278話
その月ごとの行事をニホリ視点で書きたくて仕方ない。
「ロラちゃーん」
「」(ワー
「ローラちゃーん」
「」(ワー
「ロrrrrらちゃん」
「」(ワー
「・・・楽しんですか?」
「くる?」
「楽しい」
「」(コクリ
ロラちゃんを顔の目の前まで持ち上げて、名前を呼んであげるとすっごく可愛い。
「あ、バン君もやる?」
「くるる」(フルフル
「あら残念」
振られてしまった。
バーベキュー大会の後日。
あのデカい野菜たちを使い切れるわけもなく、残った物は研究所に持ち込んだ。ニホリお手製野菜炒めとなって。
いや、そもそも研究用は研究用であるから。それを食べはしないわな。後ジャンル問わずに研究員って不健康な食事することが多いからためにはね。特に独身。
「外部から持ち込んだ植物の巨大化か・・・それも、周囲の物を巻き込んで」
「巻き込むってか、一つになったって感じ?」
そんな会話を軽く親父として、今日は終わり。
親父の方が忙しいらしく、いつものおしゃべりはないのだ。
まぁそうなると、俺が暇になるなんだけど。家帰ってダンジョン入ってもいいんだけど、そうすると今現在家で遊んでるであろうみんなの邪魔しちゃうし。
・・・フミでも連れてどっか行こうかな。
「呼んだー?」
「フミ?用事終わったのか?」
「終わったで。虎ちゃんにいろいろ教えてきたわ」
今日ここに来たのは俺とフミだけ。
フミの方は母さんに呼ばれていた。母さんの仕事である、動物たちのダンジョン関連。
特に、冒険者達についていく・・・『テイム』だな。ダンジョン内に動物を連れていくことへのあれこれが仕事だ。
これの一環として、母さんが面倒を見ていた虎を三崎さんに預けることになった。その本格的に預ける前に、フミにいろいろ教えてもらうってことだったらしい。
本来なら普通の大型犬とかの方がいいんだろうが。三崎さんに預けることを考えるとな。逆に動物たちが危険だ。あの虎ちゃんだってギリギリだろうが。まぁ『テイム』持ちが現れるかどうかで話は変わるしな。
最悪『テイム』なしで連れていく人間だっているだろう。そういう小説あるし。
俺からしたら、正気の沙汰ではないが。
「そうなん?」
「だって、意思疎通できないじゃん」
「・・・いやぁ」
「うん。俺は例外ね?」
俺で比べんな。
俺の場合元々だからいいんだよ。てか、何も『テイム』を持ってろってわけじゃない。意思疎通が完璧にできていれば文句はない。
言葉がわかることじゃなくて、意思疎通が完璧なこと。
「母さんレベルでようやく一匹連れてけるくらいかな」
「うわぁ。恭輔のハードルが高い・・・」
「しゃーない。そもそもダンジョン行くのに、言うこと聞かないかもしれない子を連れて行くのはいかんだろう」
「まぁそれはいかんよなぁ」
だからこその意思疎通。言うことを聞いてくれるってのは、動物たちが勝手に動いて人間に被害があってもダメ。その逆もダメだから。
動物たち側からも、人間を止められないといけない。
あんまりうちだとないけど、うちの場合コロちゃんとかに俺がライン越えるとがぶがぶされる。
「あと、ニホリもむっちゃ怒るし・・・お?」
「ん?どうしたん?」
「いや、あれ」
研究所の近くには、運動場がある。
元々研究所近くはただただ広い土地が広がっているのだが、その一角が運動場になっているのだ。
そこで、10人くらい何かやっている。研究員たちのサークル活動は夕方からだし、今の時間は仕事中だから何してんだろうよ思ったのだ。
「ああ、あれやろ。冒険者の試験中」
「ん?あれが?」
「なんや、組み分けした一つがここでやることになったーお義母さん言うとったで」
「へぇー」
ここの研究所も一応・・・場所は隠されてないんだっけ?ん?どうだったか。
まぁいいか。とにかく、あれが試験なのか。特に変わったことをやっている感じはないな。平均台とか置いてあるのがちょっと珍しいかな?運動会の障害物競走以来かな。
あ、藤岡さんいる。一緒に走ってるけどあれなに。
「え?・・・ホンマや。走っとるわ」
「圧倒的だな。わかってたけど」
周囲の女性達10人を置き去りにしている。トラックをぐるぐるしているから、あれは長距離走中かな。
今見てる間にも、何人かを周回遅れにしている。てか、運動試験は男女混ぜないのか。混ぜたところで意味はないんだけれども。
むしろ女性の平均が見やすくていいのか?
