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246話

昼一話夜一話です

既に、フミたちは限界を迎えていた。

すべての能力において、ダンジョンの人型は自分たちの上を行く。

文字通り、何もかもが格上。戦闘の技術を見ても、自分たちは人型には劣るだろう。


それでも、あきらめるわけにはいかない。

恭輔が、自分たちを守ろうとしているのは知っている。わかっている。

だから、今ここに自分たちが来ていること自体、恭輔の意思にはそぐわない。

だが、来ないわけ行かない。今戦いわないわけにはいかない。

自分たちも守りたいから、これ以上、恭輔に傷ついてほしくないから。



だけど、もうもたない。





「「「「「「ちゅちゅちゅ!!!!」」」」」」


「ぴぃぃぃぃ!!」


「めぇぇぇ!!!」



ねっさんの分身が殺到する。すらっぴの放つ水の刃が放たれる。しーちゃんの雷が突き進む。



「無駄」


「それでも後ろは空くやろ!!」


「空いてない」


「知ってますよ?」


「む」



三匹の攻撃を迎撃した瞬間、フミが後ろに回り込み蹴りつける。

それすら、人型の目の前で止められたが、ポヨネが上から押しつぶすように結界を叩きつける。

流石に手が足りず、受けるしかない。



(言うても、そろそろホンマにアカン。みんな限界や)



