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245話

夜分です。

フミが大地を砕き、コロちゃんがすべてを切り裂く。

フミとコロちゃんが主体となって、苛烈な攻撃が人型を襲う。

一瞬の隙をついて、様々な魔法が飛んでいく。回避できない物は、すべて寸前で何かにかき消される。


攻撃が、そもそも通っていない。

意味がないのだ。



「・・・なんで」


「恭輔さん」


「ポヨネ」


「はい。ポヨネですよ」



ポヨネが、駆け寄ってきた。

彼女だけ、少し遅れてここに入ってきたようだ。



「どうやって」


「私だけ、少し出てくるのが遅くなっただけです。ニホリとロラちゃんは、流石にお留守番ですが」


「・・・」


「恭輔さん・・・どうかしましたか?」


「・・・なぁ、ポヨネ」


「はい」


「なんで、来てくれたんだ?」


「・・・はい?」



ここがどこなのか。どうやってこの場所がわかったのか。

そんなことはどうでもいい。



「来る意味、ないだろ」


「・・・」


「だって、あいつは俺に目的があるんだ。来なければ、お前らには何もないんだ」



来なければ、ダンジョンなんて、来なければ危ないことなんてないんだ。今のおまえらなら。



「俺が、帰らなくても大丈夫だろう」


「・・・恭輔さん」


「俺である意味なんて、もうないだろ・・・」



ああ、こういうことか。

なんであの人型が、あんな質問をしたのかようやく理解できた。

皆、もう俺が必要ないんだ。最初は、まだみんな弱かった。人間の間で生きていくのに、必要な知識もなかった。

でも、もう違う。力もついた、知識も学んだ。俺がいなくても、どうにかなるはずだ。


だから、俺が、守る必要がないんだ。



「皆、あぶない目にあってまで来る必要なかっただろ」


「・・・恭輔さん」


「・・・なんでだ」


「すいません。その質問、自分で考えてください」


「・・・は?」


「私、あっちに混ざってきます。私は分身なので、みんなと違って負けても問題ないですし」


「・・・ポヨネ?」


「行ってきます」



そう言って、ポヨネは人間モードになって駆け出した。

気のせいか、最後に見たポヨネの目は。



何か、よくない物を覚悟しているような気がした。























ポヨネが戦闘に加わってから、戦闘は過激さを増した。

ポヨネがサポートに回ることで、全員の攻撃頻度が大幅に上昇した。


貫き、切り裂き、砕き、焼き尽くしす。

ありとあらゆる攻撃が人型を襲い、それらすべてが効いていない。

数が多いからか、ダメージこそないがあちらも攻撃できていない。

攻撃しようとしても、その前に動作ごと止められるのだ。

ポヨネの補助も大きい、結界でみんなの動きが速くなり、相手の動きは遅くなる。



「やっぱり効いてませんね」


「それでも!うちはあいつをぶん殴るで!」


「ガァァァァァ!!!」



それでも、どれだけやっても届かない。

皆が来てから、全員全力を出し続けている。長時間戦うのは無理だ。

限界がすぐに来る。そしたら、攻撃したみんなはあの時のフミみたいにやられてしまう。



そんなことする必要ないのに。

俺を置いて、逃げればいいのに。俺から離れられるんだから、そうすればいいのに。



・・・あれ、俺なんで




















「・・・あなたにも、質問」


「ああ?」


「なぜ、彼を守る」


「何アホみたいこと聞いとんねん!ボケたんか!」


「まじめ」


「ああそうかい。じゃあ答えたるわ!」



フミは、その間も攻撃を止めない。拳を振り続ける。それが無駄だと知りながら。

全力を出し続けた戦闘で、一番長く戦えるのは自分だという意識が、フミに手抜きを許さない。

自分が落ちれば、他のみんなの負担が大きくなる。そうしたら、一気に崩れてしまう。恭輔を守れない。


だから、一分一秒を必死で戦う。自分に意識を向けさせるために。



「うちはな!恭輔が好きで好きで仕方ないんよ!!」


「理解。質問、何故好きになった」


「知らんわ!!!」


「・・・は?」



人型の動きが止まった。

フミは止まらない。



「クッ」


「気がついたらこうやったんやから、んなことわかるかぁぁぁ!!!」



だからフミは止まらない。どこまでも、いつまでも。

恭輔の為に全力。


その姿は、ある種の答えであった。



「誰に言われたわけでも、頼まれたわけでもない!!

 うちが、恭輔守りたいんや!好きやから!!一緒にいてほしいんやろが!!!」























好きだから。

その言葉は、恭輔にも覚えがある。


フミが、初めて『昇華』の影響を受けた時。

恭輔を殺しそうになった時。あの時。フミは恭輔の元から離れようとしていた。

でも、それを恭輔が拒否した。離れるなと、どこにも行くなと。


フミも一緒なのだ。

いや、みんな一緒だ。恭輔のどこにもいってほしくない。

ずっと一緒にいたいから、離れたくないからここに来たのだ。


理由は、それだけで十分だ。


離れたくないのだ、一緒にいたいのだけなのだ。

それだけで、大門恭輔は戦える。そのために、いつまでも、どこまでも。

自分自身が守りたいと思った者のために、

彼女の好きな自分が、誰よりもかっこいいのだと証明するために。



力の華は一度枯れた。

だが、彼はここにいる。変わらぬ気持ちを胸に、今ここに立ち上がる。


今こそ、すべてを超えるとき。

俺が、守るのだと




「『■■』発動」








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