233話
見えなかったんじゃない、反応できなかった!?
フミは、先ほどの発火攻撃をものすごい速度でおこなった。
おそらくやったのはそれだけ。ただ、魔力の高まりが異常に速かった。
俺みたいに無理やりタイムを省略してるんじゃなくて、そもそもの発動時間が短いようだ。
吹き飛ばされながら、思考できたのはそこまで。
吹き飛んだ先に、すでにフミが構えていた。
「ハッ!!」
「クゥッ!?」
姿勢をなんとか整えて肩で受け止める。
その勢いで砕けそうなほどの痛みがくる。
再び吹き飛ばされる。落ち着く暇もない。
なにせ、また飛んだ先にフミがいるのだから。
「チィィ!!」
「やらせんわ」
「なぁ!?」
姿勢を整えながら即時発動でフミと俺を遮るように壁は発生。それと同時にフミに槍を複数撃ちだして攻撃もおこなう。
だがそれは、すべて一瞬で砕かれた。
すべてが大きな炎に飲まれ跡形も残らない。
発動の前兆がほとんど感じれない。速すぎるのだ。
吹き飛んだ勢いが殺せていない俺はそのままフミに向かって飛んでいく。
このままじゃマズイ
「これで終わりやな」
「・・・まだだ!!」
フミの拳が俺に当たる寸前に体をひねって拳を躱す。それを読んでいたかのようにしっぽの叩きつけが来る。
「ングッ」
「あら。痛いやろ、それ」
地面に叩きつけられる。呼吸ができない。
だけど、近くによれて攻撃が止まった。
今しかない。
体が動かず、呼吸もままならないが、魔法は使える。
残った力と集中力をかき集めて右手に魔力を貯める。このままでは間に合わないので即時発動にまでもっていく。
土の槍を射出する要領で俺の右手に出来た籠手で殴りつける。
「うん。やっぱり動けるんやな」
「な・・・」
驚くこともできなかった。
最初からわかっていたように手で受け止められた。
「でも、流石にもう辞めや」
「あ、ガッハ!?」
腕ごと引き寄せられて、腹に一撃。
「はい。終了」
「ッハァ・・・・」
地面にたたきつけられた時と比べ物にならない衝撃だった。
『硬質化』も間に合わなかった。
そこまで理解したところで・・・
「ん~やっぱり恭輔強なっとるわ・ヨミも適当なこと言いよって」
「・・・あのフミさん?」
「もっと楽に呼んでええ言うてるやんか~」
「いや、そうじゃなくて・・・」
「うん?」
「恭輔さん・・・気絶してます」
「へ?・・・ええ!?」
「完全にやりすぎです」
「ちょ、きょ、恭輔!?」
「最後の一発要らなかったですよ」
目が覚めたのは俺の部屋だった。
あれだけやられたのにも関わらず体は痛くない。
「・・・何故に?」
「うー!」
「おおう、ニホリ・・・オナカヘッタ」
「う?」
「え、おかゆ?何故に」
「うーうー」
「ああ~なんか最後にいいの貰った気が・・・」
なんか腹に一撃は食らったのはギリギリ覚えてる。その後どうなったかわからないが。
「念のためにってことか。じゃあそれでいいや」
「うー?」
「梅」
「うーうー」
すぐ持ってくるねーとふわふわと部屋を出て行った。
気配的に、みんないるみたいなんだけど、なんかフミ囲まれてね?
「いや、普通にやりすぎですし」
「ああポヨネ」
「体は大丈夫ですか?」
「ああ、割と」
何故か不思議と痛くないくらった衝撃から間違いなく痣にはなってたはずだし、なんなら右肩壊れたかと。
「ロラちゃんが、恭輔さんを見てギャン泣きしまして、それがものすごい薬だったんですよ」
「へぇ~・・・え、ギャン泣き?」
「はい、ギャン泣きです」
ギャン泣きて
「完全にフミさん。加減間違えてましたし」
「え、でも少し本気だって」
「あれは恭輔さんの強化を促すための物で、あそこまでやる必要なかったです」
あ、これポヨネもちょっと怒ってるわ。
「大体あれ、恭輔さんじゃなきゃ一撃目に死んでます」
「どんな一撃だったの!?」
「まぁ無意識で固くなれてたようなので、なんとかってところですかね」
「うわぁ」
「・・・まぁそれだけ恭輔さんが強くなってたってことなんですけど」
「・・・加減を間違えるくらいに?」
「最初の一撃をほとんど無防備に食らったのに、その後は対応できてましたよね」
「出来たね」
「ちぐはぐですよ。激痛で思考すらままならないはずなのに、興奮状態でそれを無視。二回目以降の攻撃を耐えるだけじゃなくて迎撃もするなんて」
「え、何。俺そんなにやばかった?」
「死なないでっていいながらマジで殺す攻撃使うやつがいますかって感じですね」
ああ、これすっごく怒ってますね。
だからフミが下で囲まれてるのか。これ、みんなにむっちゃ怒られてる。
「まぁ、そこまでボコボコにされたんですから。何かつかめました?」
「ああ、多分」
フミが言ってた、本気が出せなくなってったやつ。あれは間違いない。
ていうか、フミとの戦いでした動きとか魔法ができればロックリザードなんて余裕だわ。
まったく苦戦しないわ。
それでも苦戦した理由は、完全に俺が本気を出せなかったせい。
ていうか、力の使い方自体ボロクソになっていた。
あと、ヨミさんの言ってた弱くなってるだけど、これも上の本気を出せてないってやつ理由と一緒だろう。集中できてないって言うか、なんだろう、最後の方は何も考えてなかったからこそあれだけ戦えたって感じだったな。
なんだったんだあれ。
「まぁ、大丈夫かな」
「はぁ・・・だったらいいです」
「いいの?」
「ええ、だって。そしたら次はないでしょ?」
「・・・」
「ないですよね?」
「・・・はいぃ」
もう一回くらいやろうかなぁとか思ってたんだけど。
ポヨネが怖い。ポメラニアンなのになんかオーラすごい。
「うーうー」
「あ、おかゆだ」
「おつかれさまですニホリ」
「うー」
いいってことよ~と、相変わらずなニホリ。
・・・あんまり怒ってない?
「ニホリは怒ってないの?」
「う?」
「あ、すいません」
手加減間違えたフミより、また無茶しやがったなこの野郎って感じなのね。
「毎度毎度誠に申し訳ない・・・」
「うー」(ツーン
「まぁニホリの言うことも分かりますね。恭輔さん。こっちが心配してるのにそれも知らずに」
「うーうー」
「ですよね!毎回毎回ハラハラで・・・」
俺の目の前で俺のこと心配愚痴大会やめて。
お?なんだなんだ。こういう方面で俺を攻撃か?すごく効くんだが????
「・・・じゃあ少しは・・・ねぇ?」
「うー?」
「・・・善処します」
俺、そんなに無茶してるかなぁ・・・
夜分です




