242話
昼一話夜一話です
「うわマジででけぇ」
「うー」
「・・・恭輔ん家もそこそこ大きいん・・・よな?」
「周りとみて比べてみた通りだよ」
名残惜しいライオンの赤ちゃんたちと別れて家に帰り、夕飯を食べて、みんなで就寝。
普段はなんだかんだですぐに寝ないニホリもこの日はすぐに寝た。
よほど楽しみだったのだろう、雪ちゃんの家に遊びに行くのは。
・・・俺は今ここに来てちょっと気後れしはじめたぞ。
「あ、恭輔さん!」
「見つかった」
「うー」
「ニホリちゃん」
「う!」
「いらっしゃい!」
既に玄関で待っていたようだ。来たのを教えたのはヨミさんだな。
俺たちはもうヨミさんの張った結界の中に入り込んでいたようだ。体に影響はないけど・・・
「・・・空中の魔力が変だな」
「相変わらず敏感やなぁ。流れが止まっとるやろ?」
「というか、ある程度の場所から流れない感じか」
「この流れが、ここらへん一体に結界が張られてる証拠ですよ」
「おはよヨミ」
「おはようございます、お姉さま」
ヨミさんも出てきた。今日は耳としっぽは仕舞っている。家だと出してないのか?
「お掃除大変じゃないですか」
「そこか」
「雪ちゃんからは出してって言われるんですけどね~」
「出せばええやん?」
「いや、メイドさん達の掃除の量増やすのもあれなので・・・」
あら。そういうところを気にするのか。むしろ気にしない方かと思ったけど。
「・・・なんか、こう、丁寧に扱われてると・・・違和感が」
「ああ。わかる」
「今から恭輔さん達もおもてなしを受けるんですよ・・・ふっふっふ」
「何されるんやうちらは・・・」
おもてなし(意味深)だよきっと。
雪ちゃんの家・・・てか屋敷だな。
その中はまぁ見た目通りの豪華さ。なんか高そうなツボとか絵画とかある。
でもそれ以上に絨毯が綺麗なこと綺麗なこと。
案内はメイドさんが・・・てはなく、雪ちゃんがやってくれている。
気配的に、何人か周囲でスタンバイしているようだ。何かあったらすぐに駆け付けられるようにだろう。
先頭をニホリと並んで歩いている雪ちゃん。その頭には気がついたら鳥が一羽。シルフバードだな。
「そういや、驚かれなかったのか?」
「何がです?」
「いや、シルフバード。いきなり連れてきたんだろ?」
「ああ。元々安全な移動手段は用意するって言ってありましたから」
「・・・え、それだけ?」
「恭輔さんの力を借りるって言ったので大体モンスターだと予測されてましたよ?」
「さっすが社長」
雪ちゃんのお父さん。今日は仕事でいないらしく、そのことについて俺にメールで謝罪があった。
俺もあったのは数回。それも、雪ちゃんがまだ病院にいた時にだけど、まぁかっこいい大人って感じだ。
自分の好きな物を前にすると少々子供っぽくなるが。ピッちゃんを初めて見た時とか大興奮だったし。
それにしても、驚かない・・・予測していた当たり流石って感じ。
千爺の縁者なだけあるわ。
「周りにいる人は?」
「いざって時の備えです。雪ちゃんが、私ががんばるって言ってたので」
「ああ、なるほど」
ニホリも楽しみにしていたが、雪ちゃんも十分楽しみにしてくれていたようだ。
・・・あれ、俺の休暇って話なのになぜニホリが一番楽しみにしてるんだ?
いやいいんだけど。
そうこうしているうちに、雪ちゃんの部屋についたようだ。
廊下を歩いている間にも何個も扉があったが、基本は物置らしい。ヨミさんに聞いたが、洋服がいっぱいだとか。
雪ちゃんの部屋は、当然と言っていいほどに広い。
だが、その広さに対してあまり物は置かれていない。犬用の道具とか、鳥かごが目立つ。
逆に言うと、それ以外は物がない。
雪ちゃんは、10歳なので今でも十分小さい。
しかし、もっと前から病院にずっといたのだ。あまり自分の物を持つという習慣がないのかもしれない。
この部屋も、使われ始めたのは最近なのかもしれない。
「あ、雪ちゃんの私物は違う部屋ですよ?昨日一生懸命片してました」
「ヨミ!?」
「あ、そっちか!」
俺の考えたことは全部なかったことにしましょう。
「みんなで遊ぶんだーって言って、準備したのがあそこに」
「ああ、アリシアも呼べばよかったな」
「うぅぅ///」
「うーうー!」
「辱めにあっとる・・・」
「・・・なんで本体と私はこんなに違うのかと」
「元がねっさんやからなぁ」
「なるほど。ありがとうかつての私」
ポヨネ、ようやく喋ったと思ったらそれ?
