262話
夜分です
40層を攻略したり、みんなと遊んでたりしたらあっという間に時が経つ。
そう、始まりました冒険者応募。4月の頭からって聞いてたから、1日から始まるものとばかり思ってたけど、正確には4月の第一月曜日から始まるってことだったらしい。
4月1日って火曜日だったらかほぼ一週間分思ってた日と違ったわ。
だからって何も俺には関係ないけどな!・・・そう思ってた時期が私にもありました。
「なんで俺こんなことしてんの?」
「つべこべ言わないで手伝いなさい」
「せやで恭輔。文句言うとっても減らんのやから」
「うー」
ただいま研究所にて、応募書類の選考中。なんで俺までそんなことしてんなって思うよね。
人がいないんだよこの野郎。
ダンジョンに関連することは、基本的に秘密・・・ていうか、関わっている人間が限られている。
うちの研究所のメンバー、もう一つある研究所のメンバー。そして、政府が用意した人員だけ。
そこにだ、今回の応募が仕事として入ってくる。まぁ回らないよねってこと。一般からここだけの人員を募集するわけいかないし。
千爺・・・スポンサーサイドもこういった人員不足に関してはどうしようもないと言ってた。
仕方ないね秘匿されてるから。
そこにさらに問題が。
そもそも、冒険者の選考って何を見ればいいんだって話。
そんなわけで、ただでさえ人がいないから、現役冒険者である人間も手伝わせればってことになった。
ダンジョンに詳しく、人間社会の知識も豊富になったフミやニホリも手伝うことに。
他の子たちは各場所でマスコットとして活躍している。
俺たちのいる部屋は、冒険者組とフミとニホリ。
全部は見ない。書いてある内容に怪しい物はないか。素行は大丈夫か。
そういった基本的な部分をクリアした書類のみを見ることになっている。全部見ることになってる人達にはお疲れさまとしか言いようがない。だって、俺たちの時点でもえぐい量あるんだもん。
「何が楽しいんだこれ」
「・・・楽しくはないですね」
「流石にこれは・・・」
藤岡さんと三崎さんもグダってきている。
藤岡さんとかこういう書類仕事の経験はこの中だと一番あるだろうにこれだもの。
それにしても意外なのは、フミが割と早めに終わってることだな。
「うん?内容見るだけやろこんなん」
「見て、その人が冒険者に向いてるかっていうのを判断するんだよ?」
「わかっとるよ?」
じゃあなんで一枚あたり2分とかそんなんなんだ。志望理由とかアピールポイントとか読んでんのか?
「読んどるよ。恭輔の部屋にある小難しい本に比べたら遊びみたいなもんやろ」
「・・・どれと比べたのか知らんが内容は難しくはないわな」
難しい本て学術書・・・主に動物のしかないけど。それだって俺が親父から貰ったものだけど。
ともかく、フミがちょっと怪しいので休憩がてらちょっとテスト。
フミが見終わった書類の山から無作為に取り出して・・・
「この武田さん27歳のアピールポイントは?」
「柔道経験者やな。山登りが趣味で体力に自信あり」
「こっちの佐々木さん22歳の職業は?」
「フリーターやな。職変るの速いから辞めといた方がええかもしれん」
「・・・この鈴木さんは」
「絶対ダメな人やな。引きこもりで特に資格持っとらんし」
「資格持ってればいいのか?」
「え、だって時間あったんやろ?自分を変えたい言うとるけど、その割に勉強しとらんみたいやし」
「お、お金なかったとか・・・」
「そんな金ないのに何引きこもっとんねん。実家暮らしみたいやし、親に言えばええやんか」
「・・・言いにくい理由とか」
「むしろ引きこもり許してる親だったら、自分を変えたいので資格取りますお金くださいって言ったら喜ぶんやないの?」
わぁ正論。
確かにこいつちゃんと読んでるわ。
確かにこの人はダメだわな。これで親からお金出ないってことは、こいつは普段から同じ言い訳でお金貰ってるってことだな。
んで、それは全部無駄に使われていると。そんな奴はダメだな。
「・・・マジで全部読んでたか」
「てか、恭輔やって似たような速度やんか」
「あ、それは思いました」
「そうねー恭輔こそちゃんと読んでるのー?」
「おっとそうきたか」
今度は俺に回ってきてしまった。
だが、俺も普通に読んでるっていうか・・・
「普段俺速読じゃんか」
「・・・あーそういえばペラペラしとったな」
「え、あれ読んでたの?」
「どういうことです?」
「恭輔君速読出来るんだ」
集まってきたな。まぁみんな疲れてるし、ここらで一回全体休憩ってことで。
ニホリがうーうー言いながらコロちゃんに乗って給湯室に消えていく。自分で浮かないあたり、かなり疲れてるな。精神的に。
わかるぞニホリ。疲れてるときにコロちゃんはいいよな。俺もやる。
「速読って、実際テレビとかでは見ますけど、あれって出来るものなんですね」
「出来るって言うか、覚えた?」
「・・・え」
「小学校くらいの時に。あ、便利だなぁって思って」
「・・・そういう風に覚えるものなんですかそれって」
「絶対に違うと思ういますけど」
「むしろそれで覚えられるのって恭輔君くらいなんじゃ」
姉以外の自衛隊組以外からひどい言われようだ。
姉は姉で、昔からそんなんだから今更気にしてないし。
あと、そこで恭輔すごいわぁって目で遠くにいるフミさん。あなたも出来るでしょ同じこと。
「え、フミさんもできるんですか?」
「出来る言うても、うちには恭輔と違って力技やし」
「読書で力技・・・?」
「えっとな、うちのは動体視力に任せて読んどるだけで、恭輔は要領良い感じって言ったらわかる?」
「ああ、なるほど」
「・・・あれそんな理屈だったのか」
俺も初めて知ったわ。
って、そうか。さっきの書類を読んでたのも同じことか。力技で早く読んでたと。
これでも使えるのか身体能力・・・あれ、そういうことは?
