270話
昼一話夜一話です。
休みが終わる感覚って久々に感じるとあれですね
43層戦闘なしで突破。
道中で出会うスライム達に道聞いたら扉の場所教えてもらったからすぐに着いたし。
ちょうど戦い終わって戻ったらお昼になってそうないい時間に。
最近こんなの多いなぁと愚痴りつつ、扉を潜り部屋に侵入。
いつも通りボスが奥から来るのを待っていると、どしんどしんと重い音がする。
足音から数は2体。重量級だな。
奥の扉か、それが出てくる。
「ガーゴイルってか?」
ストーンゴーレムの亜種って可能性微妙にあるけど、とりあえずガーゴイルでいいか
翼を持った石造。手には両刃の両手斧を持っている。
尻尾にも何かついている。太さだけでも十分な脅威になりそうだ。
部屋に入ってきた直後、奴らの口から炎をブレスが吐かれた。
「お」
「ぴっぴ!」
すらっぴが大量に水をブレスにぶつけて消火する。
その隙にもう一体が、上空から斧を振り下ろしてくる。
だけどそれは読めていた。
「よっしゃおっらぁぁ!!」
斧に斧をぶつけてガーゴイルの体ごと吹き飛ばす。
上空から全体重を乗せた一撃だったが、それを考慮しても俺の方が強いらしい。
「なんだ?弱くね」
「あのサイズの大岩をそのまま撃ち返したって考えれば?」
「・・・おれやっば」
そうだわ。俺の倍以上のサイズの大岩上から降ってきても大丈夫ってことでしょ?
まぁ中身スカスカかもしれない・・・俺の斧で切れないあたりぎっしりだろなあれ。
吹き飛ばされ、壁に叩きつけられたがすぐにガーゴイルは姿勢を戻す。
炎を吐いてきた個体も斧を構えなおしている。
「・・・1匹もらっていい?」
「ワン」
「あんがとさん!」
幸い、ここの部屋は結構広い。
部屋ってか、どっかの古城みたいな環境だけど。
斧を置いてから、最初に炎を吐いてきた個体に突っ込む。
俺に合わせて、2体とも斧を振るうが、一体の攻撃はコロちゃんにより止められる。正確には、斧が切られる。
そのままねっさんが爆発で姿勢を崩し、そこからはいつも通りの一方的な光景が広がるのだろう。
それと同時に、俺に振るわれたもう一方の斧を躱し、相手の斧の柄を両手でつかみ取る。
「おん?」
斧は、手に固定されているらしい。掴んだ感触がそう訴えてくる。
本来、この斧を奪ってやろうかと思っていたが予定変更。柄を蹴り飛ばして懐に潜り込む。
よく見ると、胴体部分に鎧のような装飾がある。まぁ全身石だからどこ殴っても一緒だろう。
こういう時にゴーレム籠手がないのが悔やまれるが、『硬質化』で拳を固めて殴る。
その感触はまさしく石。だが、俺の拳の方が硬い。拳は胴体に突き刺さる。
ガーゴイルの体が軋む音がする。
こいつら、声を発しないみたいだ。
だからその音に気がつけた。羽が広がる音だ。
「まっず!?」
拳を引き抜いたと同時に、ガーゴイルが飛ぶ。
そのままバク転の要領でしっぽを叩きつけてくるのを、横に転がって回避する。
間髪入れずに、再び上空から斧が振り下ろされる。
今回は斧がない。受け止められそうだが、無駄にフミたちに心配かけさせるわけにもいかない。
だから今度も避ける。今度は転がっての回避ではなく、ギリギリを見極めてすれ違う様に回避する。
躱した瞬間に、斧を踏み台にしてガーゴイル本体までジャンプする。体に取り付いて、羽まで移動する。
そして、バキバキと音を鳴らしながら翼をもぎ取る。
片方の翼をもぎ取られたガーゴイルは飛行能力を失ったようで、墜落する。
その前に俺はガーゴイルから離れて着地する。
流石にダメージが大きいようで、動きが悪くなっている。
と、そこで。既に戦闘が終わっていたコロちゃん達が暇そうに。
「ワフ~」
「クゥ~!」
「ちゅちゅ~!」
「いや、ちゃんと確かめなきゃいけないでしょ!」
なんで魔法を使わないんだと文句たらたらだよ。
これにはちゃんと深いわけがあるんだぞ。魔法込みなら、おそらく俺もすぐに倒せる。
じゃあなんでこんな風にって、単純にデータ取りだな。いつも通りの。
