・・・じゃあ餃子で」
「うー!」
明日は何がいいかと聞かれたから、なんとなく浮かんだ餃子と答えた。
すると、超笑顔でよろこんでーとのこと。むっちゃ嬉しそうに言うじゃん。
でも、嬉しそうなニホリも見て、皆も嬉しそうにしている。
すらっぴはいつも以上に跳ねてるし。ふーちゃんもいつもよりしっぽを多く振っている。
ピッちゃんはニホリの頭の上で一緒にアイス食べてる。
うん。これだよ。これがあるべき姿だよ。
「・・・ようやく戻ったなぁ」
「・・・よかったなぁ恭輔」
「フミもありがとうな。いろいろ迷惑かけた」
「ええってええって。うちも家族の一員やもん。これが普通・・・やろ?」
「そうだな。本当にそうだな・・・」
家族で一緒にご飯食べて、一緒にテレビ見て、一緒に寝て。
俺がある程度大きくなってから・・・小学校高学年くらいだろうか。そのあたりから、親父と母さんは家を空けることが多くなった。
今の方が家によくいるくらいだ。気がついたら海外にいるような人だったしな。
姉ちゃんはいたけど、姉ちゃんは姉ちゃんで友達と遊んでたりで夜いないことは多かった。
「うん。これがいいな。やっぱり」
「うん?どうしたん?」
「なんでもないよ。ポヨネ。吸っていい?」
「みゅ!?」
「おおー。顔真っ赤や」
「犬なのにわかりやすいぞポヨネ」
「い、いきなり言われたからですよ!!・・・でも、し、したいなら・・・どうぞ・・・」
「よし」
「え、今の本当やるながれなん?」
当然だろ。
ん?どうしたコロちゃんふーちゃんねっさん。
「ワン」
「クゥ」
「ちゅ」
「・・・なるほど、一理ある」
「どこにあるんや」
誰が一番いい吸い心地か・・・決める時が来てしまったか・・・。
「ぴ!」
「すらっぴは液体だから吸ったら多分お互いに死ぬからダメ」
「ぴ、ぴ~?」
「すらっぴの場合は・・・」
すらっぴを持ち上げて、首元にまで持ってく。そこで俺の首元を一周するようにサイズを変えてもらって・・・
「できた、水マフラー」
「ぴー!」
「涼しい・・・夏のお供に・・・」
まだ4月だけど、これいいなぁ・・・夏になったら標準装備にしようかな。
 




