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267話

久しぶりにちゃんと出勤すると己の体力の低下を知りますね

あと、母さんの心配は多分大丈夫だと思うけど。



「なんで?」


「なんでなん?」


「いや、だってペットって金かかるじゃんか」


「・・・あ」


「うん?自前で稼げば・・・」


「うちの子を他の子と比べるのは間違いだと言わせてもらう」



自分の食い扶持を自分で稼げる子なんてうちの子だけですよ。

その気になれば一日順番で一匹ずつダンジョンボス周回すればいいしな。うちの場合だと・・・一日で10数日分になるか。

うわぁバレたらやらされそう。絶対にやりませんけど。


さて、一旦ここで視界をニホリ達の方に移してみましょう。



「うー!」


「るる~」


「・・・にゃ?」


「ガウ」



虎と戯れている。それにしても、いやにしつけられた・・・人に慣れている?虎だな。

人間いないけど、そもそも自分と同じ虎じゃないのにああも無警戒とは。



「・・・あの子何かあったの?」


「うん?」


「あっちでニホリが乗ってる子」


「うーうー?」


「なんでもなーい」


「うー!」



ブンブンと手を振っている。コロちゃんとかしーちゃんとは違う乗り心地だから楽しいのだろう。



わかる。



「いや、俺が入ってきた時もそうだけど、まったく威嚇してこないし。そもそも警戒心がない」


「ああー感じた違和感はそれかぁ」


「無防備って言うか、違うな。こっちが危険じゃないのを知っているって感じ」



それはありえない。初見でいきなりそれを判断する動物は・・・いないこともないな。

まぁそれでも少ない。俺だって最初だけは絶対に警戒されるし。少しいれば普通に戻ってくれるけど。


あの子には会ったことはないのだ。だから、警戒されない理由がわからないんだけど。



「私のにおいがしたからじゃないかしら~?」


「うーん・・・単純に母さんが一人で育ててましたって言われても驚かないけど」


「ギクッ」


「間抜けがいた」


「そんなお手本のようなバレかたあるんやなぁ」



母さんだと割とよくあることだよ。


ていうか、やっぱりそっちだったか。

もう一つの考えは、単純にどこかの動物園の子で俺に会ったことがあるってやつだったけど。会ってるなら俺が忘れないしなぁ。



「んで?いつから育ててたの」


「え、えーっと。ナンノコトカシラー」


「わかりやすくしらを切らんでもいいでしょうに・・・」


「お義母さん。無理があると思うで?」


「うー」



ニホリみたいなことしないの。大人でしょう。



「・・・5年前から」


「うっそだろお前」



母親にお前とか言っちゃったよ。

え、5年前?マジ?



「・・・コロちゃんと大体一緒?」


「ええ!?」


「コロちゃんって俺が中学入るか入らないくらいで来たから・・・そうだな。大体一緒だわ」



ちょうどうちで飼ってた子がいなくなったタイミングだったからなぁ。

俺もべったりくっついてたし。最初の赤ちゃんコロちゃんが可愛くて可愛くて・・・



「ちょい」


「おっふ」


「その可愛い談義は後にしてや」


「おおっと」



じゃあ後にしよう。



「え、何。5年もどこで育ててたの」


「わ、私の研究室で・・・」


「何してんだお母さま」



研究室って、ここじゃない仕事場のことだよな?こっち来るから引き払ったって聞いたけどってそういうことか!

だからこの子ここにいるのね!?研究の一環ってことでいるけど最初からの子なのね!?



「親父知ってんのこれ?」


「最初にバレました・・・」


「だろうね!?」


「ま、まぁお義父さんが知っとるならええんちゃうの?ねぇお義母さん」


「・・・多分ダメだわぁ」


「うぇ?」


「何故に俺に知らせて連れてこないのかという」


「ああ、そっちやった・・・」



じゃあこの子はうちの子って認識でいいな。

多分母さんが母親代わりで赤ちゃんから育てたんだろう。だから人間をそもそも仲間と思ってる。

てか、多分自分のこと人間だと思ってるなこれ。まあなんでもいいや。



「ニホリー」


「う?」


「その子と一緒に来てくれ」


「うー!」



ゆっくりと虎に乗りながらこちらに戻ってくるニホリ。ピッちゃんは・・・ふーりんちゃんと一緒に違う子と遊んでるな。あれはあれで警戒心ってものがないな。


近づいてきたところを、ニホリに一旦降りてもらう。

俺も視線を合わせて・・・



「おほー」


「・・・??」


「あ、困惑しとる」


「あー後で怒られるー」


「・・・何故に?」


「う?」


「・・・恭輔、触れ合える動物がいて教えないとすっごく怒るの・・・」


「ああー」


「うー」



正面から抱き着く。ネコ科特有のやわらかい体に俺が埋まる。

ちゃんと手入れされている証拠に、ひげもちゃんと整っている。まぁその辺は母さんだからな。しっかりやっているだろう。

まぁ俺にこの子の事を教えなかったのは後で文句言うけど。


最初は正面から抱き着く。

次にいったん離れて首元を撫でる。そうすると、気持ちいいのか目を細めて寝転がる。

うむうむ。爪もよし。



「普通の人間て、あのくらいの獣相手にああできんのやよな?」


「う」


「・・・ホンマに?」


「・・・うー」


「ううー。いいなぁいいなぁ」


「・・・目の前に恐怖心のかけらもない人間が二人もおるんやけど」


「・・・うーうー」



何か人間に対する認識がわけのわからんことになっている二人がいる気がするがスルー。

今はこの子を愛でねば。



「うち来ないのこの子ー?」


「めっちゃ気に入っとるやん」


「うーん。今は研究所の預かりになってるから。私の一存じゃなんとも・・・」


「ええー」



うーん。まぁ前からそういう感じに育てられたみたいだしなぁ。

寂しいとかは思ってなさそう。


その後も、喉元をごろごろさせたり、ちょっとお腹に顔埋めてみたりといろいろして可愛がる。

年齢的にも大人なはずなんだけど、ずいぶん子供っぽい。あんまり他の動物たちと関わってこなかったのかもしれない。

うちのコロちゃんと正反対だな。コロちゃんは野良の子含めて俺と一緒にいろんな子に出会ってるし。



「うーん・・・一人で寂しいって感じもないのかぁ」


「ガゥ」


「そうかそうかー。なんだかんだ他の子もいたのかー」


「ガゥァ」


「おお?どうしたどうした甘えん坊」


「完全に堕としたわ」


「うー」



まぁ母さんが何思ってこの子を育ててたのかは知らないが。おそらく止むを得ない事情があったのだろう。

育てる親がいなかったとか、理由はいくつか考えられるが。まぁどうせ教えてくれないだろうし。

俺未だになんでコロちゃんがうちに来たか知らないからなぁ・・・


・・・あ、そうだ。この子がいいな。



「三崎さんにお勧めするのこの子にしよう」


「ちょ!?大きいのはアカンいうっとたやんか」


「それを考えてもこの子いいぞ。人間の言うことを最初から聞いてくれる子って本当はいないんだから」



『テイム』持ってる三崎さんなら、それでも時間をかければ大丈夫だろうけど。

それに、虎の身体能力なら、よほどじゃないかぎり三崎さんたちのいる階層でも問題ないはずだ。



「最悪、俺がちょっと面倒みてもいいし」


「・・・50層は?」


「・・・まぁ50層は逃げないから」


「本音は?」


「もうちょい撫でていいかな」


「はぁ・・・」


「うー」



し、しかたないだろ!ネコ科の動物を愛でられるのは貴重なんだぞ!コロちゃんが拗ねるから!!

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