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258話

夜分です

「ほう、こういうのもいるんだなぁ」


「かっこいいよね。見た目は」


「いや、普通にホラーなんですけど・・・」


「ていうか、恭輔はなんでこんなん初見で頭掴めるのよ」


「ノリ」



現在、研究所にて親父と藤岡さんたちで先日の40層ボス戦の観戦中。

俺から見た視点はないが、ニホリが後ろから撮ってくれた奴を見ている。


大体、男性陣はかっこいいというし、女性陣は怖いって。

アリシアは元々ダンジョンに・・・住んでたとは違うな。まぁ元からこういうのがいるって知ってるからか全く驚かず。いや、こいつ強引に押し切ったぞマジかみたいな顔はしたな。

後で他の研究員にも見せるんだろうけど、多分似たような反応は来そうだな。



「それにしても、ねっさんの爆発が効かなかったのはなんでだ?」


「ああ、こいつの鎧のせいだったわ」


「・・・昨日の今日でもうわかったのか?」


「うん、ここ来る前に一戦やってきた」



あの鎧、耐熱性能がとんでもないレベルみたいなのだ。ふーちゃんの『豪炎魔法』最大火力でなんとか抜けるレベルの性能。

どの温度までなら防げるって感じみたいだったから、あれだとねっさんの『爆発』では相性悪い。あれは熱もあるけど、衝撃の方が強いからな。

しかも、ちゃんと物理攻撃に対する防御もしっかりしてるし。完全にねっさん対策されてるよあれ。



「じゃあ倒すとしたら・・・」


「炎以外の魔法で倒すか、鎧の隙間を狙うかだな」



もしくは押し切るか。俺が一人で倒す場合、上から休まずに斧で振り下ろしを続ければ圧殺できる。

バトちゃんはきれいに上から隙間を狙って腕切り落としたし、コロちゃんの魔刃に関しては鎧毎いったな。それでも刀切れなかったの気にしてるけど。

今も家で素振りじゃないけど、魔刃発動させてるだろうし。



「ていうか、別にこれの発表会をするために集まったんじゃないんじゃないの?」



俺は見せに来ただけだけども。

別にみんなを呼んだわけじゃないのだ。俺は俺でこの後用事あるし。



「ん?ああ、そうだったそうだった」


「ちなみになんで集まってたの?」


「もうすぐ募集開始だろ?そのことで確認をな」


「ああ~」



そうか、もうそんなか。最近ダンジョン進むことしか考えてなかったけど。

えっと・・・後5日後?だったはずだ。



「もう確認するんだ」


「まぁ今日はあくまでも軽い確認だ。当日になってあわただしくするのもあれだろ」


「そりゃそうだわ」


「お前も聞いてくか?」


「用があるのでお先にドロンします」


「・・・古いぞそれ」



親父も何を言っているのやら。関係ないことなのに残るわけないのに。

あと、今日の用事は、おそらく今の俺にとっては最優先事項だからなぁ・・・























「ただいまー」


「おかえりー雪ちゃん来とるで~」


「うぇ~い」



そう、今日の用事。

この間、家にまで遊びに行った雪ちゃんの事だ。



「どんな感じ?」


「いや、普通に元気やけど。そもそも、元から変なことは言ってへんかったで?」


「本当かー?」


「なんでそこ自信ないねん」



いや、正直そこ曖昧だからなんとも・・・

雪ちゃんの思いを聞いて、自分を冒険者にしてほしいって言われてから、気がついたら家にいたし。

多分、考えさせてとか言ったんだろうけどな俺。

・・・いや、でも割とひどいこととか言ってないかな俺。



「はいははんへふはほうふへはん」


「食いながら喋るんやないわヨミ」


「・・ゴックン。何悩んでるんですか恭輔さん」


「ていうかロールケーキ食いながら現れるな」



なんて空気をぶち壊すことに特化してるんだお前は。

そしてそのケーキはうまいのかお前は。



「すごくおいしい」


「それは何より」


「うー!!」


「ごめんなさい!!!」



ニホリに怒られてやんの、ざまぁ。



「う!」


「すいません」


「ざまぁ」


「いや、もう玄関じゃなくてはよ中入ればええやんか」



その通りでございます。






















そもそも、なんで俺が雪ちゃんの言葉を聞いて記憶まで飛ぶような精神状況になったか。

あの時、俺は『昇華』が使えなかった。あれは、俺が自分の力でフミ達を守れないどころか、俺のせいで傷つけてしまうことを恐れた結果なんだけど。

しかもだ、俺が勝手に弱くなった自分は必要ないよ思い込んだことで戦うのもできなくなりそうだった。

まぁみんなのおかげで戻りましたけど、それどころかおつり大量ですけど。


まぁ、精神状態は元からよろしくなかったのだ。俺が守れないっていう無力感は大きかったしな。

さらにだ。元からヒーローとして自分を見てくる雪ちゃんに若干の引け目を感じていた。

なのにあの子は俺の事を希望だと言って慕ってくれている。弱い俺?そんな尊敬すべき点が何一つない俺を?って感じ・・・だと思う。

思うってのは、今だから思うってことだ。当時はそこまで考える余裕なかったし。



「やべぇ入りにくい」


「う」


「早くしてくださいよー」


「いやでもなぁ・・・」


「恭輔」


「フミ?」



フミが、俺をしっぽで包みながら抱き寄せる。

しっかり目を見て、ゆっくりとこういう。



「大丈夫やって」


「・・・」


「雪ちゃん。悪い子やないやろ?」


「そりゃ・・・そうだけど」


「後、うちの恭輔はかっこええから、雪ちゃんがあこがれるのも無理ないとうちは思うなぁ」


「フミ・・・」


「う!」


「ニホリもか」


「私はそのモテ具合だけはおかしいと思いますけど」


「あ、それはうちも思う」


「う」


「え、何でこの流れでそこツッコまれるの?」



もうちょいなんかこう・・・なかったの?感動的じゃないの?



「だが無意味だ」(ドヤ


「殴りたいその笑顔」


「ああ~もう!ヨミと仲ええのわかったからはよ入れ!!」


「ちょ」



なるほど、しっぽで俺を包んでたのはこれの為か・・・

扉をニホリが開けて、タイミングよく俺をしっぽで投げ飛ばす。

腋の下にしっぽがあったから抵抗もできずに投げられる。投げられた先は窓だが、何故か事前に空いている。近くにピッちゃんがいてサムズアップしてるからこの子のせい。

そのまま、庭の白い物体に激突・・・というより、受け止められる。あ、これしーちゃんだ。

ちょっとしーちゃんに突き刺さったままで固まったが、なんとかもそもそと動いて離脱。

その目の前に・・・



「あ、恭輔さん!」


「・・・こんにちわ雪ちゃん」


「はい!お邪魔してます!」



元気そうに笑う雪ちゃんが目の前にいた。

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