あれ、ていうかポヨネと雪ちゃんって初対面?
「いや、二回目か」
「一回うちに来とったな」
「そうですね。お久しぶりです雪ちゃん」
「はい、お久しぶりです!」
「・・・私相手ならもっと普通でいいですよ?」
「いいんですか?」
「私、ねっさんでヨミですから。かしこまられると逆に・・・」
「・・・えっと?」
「あれ、そっちは見せたことないのか」
「でしたっけ。えい」(ポン
一日5回しか使えない『物真似』による『変化』
ポメラニアンだったポヨネが髪を横にまとめたヨミさんに変わった。
「・・・へ?」
「む。髪型変えたんですか」
「はい。いつまでもあなたと同じじゃあれですし・・・あと」
「後?」
「恭輔さんはどの髪型が好みなのかなぁって」
「ぶ!?」
唐突な流れ弾で俺が死ぬ。
しかし、フミは冷静
「いや、ポヨネ家でその姿ならんやろ」
「ふふふ。そうですね」
「ああ、なんだ。冗談ですか」
「うー」
「・・・え、何。俺狙い撃ち?」
「そもそも恭輔さんを狙うなら毛並みを変えるとか、犬の姿で甘えるとか」
「せやな。うちもそうするわ」
「お姉さまの場合はそんなことしなくてもちょっとはだければ」
「・・・恥ずかしいやん///」
「一緒に一晩過ごしておいて何をいまさら」
「家でも、夜二人だけにするとすごいですよ?丁寧に音を遮断してまで」
「そ、それやっとるのうちやないし」
「あれ、恭輔さんそんなことできるんです?」
「いや、防音にしてるだけなんだけど」
ちょいとした魔法の応用だ。まぁ出来るようになったのは『昇華』の効果中のことで、今は出来ないんだが。
ところで君ら、さっきから雪ちゃんが固まっているけど放置かい?
「あ、そうでした」(ポン
「お、ならうちも合わせるかな」(ポン
「でしたら私も。面白そうですし」(ポン
ポヨネ、フミ、ヨミさんの順でポンポンポンと変化。
全員が動物モードに。ヨミさんの動物モードは知らない犬だ。
モンスターとしても姿なんだろう。ぱっと見はゴールデンレトリバーに似ているが、それにしては何か違うな。
・・・犬型ではいまだうちにいないモフだ。コロちゃんはもっとモフい。
だがヨミさんの髪やしっぽの毛から想像できていた感じの透き通るタイプの毛並みだ。
丁寧に手入れされているのを感じる。なにより、非常にいいにおい。まさに飼い犬としてベストな・・・
「おい」
「ハッ!!」
「何人の妹嗅いでんねん」
「・・・」
「む、無言で近寄られて何事かと・・・」
「まぁ恭輔さんですし。私も最初やられましたね」
「・・・そういやうちもやられたわ」
全くの無意識だった。なんとなくそのままフミを抱いて同じことをしよう。
いや、特に意味はないんだけど。
それにしても、何のためらいもなく堪能してしまった。雪ちゃんの混乱を戻すための動物モードだというのに。
あ、そんなことしてたら雪ちゃん戻ってきた。
「な、ヨミが二人になった!?」
「うーうー」
「え!?ヨミじゃない?ポヨネさん?」
ん~これの説明面倒だな・・・『分身』のことから話さないといけないし。
「うー?」
「え?」
「うーううー。うー」
「・・・なるほど」
「うそぉ!?」
恭輔がまたたぶらかしたんだ!って今の説明でなんでわかるの!?
「いや間違ってないでしょ」
「・・・まぁ合ってますよね」
「マジか」
「ていうか、いつまでお姉さまをお抱えで?」
「え」
「あ、ふん。きょ、恭輔あかんて」
「あ」
しまったやりすぎた。




