248話
昼一話夜一話です
「うーん・・・」
「どうなん?」
「何度見ても、普通っていうか・・・いや、おかしいっちゃ おかしいんですけど・・・」
「やっぱり変化はあの一瞬だけなんかなぁ」
「『昇華』が進化したと考えるのならそれが妥当なんですけど。なんです『■■』って」
「ん?今何て言ったん?」
「『■■』」
「・・・んん?」
「あれ?」
俺は、今研究所で検査を受けている。
あの人型との戦闘。俺が急に強くなった際に、ポヨネは俺を『鑑定』で見た。
その時の鑑定結果が問題だったのだ。種族欄が人間じゃなかった。
最終的に俺の体におきていたのは、要するに『昇華』のような能力の強化なんだが、本当にそれだけなのか。
返ってきた今も本当に影響がないのかを検査しているのだ。
いや、俺はいらないって言ったんだけど、ポヨネが強めに言うから・・・
ヨミさんも一緒にいてもらっている。
あらゆる側面から調べるってことだそうなんだが、結果は思わしくない。
「こっちも異常なしです」
「こちらもです」
「そうか・・・」
「やっぱり、一回戦わせんとあかんかもしれへん」
「そうですね・・・私が行きますか?」
「いや、ヨミだけやと無理やな。うちも行くわ」
「お願いします」
一通り体を調べ終わる。
それでも、何もない。それはそれでいいことなんだが、一度『鑑定』で出た結果があるので、この状況は逆によろしくない。
本当に何もないと判断するのは難しいって何かで読んだな。
一回『鑑定』で結果が出ちゃったからなおさらだな。まぁそれだけ『鑑定』が信頼されているってことなんだけど。
俺は今は部屋の中で立っているだけなんだけど、それまでは何かの機械の中に横になったりいろいろしてた。
いい加減暇になってきたのを除けば問題なし。
「恭輔」
「おん?フミ?」
「全く結果があんまりにも変化ないんで、うちらとちょいと戦うってな」
「なるほどね。だからヨミさんもか」
「そういうことでーす」
「鑑定はポヨネがするのか」
『はい、こちらで余さず見ます!』
「おおう」
マイクからポヨネの声が。
恐らく、マイクのある台に前足をついているポメラニアンがいるということだろう。
・・・いい
「きょーすけー」
「おっふ」
「しっかりせぇよ?」
「大丈夫俺は正気。ポヨネはかわいい」
「あかんかもしれへん」
「正気ではありますよね」
まったくもってその通りである。
さて、このまま喋ってても終わらないし、いい加減飽きてきているからそろそろやるか。
ただ、問題はある。『■■』の発動条件が問題だ。
『昇華』は意識の切り替え。特に、フミを守るための意識に切り替えれば最大の効果を発揮する。
これが一番やりやすかった。
だが、『■■』は違う。これは、俺がみんなを守るための力として得た物だ。元が『昇華』だとしても今は違うものだ。
しかもだ、『昇華』の時と同じなんだけど、今の『■■』はもっとやばい点がある。
俺は、俺がフミたちを守るんだって意識。言い方はよくないが、全員俺の物だってう意識がある。
野生動物が、自らの群れを守るのと同じ原理だ。他の連中に手を出させるのだけはありえない。怒りでどうにかなりそうなくらいに。
その結果、群れの仲間・・・俺で言うところのフミたちに対して全く力が出せなくなった。
つまり?
「・・・全く何もできないんだけど」
「え?」
「・・・ああ、なるほど」
「わかるんか?」
「多分お姉さま・・・あ、もしかして私もですか?」
「多少は」
「あら~」
「・・・どうなっとるん?」
群れのリーダーは群れを守るもので、自分は決して群れに害を与えない。与えたらリーダーではなくなる。
模擬戦や実験のためとは言え、俺は『■■』を使えなくなっている。
・・・まぁ自分の意思一つなのかもしれないけど、このへんは。
まぁ俺がフミに対してそんな力を使う時なんてないけどな!!!
