282話
本日分です
「ふんっ!!」
ガーゴイルの腕を掴んでへし折る。
相手は石像。これだけでは止まらない。続けて魔法でガーゴイルの立っている場所を凹ませる。
姿勢を崩した瞬間、手で掬いあげるような動きとあわせて下から棒を生やす。
すると、自分の体重込みの威力になるので破壊力が上がる。
ガーゴイルが地面から生えてきた土の棒にぶつかり砕けた。
「はい終了」
「ワン!」
「お、コロちゃんも終わったか」
今回は俺とコロちゃんで二体ずつ相手にしていた。
俺は力押ししないで戦おうとするから時間かかるけど、コロちゃんは切るだけだから毎回早い早い。
俺も魔法で無理やり潰した方がいいんだけど、それだと近接戦にぶっちゃうし。
「さて、全員とりあえず準備運動はいいか」
「ワン!」
「クゥ!」
「ぴ!」
「きき!」
「ちゅ!」
「るる!」
「にゃ」
「めぇ!」
「うー!」
「おー!」
「ニホリとフミはやってないけどこの際いいか!!」
さぁ、ボス戦のお時間です。
別にいつものことだから今更言う間でもないことだが、俺はボス戦がどんなモンスターかを聞いたことはない。
だから今回も知らないし、この先も聞く気はない。ただ、何かフミがこちらを見てニヤニヤしているのだ。
なんか前もこんなことあったなぁ・・・確か狼君と象君の時。俺が怯えられた時だな。今度は撫でるくらいできるだろうか・・・
ま、まぁそんなわけで、今回も何かあるっぽい。
44層ボス戦。気になるお相手は・・・
「ウキ?」
「猿か」
もちろん普通の猿じゃないんだけど、てかこれゴリラだろ。
筋肉質な腕にとかまんまゴリラだよ。だけど、フミ曰くこいつは猿らしい。バナナでも食べてんのか?
観察するかと全身を見ようとすると、すぐに何かを投げつけてきた。
「おお!?」
とっさに槍を撃ちだすことで相殺。
何を投げてきたか見ると、それは岩だった。
だがおかしい、ここの環境は一面森と平原が半分ずつくらい。岩なんて周囲にはない。
いきなりどこかから取り出したかのようだ。
「・・・まさかの魔法タイプ?」
だけど、これだけか?特にフミがニヤニヤする要素ないんだけど・・・
使ってる魔法の種類か?『土魔法』だよなこれ。
うーん?岩を投げられるほどの怪力・・・これは別に俺もできるから変わったことじゃないしな。
え、なんだろう。生態が変わってるのか?だったらここじゃなくて下の階層でニヤニヤするだろうし。
「フミのあれはいったい?」
「・・・ワフ」
「・・・クゥ」
「え、何わかったの?」
コロちゃんとふーちゃんが俺の隣で何か納得したように頷いている。
てか、後ろを見るとみんな同じ感じだな。すらっぴはなんか笑ってるし。しーちゃんは呆れてる?
反応もまばらだけど、何かくだらないことがわかった感じか?
「うーん・・・?」
「ウキィ!!」
「邪魔」
もう一度同じように岩を投げてきたので同じように槍を撃ちだして相殺する。
人が考え事してるんだから後にしてほしいよ・・・あ、逆か。倒せばいいのか。
「ふーちゃん!」
「ク?・・・クゥ!」
え?自分でやらないの?ってどういうことですかふーちゃん。ボス戦はみんなと戦うでしょ一応。
その反応で少し遅れたが、ふーちゃんの炎が猿に向かう。
様々な軌道で向かっていく炎に、なすすべもなく猿は焼かれ・・・ることはなかった。
そのガタイに見合わない俊敏さとしなやかな動きですべて回避した。
「そこは猿なの!?」
「クゥ!?」
しかもきっちり着地まで決めやがって・・・
ふーちゃんは避けられると思って魔法撃ってないから完全驚きで動き止まったし。
なんか後ろですらっぴはよけい喜んでるし。
「え、なに。なんかつぼに入ったの?」
「・・・クゥ~」
「ええ、ふーちゃんもー?」
やーめたって言って、後ろに下がってしまった。一体なんだというのだ。
コロちゃんは何かに気がついた時から少しやる気がそがれたみたいだけど、まだ戦う気みたいだ。
てか、他の子のやる気が完全になくなってるのは本当に何。
「・・・ワフ?」
「んー。まぁ一人でも勝てそうだけど・・・」