フミは、別にこの人型を倒そうとはしてなかった。

フミの目的は恭輔をここから連れ出すこと。しかし、普通に恭輔を連れ出そうとしても、この人型に邪魔されるのが目に見えている。

なれば、一撃加えて隙を作り、コロちゃんに引っ張ってもらおうとしたのだ。

故に、コロちゃんは前回ほど戦闘に参加していいない。

最高速度で言えばフミやポヨネに軍配があがるが、二人は戦闘に参加しないとそもそも戦いにすらならない可能性がある。

だからこそ、フミは誰よりも前で出て全力で戦っている。



「・・・理解不能」


「あん?」


「私は、彼を殺すつもりはない」


「何が言いたいんや!!」


「あなた達が、今ここで私と戦う理由にはならない」


「・・・つまりなんや。すぐに家返してやるから今は黙ってろってことかいな」


「肯定」


「・・・あんた。ホンマなんもわかっとらんわ」


「なに?」


「自分の好きな人が、気がついたら連絡もつかんくなって、いなくなったんやで?探すのは当然や」


「・・・」


「自分の好きな人が、どっかで傷ついているのがわかっとるのに、動かんやつおらんのや」


「・・・気持ちの問題」


「そういうことや。命にはもんだいありません。すぐに戻ってきますー言われても。はいそうですかと納得いくほど利口やないねん。うちらは」


「ならば、邪魔できないようにする」


「ハハハ!!やれるもんならやってみいや!こちとらなぁ、もう恭輔に無茶してほしくないねん。傷ついてほしくないねん。苦しんでほしくないんや!!」



二度とあの時のように、負けはしない。

フミは、恭輔のために、命をここで捨てるつもりだった。








だけど、二人がぶつかることは、もうなかった。















その瞬間、ダンジョンが揺れた。



「んな!?」


「ワン!?」


「・・・何?」



ダンジョンは自身の影響を受けない。だから、ダンジョンが揺れることなぞほとんどないのだ。

強力な攻撃が地面に当たり、その結果大地が震動することはある。しかし、今のようにダンジョンが揺れるのはありえない。

それこそ、ダンジョン全体を揺るがすほどの何かがダンジョン内に現れない限り。



「・・・恭輔?」


「・・・」


「おう、フミ。悪かったな。心配かけた」



恭輔はそこにいた。今の今まで、心が折れ、人型との戦いで疲労していたはずなのに。

既にフミの隣にいた。



「下がっててくれ、すぐに終わらせる」


「ちょ、ちょい待って恭輔。今何がんん!?」


「ワフ!?」


「ちゅ~」



コロちゃんとねっさんもそれは驚いた。

いきなり、キスし始めればそれは驚く。



「んんん!んん~・・・」


「・・・ぷっは」


「きょ、きょうすけ~・・・」


「うん。やっぱ好きだわ。・・・ポヨネ。フミのこと頼むわ」


「え、あ。はい・・・あの」


「悪いが、質問は後だ。ちょっと手加減できないから、巻き込みかねないんでな」


「巻き込むって!?」



ポヨネは見てしまった。今の恭輔のステータスを。

だからこその反応だろう。なにせ、今の恭輔は人間じゃない。



「そういうことだ。悪いが、そろそろマジで・・・」


「・・・わかりました。皆さん入り口まで全力で下がって!!」


「ワン!」


「クゥ!」


「「「「ちゅちゅちゅ!!!」」」」


「る、るる~」


「めぇ」


「にゃー!」


「ぴっぴ!」


「きき!」


「!!!」


「・・・ありがとな。みんな」


「・・・もういい?」


「ああ、いいぞ。悪いな、待たせた」


「構わない。こちらの目的はあなた・・・あなただった」


「だった・・・ねぇ?」


「そう、あなたは何?」


「そうきたか」


「あなたは人間だったはず。まだそこには行けないはず」


「だろうな。俺も、なんか一つ二つ過程を飛ばした自覚はあるよ」



でもしいて言うなら・・・



「俺は俺だよ」





























同時に、相手に向かって走り出し、次の瞬間、中心部分でぶつかり合う。


それだけで、入り口まで下がっていたポヨネ達にも強い衝撃が来る。



「うそでしょ!?」



ポヨネは、急いで結界を再構築する。今まで張っていたものを全て消し、自分たちを守るためのものに切り替える。

それでようやくなレベル。全力で防がないと自分たちが危ない。

手加減ができないとは、このレベルなのかと、ポヨネは自分の目を疑う。


最初のぶつかり合い以降、二人は高速でぶつかり合い続ける。

既に、誰の目にも負えなくなっている。



「おらぁ!!!」


「グッ!!」



恭輔がこぶしを振るえば、大気が揺れて強烈な風が勢いよく人型に叩きつけられる。

人型が魔法で恭輔を取り囲めば、無数の刃が恭輔から放たれて魔法を相殺。

殴り合いになり、拳と拳がぶつかりあうと、一発一発ぶつかりあうたびに恐ろしいほどの轟音を立てる。


先ほどまで、フミたちとの戦いでは表情一つ変えずにいた人型が、徐々に苦しそうな顔になっていく。

それだけ、恭輔の攻撃が重いのだ。防いでいるはず、躱しているはずなのに、ダメージが体に蓄積している。


人型が、腕に魔力を纏わせて殴る。

それを恭輔が左手でいなしながら、開いた手で反撃をおこなう。

人型は、それを体をひねることで回避し、すれ違いざまに蹴りつける。

蹴りつけられたところを『硬質化』させ、ダメージを最小限に防いで、そのついでに足を掴む。

掴まれた足をどうにかしようと人型は再度魔法で攻撃しようとするが、恭輔が人型の体を引き寄せ膝を腹部に叩き込む。

呼吸ができず、魔法も途中で中断させられた。それでも、次の攻撃を防ごうと防御姿勢をとろうとするが、それより早く体を一回転させて勢いをつけた恭輔の蹴りが直撃する。



距離が離れる。

一方的に攻撃してるのは恭輔だ。

しかし、恭輔の顔もさえない。先ほどから、確実に直撃させたはずの攻撃が何かに防がれてる。

完全に止められたわけじゃないが、威力をだいぶ抑えられている。



「・・・空間毎止めてんのか」


「・・・正、解」


「余裕ないみたいだな」


「・・・当然。今の、あなたはあぶない」


「みたいだな」



毎回、威力を抑えられているわけじゃないようだ。

あちらの反応が間に合わない攻撃に関しては、それすらままならないらしい。

こちらの動きを止めようにも、恭輔が速く動くせいで的を定められないのだろう。


そこまで考えて、恭輔は再度思考を戦闘に戻す。



「まぁ、なんでもいいわな。止められても、それごとぶち抜けば一緒だ」


「!?」(ブル



恭輔の目は、それを見逃さなかった。

今、人型が震えた。それだけ、恭輔という存在が脅威に見えているということだろう。

それを確認した瞬間。



「しゅーりょう」


「・・・は?」



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