「恭輔も走ってくる?」
「いやなんでだよ・・・ああ、でも近いうちに近い事するかも」
「おお?」
「最近俺の人体能力図ってないし」
『真化』を入手してすぐに一回軽くやったけど、あれだって軽くだからな。あくまでも、体に悪いころがないかみるだけ。
本格的な身体能力検査はしてない。前回やった時からレベルもかなり上がったからな。
「今いくつなん?」
「・・・そろそろ90?」
「ああ、多分なんね・・・」
見ないからな。
実は隠された機能がありますっていわれても驚かないくらいにはカード触ってないからな俺。
きっとそういうのは今度増える冒険者の方々が探してくれるよ。
「あ、そういえばなんでさっきうち呼ばれたん?」
「ん?・・・ああ、そうだ。暇だからどっか出かけようって誘おうかと」
「デート?」
「行ってなかったからな」
例にも漏れず『真化』の件でな。
「お、おめかしした方がええんやろか」
「いや、そのままでいいでしょ」
「む。可愛くしたいやん」
「?フミはもう可愛いぞ?」
どっちかというと綺麗系だけど、狸モード可愛いし。普段の仕草もかわいいぞ。
そう言った途端に顔を真っ赤にさせて狸モードになって俺に引っ付いてきた。
うむ、可愛い。こういうところがいいんだよなぁ。
「とりあえず、この辺散歩でもするか」
「・・・するぅ///」
「なんで狸モードで何だ・・・」
「え、ええやん。いま恥ずいんやから、顔真っ赤やし」
「それが見たいんだけど」
「・・・部屋でなら」
俺の部屋・・・もはやみんなの部屋だけど。いや、俺とフミはずっと寝てるけど、他のみんなは割と違う部屋に行ってたりしてるから俺とフミの部屋か?
今日は俺とフミの二人だけなので、送り迎えは必要ない。
適当に歩いても帰れるし、電車でもいいし・・・いや、バスか。
どっちにしろ、自由に変えれる。親父には帰ることだけ伝えておいて、ぶらぶら歩きまわる。
目的地は特にないが、なんとなく運動場付近に。てか、そこにしかお店ないし。なんか喫茶店とかなかったかな。
ちなみに、今運動場では反復横跳びが行われている。どういう順番でやってんだあれ。
「まぁ関係ないか、どの順番でもできないと意味ないし」
「どういう意味?」
「いつどんな時でもちゃんと動けないと意味ないだろ。スタミナはこれからつけていくってことでもいいけど、動くって意思が大事」
「なるほどなぁ。動くのやめたら死ぬ階層もあるし」
「・・・え、何その凶悪階層」
「あ、今のなし」
いや出来るか・・・いや、マジでそれ何。
「いやいやいや、本当になんだそのえぐいの」
「ま、まぁ体のどこかが動いておけば問題ないみたいやし」
「それどっちにしろ完全に休憩できないってことだよな?」
指だけでもいいんなら話は別だけど・・・あれかな、内臓が動いてるんです!ってのはダメかな・・ダメだろうな。
動いてないとダンジョン関係なしに死ねるわ。
「ダンジョンの殺意高いなぁ・・・」
「あれで人間いれたいんやから殺したいだけちゃうんかとか思うわ」
「わかるー」
「てか、よくうちはそんなところから出てこれたと・・・おん?」
フミのしっぽが、俺の後頭部を叩く。俺が悪い事したときか、何か発見したときの合図だ。
「どうした?」
「・・・魔力が漏れとる。どっからや」
「魔力?そんなもの・・・ああ?」
本当だった、周囲に魔力がある。何か大きな魔力を持った存在が、魔力を隠しながら歩いたかのような感じだ。
残り香のような魔力の残滓が、あちらこちらに残っている。言われなければ気がつかなかった。
「よく気がついたな」
「たまたまやな。なんとなく周りを見渡したらッて感じやったし」
「・・・ダメだな全部は見えない。かなり隠すことが上手い奴だぞ」
「みたいやな。追えるけど、どうする?」
「追うぞ。海外の冒険者じゃなさそうだ」
俺以外の冒険者は、ようやく最近になって20層に取り掛かっているくらいだ。藤岡さん達だって20後半。
つまり、俺よりレベルが低い。その人たちが努力すれば俺とフミにしばらく気がつかせないレベルの魔力隠ぺいをおこなえるか?答えはノーだ。無理。
単純に、魔力の扱いに関しては、ダンジョンで潜ることが最大の訓練になる。人間じゃできない。
つまり・・・
「モンスターの可能性たっかいな」
「それも、面倒なタイプや。うちより下か。そういうのが得意なタイプか」
「特殊個体で、外に出てきたか」
「ヨミは例外やと思っとったんやけどなぁ・・・」
あれはデザート食べたくて外出たからな。
本来は特殊個体であろうと外に出ようとしないらしいし。つまり、この存在がモンスターだった場合、何かしら理由があって外に来たことになる。
「まぁ考察は後か、追うぞ」
「任しとき。・・・あっちやな」」