ふーちゃんの魔法が避けられたのは、ふーちゃんが本気ではなかったからだ。
もちろん火力という意味では本気だったが、速度や規模に関しては手を抜いていた。だからこそできた隙間を縫って避けられたんだけど。
この隙間、俺でも別に埋められる。ただ、ボス戦というのは非常にいい場所なのだ。
なにせ他のモンスターの邪魔が入らない状態で一体のみを観察できる。
すぐ魔法で倒してしまうのは、いささか勿体ない気もする。明日になれば復活してるからいいっちゃいいんだけど。
「まぁ・・・一緒にやるか?」
「ワン」
「めぇ」
「ワフ?」
コロちゃんと一緒に戦うかとしたとたん、しーちゃんが前に出てきてコロちゃんに話しかける。
そこで何かを聞いたコロちゃんが、しーちゃんと変わって後ろに下がる。
「しーちゃんやるの?」
「めぇ」
「鉄柱?まぁ出来るけど」
鉄柱を猿の周りに出してほしいとは、また変わった注文だ。
注文通り、猿を囲うように10本ほど作り出す。
猿は、いきなり地面から生えた鉄柱を警戒して包囲から抜け出そうと後ろに飛びのいた。
だが、しーちゃんの方が速かった。
雷が鉄柱を避雷針代わりにして進み、そのまま雷の檻が完成した。飛びのいてしまった猿は、檻に触れてしまい感電する。
「ウギィ!?」
「あらら」
「めぇ」
これでゆっくり観察できるだろうって・・・これがしたかったのかしーちゃん。
ところでさっき呆れてたのは何?
「・・・めぇ」
「ええー」
フミに聞けだってさ。ちぇー
まぁしーちゃんが折角作ってくれた檻・・・物騒だけど。
ゆっくり観察するとしましょう。
やはり、猿っぽくない。だが、先ほどの動きは間違いなく猿の動きだ。
まぁフミが猿だって行ってんだから猿なんだろうけど。あと、ゴリラって二足歩行長続きしないんだよな。それに対して、こいつは基本ずっと2足立ちだ。
さっきの回避の時も、2足で跳んで躱してたし。ゴリラなら4足移動のイメージあるからな。まぁ最高速度は速いんだけど長く続かないしな。
雷の檻におびえながらも、脱出しようとしているようだ。
鉄柱の高さまでした雷がないので、そこを飛び越えようというわけだ。なるほど、知能はあるみたい
「まぁ伸ばすんだけど」
「めぇ」
追加するんだけどって言ってる。
最初は5メートルくらいだった鉄柱を15メートルまで延長。それに合わせて雷を追加してもらって檻も拡大。
それを見て、ゴリラ・・・じゃない。猿がこちらをにらんで岩を投げてくる。
今度は力押しか。
だけど、意味はなかった。
岩が雷に触れたとたん、消滅。焼き消されたのだ。
「・・・ウキ?」
「おお、こうなるのか」
「めぇ」(ドヤ
しーちゃんが一瞬だけ檻の雷を操作して一点に集中。岩を一瞬で消した。
あまりの速さに目で追うことはできなかった。
しーちゃんが隣で説明してくれなかったらわかんなかったな。
猿は何もできなくなってしまったのか途方に暮れている。
流石に可哀想だな。
「しーちゃん。ほい」
「めぇ」
しーちゃんに特製鉄球を渡す。これだけでやることはわかるだろう。
鉄球を加えたしーちゃんの口元あたりに雷が集中。最大まで貯まったところで撃ちだされる。
放たれた鉄球は、猿にその存在を認識させる前に体を貫通。そのまま猿の上半身を消し飛ばした。
「・・・威力高くない?」
「めぇ」
「改良ってレベルかこれ?」
ヒュドラの時は球の形に穴開けるだけだったけど、ついにここまで来たか。ヒュドラも一匹で倒せるんじゃない?
猿を倒したことで、宝箱がいつもの如く出現。それの中身をニホリが開けて・・・
「うううう!!!」
「おお!!スキルスクロールだ!!!」
俺がいるときに出てきたのいつぶりだこれ!!しかも魔石一杯だし!!
あの猿いい奴だな!!
「やってることド外道やったけどな」
「まぁ趣味は悪いわな。もうやらん・・・ところで」
「うん?」
「なんでみんな面白そうだったの?」
「いや、『土魔法』使えて俊敏で怪力てそれもはや恭輔やんって」
「・・・ほう?」
「う」
「ワフー」
「え?ニホリ?コロちゃん?」
なるほどなるほど・・・




