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244話

昼一話夜一話です。

そろそろこの一日2話投稿も終わりですかねー

目を覚ますと、そこには土の空が広がっていた。



「・・・ここ、どこだ」



俺は、自分の部屋で寝ていたはずだ。

フミに抱き着かれて・・・そうだ、フミは。



「いない」


「!!」


「ここにいるのは、あなたと私だけ」


「・・・ダンジョン」



ダンジョンの人型が、そこにいた。

とういうことは、ここはダンジョンの中か?

だとして、なんで俺を連れてきた。


いや、そもそもここがダンジョンだとして、ここは何層だ。

周りの景色から10より上の可能性が高いけど、モンスターがいないから判断できない。



「なんで、俺を呼んだ。いや、連れてきたのか」


「肯定。あなたの問題を解決しにきた」


「はぁ?問題?」


「あなたのスキル『昇華』の使用」


「・・・」


「構えて」


「・・・は?」


「体を動かしながらの方が都合がいいと判断した。こちらから行く」


「はぁ!?クッソ!」



前回戦った時の瞬間移動ではないが、十分に速い。

一歩の踏み込みで俺との距離を詰めてきた。


魔力の高まりを感じないので近接戦闘か。

だったら、



そう構えたとたん、後頭部に衝撃がきた。



「ガァ!?」


「周りも見るべき」



背後から魔法攻撃・・・いつのまに?

目の前にいたから注意は前方に向いていたが、背後に気を付けてなかったわけではない。

ちゃんと集中はしていたはずなのに。



「早く立て」


「クッ・・・」



『硬質化』が間に合わない・・・いや、そもそも発動しようとすら思わなかった。


急いで立ち上がる。

ダンジョンの人型は、その間なにもしない。構えてもいないのだ。

変わらず、魔力の反応はない。



「どういうつもりだ」


「・・・」


「戦うのなら、今のうちに攻撃するべきだろう」


「否定」


「あぁ?」


「こちらの目的は、戦闘ではない」


「・・・あくまで、『昇華』を使わせること?」


「肯定」


「ハッ。だったら、意味ないだろ。戦って使えるようになるなら、とっくに使えてる」


「否定。戦闘は手段の一つ」


「・・・」


「ここから、魔法は使わずに戦闘をおこなう」


「・・・は?」


「その間、こちらの質問に答えろ」


「・・・」



舐められてる。こいつにとって、『昇華』なしの俺はその程度でしかない。

会話しながらでも対処できる。

魔法なしでも勝ててしまう。

それくらい、弱い存在。



「ふっざっけんなぁぁぁぁぁ!!」


「・・・それでいい」
























攻撃時には『硬質化』をあまり使わない。攻撃時に無駄に力むことになるから。

でも、こいつと殴り合いをするのに『硬質化』を使わないと駄目なのだ。俺の体が先にダメになる。


俺の攻撃はすべて止められている。

フェイントをかけても、それを上から潰される。

拳は拳で、脚は脚で。どれだけ強くしても、どれだけ速くしても、すべて届かない。

力が足りないんじゃない。技量も足りてないんだ。

フミとの戦いだって、ここまで何もできないことはない。手ごたえすら感じない。

すべてが無駄に終わっている。



「質問、あなたは何故戦う」


「知るかよ!」


「質問、あなたは何故ここに来たがる」


「うるさいんだよ!」



それにこれだ、さっきからずっと何かしら質問を投げかけてきている。

内容自体は大したことじゃない。俺も前に誰かに聞かれたようなことだ。

でもなぜか、今はイラつくだけなのだ。


そのせいで、余計にこちらの攻撃は雑になり、さらに届かなくなる。

自分でもそれはわかっているが、どうしても止められない。

今止まったら、もう攻撃できない。そんな予感がしている。


だが、どちらにせよ長くは続かなかった。

次の質問で、俺は攻撃どころか動くこともできなくなった。



「質問、あなたは何故・・・









あのモンスター達を守ろうとする」



「・・・は?」



何を言っているんだ?こいつは。



「・・・お前、本気で言っているのか」


「肯定。私は理解できない」


「何が」


「あなたが守る必要はないはず」


「・・・」


「守れるのなら、あなたでなくてもいいはず」


「・・・れよ」


「あなたのそばにいながらでも、彼女たちは自分たちを守れる」


「黙れ!!!」



部屋全体に干渉。

自分以外のすべてを潰すように、壁全体から土の塔を出現させ、それらを全てダンジョンの人型相手に向ける。

俺の視界には、既に土の壁しか見えない。完全に人型を潰した。そう思った。


だけど、ダメだった。


少しづつ、土の壁が崩れていく。

いや、中から壊されている。



「・・・」


「無意味。それはとどかない」



一瞬で、すべて壊された。塔のすべてが、粉々に砕かれた。



「質問を続ける」


「・・・」


「何故、あなたが守ろうとする」



何も通用しない。

意味がない。

出来ることがない。


倒す必要はない。だが、今のままでは意味がない。

こいつの質問が重要なのか?

だから俺は何もできないのか?



「・・・その質問、なんの意味があるんだ」


「『昇華』が使用できない理由は、あなたの精神状態が原因」


「・・・だろうな」


「あなたの、ここに来たくないという思いと、守るためには来るしかないという強迫観念がぶつかり合い、不調を起こしている」


「俺が、ダンジョンに来たくない?」


「そう、あなたは。そう思っている」



ありえない。そもそも潜り始めた理由からして、潜りたくないと思うのはありえない。

だって、俺の最初の理由は興味だ。なら次は、面倒だと思うはずだ。それを思ったことはない。


潜りたくないというのは、拒否だ。自分の意思で来ているのだから、それだけはないはずだ。



「正確には、あなたはここに関連する物事で誰かを失うのを恐れている」


「・・・!」


「『昇華』の暴走。それ以外の要因。あなたは、今になってそれを思い出した」


「・・・それは」


「初めは、特殊オーガとの戦闘。その時、あなたは初めて死にかけた」


「・・・だけど勝った」


「そう。あなたは勝った。そして、その時はまだ彼らだけだった」



彼ら・・・あの時は、コロちゃんとすらっぴ、バトちゃん、ねっさんだけだった。



「次は、私との戦闘」


「30層」


「あなたは倒れ、彼女もそうなりそうだった」


「でも、あれは『昇華』が」


「肯定。あれは意図的に感情を爆発させるための物だった」



あれがあるから、あの時フミを守れたんだ。

俺が、守れたんだ。



「そして、それがなくなった」


「・・・」


「あなたは。守るための『昇華』がなくなったことで、ようやく恐れ始めた」


「・・・」


「死ぬことではなく、彼らを、特に、彼女を失うことを恐れ始めた。自分が守れないことを恐れ始めた」


「・・・」


「故に、私は質問する。あなたは何故、守ろうとする」


「・・・」


「何故、あなたが守ろうとする」



それは・・・それは俺が・・・



「どうでもええわそんなもん」


「む」


「え?」


「なんで恭輔がうちを守りたいかなんて、どうでもええわ」


「ワン」


「ぴ」


「き」


「ちゅ」


「クゥ」


「るる」


「めぇ」


「!!」


「・・・みんな?」


「恭輔。ちょい待っててな。今からみんなで」



あいつぶちのめす

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