28話
「恭輔!ビックニュースだ!」
「なんかあった?」
「自衛隊が『テイム』を手に入れたぞ!」
「マジか!?」
まさか、思ったより早かったか。スキルが何種類あるか知らないけど、かなりの数があるはずだ。その中で俺と同じスキルを取れるってすごいな。あ、でも藤岡さんとふーちゃんはスキル同じだな。それでも、俺は『テイム』をスキルスクロールから手に入れてないわけで。そう考えると俺より運がいいんじゃないか?
「それで、俺は何をするの?」
「テイムのやり方を教えてくれだそうだ」
「は?」
「お前が『テイム』持ちじゃないかって、自衛隊は考えてたみたいでな」
「ああ、コロちゃん達?」
「そうだ。明らかに意思疎通が出来ているのは本人の素質以外にもあるんじゃないかと考えてたみたいでな。そういうことに詳しい要因があるんじゃないかと」
「正解だけど、ある程度なら前から出来たべ?」
「まあ、今はそこはいいんだ。何故か『テイム』が成功しないそうでな?」
「え、失敗するのあれ」
「失敗するらしい」
「それを見てくれと」
「そういう事になるな」
「わかったわ。また新宿?」
「ああ、今から行けるか?」
「今かよ、別に行けるけど。みんな連れてって大丈夫なの?」
「一応こっちでも話しておいたからな。迎えが来る」
「本当にもっと早く伝えようよ」
「すまん。人手不足の解決に繋がる可能性が高いとの事でな。急遽決まったんだ」
「迎えが来るのは、モンスターを見て一般人をビビらせない為?」
「そういう事だ」
「りょーかい。とりあえず、ダンジョン準備だけしとくわ。お前ら、出かけるぞ?」
「ぴ?」
「そうそう、お前らも行くんだよ」
「ぴー!」「きー!」「ちゅー!」
「そんなに喜ぶ?」
「う?」
「行くに決まってんじゃん。大丈夫そうなのはわかったし」
「うー!」
「遠足って。何処で聞いたのその言葉」
「う!」
「テレビか?あんまり見すぎるなよ?」
「お迎えって藤岡さんか」
「あら、私じゃダメでしたか?」
「姉ちゃんかと思ってましたよ」
「何かあった時に止められそうな人が、という事になってね」
「?止められないんじゃないっすか?」
「ええ、そうなんですけど。一応運転手の方もレベル持ちですなんですけど。恭輔くん相手ではね」
「どんな評価になってるんですか俺?」
「それだけ高評価。ということでいいと思いますよ」
「今日はフルパーティですけどね」
「・・・やはり、『テイム』を持ってましたか」
「思ったより驚かないっすね。スライムとかいるのに」
「だって、コロちゃんより強くないんでしょう?」
「まぁ、そうですけど」
「ぴー!」
「わかってるよ。俺はわかってる」
「会話もできるんですね」
「これに関しては元々出来てましたよ。精度が上がったってだけです」
「ちなみに今はなんと?」
「僕も強いもん!って言ってましたよ」
「あ!すいません」
「知らないならしょーがないっすよ」
「ちなみに彼らは・・・」
「ご察しの通り。俺くらい強いですよ」
「やっぱりですか」
なんせ俺と同じくらい強いんだから、そりゃ強いわな。一匹で10層ボス討伐できるくらいには強い。11層のボスより強いからな、あのオーガ。
「そういや、あの放送見ました?」
「ええ、見ましたよ」
「うぇぇ」
「どうかしたんですか?」
「いやだって、あれですし・・・」
「まぁ、適切だったかと言われると違いましたね」
「デスヨネー」
「ただ、目的は達せられたかと思いますよ」
「・・・俺、ファンなんすよ」
「・・・それは、ご愁傷様です」
本当にね。終わった後とか完全に怯えられてたし、近づかないでくださいみたいな目で見られたからね。
「マジで、いろいろあったんですよ・・・」
「らしくないとは思いましたけど」
「まぁ、スキルの影響っす。なんか精神面にくるらしくて」
「スキルでですか!?」
「まぁ、今回は見境なく使ったので」
「他者への影響は?」
「直接影響を受けるのはスキルを使われた人だけですよ。影響を受けた人間に何かされる可能性もありますけど」
「そのスキルは誰が」
「こいつです」
「・・・えっと」
「ああ、ニホリ」
「うー!」
「え!?」
人形状態で出してもわからないか。
そんなわけで、ニホリに出てきてもらった。
ニホリの連れて行き方の一つとして、人形状態に戻ってもらうのを試してもらっていたのだ。
魔力を使い切り人形に戻ると、再出現するのに大量の魔力が必要になるが、ただの形態変化として人形に戻ってもらえばスペース節約になるし、連れてくのも楽になる。守るのも俺のポケットに入れておけば何も問題ない。使い切ったわけではないので魔力の消費もない。すばらしい。
「恭輔さん!?」
「はい、ニホリです」
「う~」
「あ、どうも・・・ではなくて」
「一応テイムモンスター扱いですよ。特殊ですけど」
「この子が・・・」
「人形からこうならなかったら只の幼女ですけど」
実際、高校生が車の中で幼女を膝に乗せるのはどうなのだろうか。俺は常に事案にならないか警戒することになるが。
「この子はどの階で・・・」
「あ、違います。タイム報酬です」
「・・・タイム報酬?」
「あれ?」
知らない?ボスの五分未満討伐なんて簡単に行くはずなんだけど・・・。
「ボスって五分未満で倒すとなんかもらえますよね?」
「いえ、貰ったことはありませんが・・・」
「え」
「え」
「つまり、恭輔君は、その五分未満の報酬でスキルスクロールやニホリちゃんの宿った人形を手に入れたと」
「そうですね。自衛隊なら、一層のボスくらいなら五分余裕だと思ってまして。そもそも報告することないかなって思ってましたけど」
「ええ、どうやら違うようですね。少なくとも、私は今初めて知りました」
「マジっすか」
自衛隊のスキル普及率が異様に遅かったのはこういうことか。研究で取り置きしているのかと思ってたけど、違うのか。
「恭輔君は、最初のボスは何人で戦いましたか?」
「俺とすらっぴとコロちゃんです。コロちゃん無双でしたけど」
なんせ、俺たちのボスデビュー戦の成績は俺一匹、すらっぴ0、コロちゃん残り全部っていう。
「何か条件があるんでしょうか・・・」
「自衛隊って確か、6人パーティなんでしたっけ」
「ええ、そうよ」
「人数じゃないですかね。俺は今の人数・・・人間俺だけですけど。それでも時間も報酬はもらえてますし」
「人数。人の数で変わっていると?」
「はい。あくまでも、テイムされた子たちはカウント外なんじゃないですか?」
「・・・そうかもしれませんね。確かめてみることが増えましたね」
「お疲れ様でーす」
「他人事ですね」
「他人事ですから。俺の仕事は深く潜っていろいろ取ってくることですし」
「・・・そうですよねぇ。できれば協力してほしいんですけど」
「そうはいっても、俺も今はスポンサーいますし」
「大門教授のスポンサーについてる方と同じなんでしたっけ」
「そうっすよ。親父の紹介で前からあってましたけど。いろいろありまして」
具体的には、前に見つけた謎の薬品が関係してるんだけど。それは俺たちの秘密。まだ世間に発表する事じゃない。
「うちより予算ありそうですね。装備がいい物だし」
「一人に金かけてますし。そっちは何人もいるししょうがないっすよ」
人が多いと大変なのに、今は足りてないんだから笑えないっすね。




