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249話

夜分です

実践でしたわからないなら、ダンジョン行きましょう。

それが単純明快。


そんなわけで、検査の次の日。

ちょっと久しぶりのダンジョンへ。

しかも、35層ボス戦。



「・・・大丈夫なん?」


「多分、てかここの連中って所詮何もない俺でも倒せちゃうから比べ物にならないしな」



そう、自分の能力を試すのなら、必要なのはそこそこの敵だ。

その敵がいないのだ。35層の連中・・・大砲サイとロックリザード。この二体はそんなに強くない。

ていうか、簡単に倒せるようになったが正しい。武器の性能、俺自身のレベル。そして力の使い方。

それらがかみ合った結果、ロックリザードは一撃で倒せちゃう。これだと性能評価には使えない。

だからこそ、新しい敵を求めてボス戦へ。扉の場所自体はすでに判明している。

ロックリザードが擬態している岩の中で一番小さい物が扉だった。



「コロちゃん達も大丈夫か?」


「ワン!」


「クゥ!」


「ぴ!」


「きき!」


「めぇ」


「大丈夫です!



今日はコロちゃんすらっぴバトちゃんふーちゃんしーちゃんだけ。

他のみんなはユニちゃんについていっている。

ポヨネが俺の鑑定をしなきゃいけないからユニちゃんの警護ができない。

その代わりに、他のみんなはユニちゃんの方について行ってもらった。

まぁ今日は22層ってのもあるし、半分はピクニックだ。ロラちゃんとニホリもあっちだしな。



「んじゃ、入るぞ。フミは・・・ていうか、みんな基本的に手だししちゃだめね」


「はーい」


「ワン」


「ぴぴ~」


「きき?」


「めぇ」


「き!」


「クゥァン」


「おおー!」



・・・ふーちゃん、欠伸は流石に・・・






















35層のボス部屋は、他のボス部屋とはまた違った様子だ。

空が黒いとか、そういうのはいいんだけど。一番の問題は空気が重苦しいところだ。



「・・・あ、そういやここあいつやん」


「感想は?」


「見掛け倒し」


「なんだそれ」


「ワン!」



コロちゃんが敵を見つけた。ていうか敵が上から降ってきた。

不健康そうな肌、細い手アリ、大きな耳。そしてコウモリみたいな羽根・・・バトちゃんの比べて可愛げが欠片もない。

まさに悪魔。デーモンってやつだな。



「見掛け倒し君?」


「せやな。ほんまに見掛け倒し」



そこまで言われるってことは、そんなに強くない・・・っていうか、特に厄介なところがないんだろう。

悪魔と一言で言ってもそいつが何をしてくるかの予想は出来ない。

何の悪魔かがわかれば判断できるんだけどな。こうも見た目通り、自分悪魔っすみたいな感じの奴は判断に困る。


まぁ、魔法は使ってくるかな。

そこまで考えて、あちらが動き始めた。


羽根を大きく広げて飛翔。そのまま空中でとどまり、再度羽根を広げる。

デーモンの周辺に魔法陣がいくつか展開された。



「んん?」


「クカカカカ」



それぞれの魔法陣は色が異なる。



「ということはだ・・・」


「クカァ!!」



魔法陣から魔法が放たれる。

赤の魔法陣から炎。青の魔法陣から水。色ごとで属性が異なる。

だけどそれは想定通り。

・・・でも、なんか違和感があるっていうか。



魔法が飛んでくる、その軌道がおかしいのだ。俺に向かってきてない。

俺より後ろ・・・フミたちの方に・・・!?



「ちょ、うちらかいな!」


「ぴぴ!」


「ワン!}


「き!」


「めぇ!」


「クゥオン!!」



全員がそれぞれ同じ属性の魔法を相殺する。

そこまで確認して、違和感の正体に気がついた。

あいつ、俺を見てないのだ。みんなから一歩前を出た俺を見てない。

魔法の飛んでいった軌道から、数の多いみんなを見てるんじゃなくて、フミを見ている・・・







は?






























皆がうちに飛んできた魔法を迎撃してくれた瞬間。恭輔から感じる圧が増えた。



「なぁ!?」


「ポヨネ?」


「恭輔さん・・・変わりました」


「おお!」



ということは、恭輔の本気がやっと見れるっちゅうことやな。ええことや。

・・・でも、なんで急に本気に?あいつの意識が恭輔に向ていないのを感じて怒ったんか?