『うーうー』
「はいすいません」
「でも、出せない物は出せないですしね~」
「・・・親父」
『どうした?』
「なんか的みたいなのある?」
『的?そりゃあるが・・・』
「何個か出して。頑丈なやつ」
『わかった』
さて、フミたちが来てくれたのは俺の能力を考えてだろう。
あんまりにも脆い的だとスキルの効果を見る間もなく終わってしまうかもしれない。
だからこそ頑丈かつ早い二人が来たんだが、ぞもぞもの人選ミス。二人相手では本気になれない。
だったら、二人じゃなきゃいい。
まぁマジの戦闘じゃないから10割稼働は無理だろうが・・・
「半分くらいは出来るだろ・・・」
的が出てくる。
地面の下から人型の的・・・よく射撃訓練で使われるあれだな。
あれが地面の下からせりあがってきた。
そんな機能あるんかい。
完全に的が出きったところで意識を切り替える。
戦うのではなく、あの的を壊すことに・・・
「なっ!・・・」
「来たんか!?」
「・・・変化しました」
『こっちでも確認できました・・・これで全力じゃないなんて』
「・・・大体4割か」
「マジっすか?」
「ねーねーどうなってるんよ~」
「性能が馬鹿みたいに上がってますね」
「それはわかっとるのやけど?」
『■■』4割稼働で大体俺の能力を4倍くらい?
全力で10倍くらいの変化になるってわけだ。そこまでやるのは本当にフミが危険にならないと使えない。
でも、そもそも危険になるまえに俺がキレて10割できそうだけど。
「・・・データではどうなってる」
『・・・いや、やっぱり変化がないな。その状態を保ってさっきのやつもう一回できるか?」
「無理」
壊すと決めたのにそれから離れたら意識保てないわ。てか、もう一回あの機械入るの嫌なんだけど・・・あ、戻っちゃいそう。
「あ、今ぶれました」
『恭輔さんの集中力にもよるみたいですね』
「ふーん・・・えい」
「あふん・・・あ」
「あ」
『あ』
「お、戻った」
フミが俺の顔にしっぽを擦り付けた。
結果、俺はそっちに集中。『■■』が止まった。
「・・・完全に戻ってますね」
『ですね。種族欄も人間のままでしたし』
「多分、完全に発動しきらないと駄目なんだと思います」
『・・・なるほど、観測はそちらに任せるしかないか』
「恭輔~抱っこして~」
「はい」
「うひ~」
「・・・なんか、ロラちゃんみたいになってない?」
「ええやんええやん」
「・・・家に帰ったらゆっくりするから。その時な」
「・・・他のみんな入ってくるやん」
「だろうな。まぁ夜中なら大丈夫でしょ」
「夜は夜で一緒やし///」
「・・・まぁそうなんだけど」
狸の状態でてれてれされるとそれはそれで違う方面に目覚めそうだからちょっとやめよう。
俺の性癖がゆがみかねない。
「あ、そうだ。親父、あれ壊していい?」
『ん?ああ、大丈夫だぞ』
「いえい」
無造作に魔法が放たれる。
本来『昇華』や『■■』がない状態での恭輔の魔法スキルは『土魔法』
これだと、発生させることのできる物質は土のみ。金属を生み出すことはできない。
そのはずだったのだが。
恭輔の手から出たのは金属の槍だった。
掌から発生した槍は高速で的に向かい、そのまま的を貫通した。
「・・・あれ?」
「うん。出来たわ」
『・・・恭輔さん、今何かしたんですか!?』
『どうした?』
「恭輔さんの魔法。進化しました?」
「いや、してない。攻撃の瞬間だけ『■■』使えたわ」
出来るかなと思っていた。
『■■』使用状態を継続させるのは難しい。『昇華』みたいに、無意識で使える物じゃない。
でも、一瞬だけ発動させるのはそこまで難しくない。ここだけは『昇華』と変わらない。
本気になればいいだけだからな。
「でも、体感2割くらいだわ。十分だけど」
「十分ですよ。2割だと・・・『昇華』の7割ですかね?」
『数値的には、恭輔さんが強くなってるので変わんないですね。実質『昇華』の状態と変わんないです』
「・・・実質、恭輔は強くなったってことでええんよな?」
「それで合ってます。余裕が生まれたってことでいいと思いますよ」
実際は戦わないとわからないだろうが・・・まぁ明日だな。
今日は言った通りフミといなきゃ。