後は、俺個人のレベルアップの為。最近戦闘自体なぜか少なく、その中で強敵はもっと少ない。
だからこそ、ここで少しでも経験値を稼ぎたかったのだ。
別に久々に肉弾戦がしたいとかそういうことではない。
だけど、文句を言われてしまってはしかたない。終わらそう。
ガーゴイルの周辺に『土魔法』で・・・ああ、また確認するの忘れた。
『土魔法』の進化系で鉄の塊を出現させる。そしてそのまま・・・
「はい、しゅーりょう」
「ワフ」
「チュー」
「ぴぴ」
「にゃ」
鉄の塊はガーゴイルに向かって射出。
石と鉄。しかも『真化』で強化された魔法だ。
ガーゴイルが耐えられるはずもなく、あっけなく砕け散る。
それで終わりだ。
待っていたフミたちのところまで戻ると、労いの言葉と遅いぞとの文句が飛んでくる。
飼い主が頑張ってたのになんて言い草だ。
「こうしてやる」
「・・・ワプ」
コロちゃんの背後からお腹に腕を回して・・・
「どやぁ」
「・・・」(プラーン
「うーうー」
「お、ありがと」
あれ、ついに反応されなくなった。
まぁコロちゃんが喜んでるのでやるんですけど。
今回は・・・あ、なんか笛出てきた・・・笛出てきた!?
初めてじゃね?まぁここで出るってことは何かしら効果がある代物なのかもしれないな。
「・・・帰ったらでいいか」
「う」
「なにそれあぶねー」
ここで聞いたらおかずを減らすところであったとか言われたんですけど・・・
なにいきなりそんな間一髪なことになってんの?
「いや、恭輔が時間無駄にかけるからやろ」
「・・・いや、大事じゃん?」
「今日じゃなくてええやろってことやないの?」
「なるほど、言い返せないねぇ」
確かに今日やらんでもよかったわ。
明日とかでもよかったし、なんなら今日二つ目だしな。ほっとんど戦ってないけど。
後、ニホリ的には無駄に俺がギリギリで戦おうとしたのがダメだったみたいだな。魔法なら一撃だったし。
さて、これ以上ニホリの機嫌が悪くなる前に帰りますか。
「まぁたニホリに怒られただろお前」
「なぜわかった」
「キッチンでぷんぷんしてたぞ?」
「あちゃー」
原因は俺なんだけどね。
「今回は何をしたんだ?」
「いや、ちょっとわざとギリギリの戦いをしたくて」
「それで心配かけたと」
「能力的には攻撃当たっても問題ないんだけどね?」
「それとこれとは別問題だろうよ」
「そうなの?」
「そうだよ。わかってはいるが、ハラハラはするしな」
うーむ、そこか。
確かに、無駄にハラハラさせる・・・心臓に良くない戦いかたをしたのは事実。
フミなんかは自分がそういう戦い方をすることもあるせいかあまり気にしてないが、ニホリは違う。
そもそもが戦う子じゃないから余計に心配になるのだろう。
それに、忘れがちだがニホリはまだ子供だ。しっかりしてるし、料理も上手だがその根本の部分は子供。
子供の前で、そういうことはするもんじゃないってのもある。
それ以上に、ニホリの親みたいなものである俺が危ない目に合うのを見るのが嫌なんだろう。
「・・・後で謝っときます」
「そうしとけよ。ところで、この赤いスライムなんだが」
「ああ、うん。一匹連れてくる?」
「まぁ出来たらで構わんよ。すらっぴと違いはあったか?」
「うーん・・・なんていうかなぁ」
赤いスライムの方がモンスター的というか・・・すらっぴと同じスライムたちとはなんか違うんだよ。
種族とか強さが違うのがあたりまえだからいいんだけど、それ以上にもっと根本的な部分が違う気がする。
「まぁ勘だけど」
「んー。他でもないお前の言葉だ、何か違うのだろう」
「具体的に何が違うのかって言われると困るけどな」
「そこは追々でいいさ。こっちも今は忙しいしな」
「あらま、見るだけじゃないの?募集って」
「新人冒険者用の装備とか、解説とか、いろいろやることがあってな」
「それって親父たちの範疇じゃなくね?」
「うちがやるのが適任だとかで回ってきたんだよ・・・」
それはお疲れ様としか言いようがないな・・・
「だから、お前明日うちな」
「・・・はい?」
うえぇい。巻き込まれた。