「姉ちゃんたちもできるんじゃないの?」
「無理無理無理」
「無理ですね」
「流石に無理かなぁー」
「・・・やろうと思えば」
「「「うそぉ!?」」」
流石藤岡さん。自衛隊組でトップなだけある。
でも、なんで姉ちゃんたちはできないんだ?そこまで差があるとは思えないけど・・・
「使い方の問題やないの?」
「使い方?」
「視線の動かしかたっちゅうか、慣れてないから目が回るって感じやないの?」
「なるほど、だからできないのか」
同じ動作で読めるのは数枚だけで、その後は続かない。
藤岡さんは、書類書くことも多いし。読む動きっていうのに慣れているのかもしれない。
俺は読書で、フミは力技でって感じでやってる。
姉ちゃんたちはそれに慣れてないからできない。んー、まぁがんばれって感じ?
「あ、じゃあ藤岡さんにはやり方教えますね」
「恭輔のよりうちの方がええかもな。恭輔のは一日で出来るもんやないし」
「そうですね、お願いしますフミさん」
「解せぬ」
なんか、俺が人に教えることが少ないのってこういうことが多いからなんじゃない?
なんなの?器用なのがダメなの?
「うーうー」
「ワン」
「あ、フミちゃんありがとね」
「ワタシモテツダッタ」
「アリシアもありがとー」
最初にはいなかったアリシアがニホリと共に来た。
その手にはコーヒーとクッキーが。今日のお茶らしい。頭を使っているからか、コーヒーもすでにミルクが入っている。
この分だと、砂糖も入ってそうだな。うん、甘いものはいいものだ。
配膳を終わらせて、ニホリは俺の膝の上に、アリシアはコロちゃんの上に。
「なんで!?」
「??モフモフ!!」
「・・・負けた」
コロちゃんがお気に召したようで。三崎さんは敗北した。
勝てるわけないのに何を傷ついているのだろうかあの人は。
「ひどい・・・」
「ぴ?」
「うー。すらっぴちゃーん」
「ぴぎゅ」
ああ、すらっぴが抱きしめられてそのままクッキー貰ってる。おいしそうで満足してるから放置で。
・・・じゃあ俺がアリシアにこれをあげよう。
「ボウゴンリング!レア!!」
「お、アリシアにあげるんやな」
「まぁな。うちはみんないるからあれだけど。三崎さんのところはみんないるけど危ないし」
正しくはボウゴンリングってのは、要するに防護できるリングのこと。
俺がダンジョンに行かなくなった時、フミたちがダンジョンで手に入れた物だ。
俺は防御面は困ってないし、アリシアにあげるかって話になってた。
最近アクセサリーもいいのが・・・ていうか、効果がかぶってしまうものが多くて更新してない。
効果が上のは時々出てくるけど、それはレアな物だから手に入りにくいし。
一番いい物は、ニホリが持っているネックレスだろう。スキル『受け流し』の効果が使えるネックレス。まぁ実践で使ったことはないけど。一発も通したことないからな!!
「大事にしてね」
「ワカッタ!・・・?」
「・・・どうしたの?」
「ツケテ!」
「ええー」
手と指輪を突き出してなんだと思ったらそういうことらしい。どこで学んだんだそれ。
まぁ文句言っても、このくらいの年頃の子供には意味ないのでね。
「どこに付ける?」
「クスリユビー」
「そこはダメねーフミがものすごい目で見てるから」
「む、嫉妬はしてないで」
「わかりやすいなお前」
フミにはちゃんとした場所でやってあげるから嫉妬しないの子供に。