「・・・お姉さま、それ本気で言ってます?」


「おん?」


「・・・いえ、何でもないです」



変なポヨネや。


恭輔が手を振りかざす。

その瞬間、デーモンの手足と羽根が切り裂かれた。



「ほお!?」


「めぇ・・・」



何で切ったかは見えた。鉄の鎌だ。

それが急にデーモンの周辺に現れて、手足と羽根を切った。

でも、実際にその過程を見れたわけではない。すでに振り終えた鎌を見てそう判断したのだ。


飛ぶ手段を羽根に依存しているデーモンは落ちていく。

落ちきるより先に、恭輔がデーモンの上に現れる。

空中を蹴り、加速してかかとをデーモンの後部に叩き込む。

さらにデーモンが落下する速度が加速する。空中を蹴り移動する姿は、まるで自分の動きのようだ。



「・・・あの時の見て覚えたんか?」


「きき~」



バトちゃんはすげーなんて驚いているが、それどころではない。

少し前に、一回だけ上の階層のモンスターで真面目に戦ったことがある。

皆が空中のモンスターを撃ち落としてるのが楽しそうでやりたくなったからだ。

あの時、恭輔がうちを見ていた。目で追える速度で動いてなかったはずなのに。

動画で確認しても、カメラで追える速度ではないから、うちは映っていない。だから、うちがどんなふうに動いていたか、完全に把握できていなかったはずなのだが。



「記憶の中のうちの動きから、自分なりに補足した?」



いや、それだけじゃないと思うんやけど・・・



「多分、お姉さまと戦って、埋めたのでは?」


「ああ、それがあったわ」



なるほど、だからうちに似てると思ったわけやな。

空中戦こそしてなかったが、戦闘の基本はそこまで変わらない。そこから自分なりの戦い方に変化させたってとこやろ。



「でも、練習しとったっけ?」


「してない・・・はずですけど。私最近の恭輔さんしか見てないですし」


「んん~?コロちゃん知っとる?」


「ワフ」(フルフル



コロちゃんも知らん・・・え、ということはなんや。

今この瞬間にあの戦い方を思い出して実践してるってこと?

ええ・・・?



























地面に叩きつけたデーモンは、ギリギリ生きていた。

とは言っても、虫の息だったが。


だが、追撃はやめない。

倒れこんだデーモンを何度も踏みつける。何度も何度も何度も何度も。

もはや原型を保っていないくらいに踏み潰す。


完全に死に、消滅したところで、ようやく止まる。



「・・・ふぅ」



まだ高揚感がある。

暴れた後特有の興奮といったところか。

デーモンがいなくなったのは、わかっているが、それだけじゃ足りない。

でももう敵はいない。だったら・・・


俺は、無意識のうちにフミの元に駆け出していた。



「ん?きょ、恭輔!?」


「フミ、ごめん」



フミの肩を強くつかみ、そのまま体を引き寄せて抱きしめる。

本当はこのまま続きをしたいけど・・・



「ちょ、恭輔!ここじゃあかんて!」


「・・・」


「聞いとるんか!?」


「・・・聞いてる」


「だったら・・・」


「今これで我慢してるから許して」


「・・・もう!!」



私怒ってますと言った感じの顔をしているが、手を俺の腰に回して抱き返してくれた。

・・・今はこれで我慢・・・我慢・・・。



「・・・なるほど、『昇華』と同じですか」


「ワン?」


「いえ、多分私たちに影響は出ないと思います」


「ぴ?」


「私たちに出ない分、全部恭輔さんに影響が出てるのかと」


「クゥ~」



ああ、わかった。

このまま俺がフミを連れて帰ればいいんだ。



「ポヨネ、先帰るわ」


「え」


「じゃ」


「ちょ」



フミをお姫様だっこして走り出す。

今の俺の速度はコロちゃんやフミより速い。この速度なら数分で家に帰れる。


走ってて自分が暴走してえる感覚はわかっているが、これは耐え難い。

こんなにも、こんなにも・・・



「・・・ふふふふふふふ」


「きょ、恭輔・・・?」


「どうした?」


「そ、その・・・優しくしてな?」



ぷっつん。



その時、俺は一つ限界を超えた。





35層から俺の部屋まで3分切った。

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