227話
夜分です
ヨミさん(分身)のお願いって一体・・・
そんなことをずっと考えていたら気がついたらボス部屋に入っていました。どんだけ。
ユニちゃん対ワイバーンは思いっきり長引いた。
基本飛びっぱなしのワイバーンに対して、遠距離攻撃を持たないユニちゃん。
ユニちゃんは基本攻撃できないし、ワイバーンの攻撃を地上を高速で移動しながら分身するユニちゃんに当たらない。
我慢比べの様相が見え始めた時、ワイバーンがしびれを切らして直接噛みつきに来た。
それが決め手だった。
ワイバーンが噛みつく前に、ユニちゃんの分身がワイバーンの頭の上に発生。
そのまま全体重をつかった踏みつけで頭を潰す。その衝撃でワイバーンが動けなくなったところをこれまた分身達が踏みつけまくる。
狂化オーガでも見た光景だ・・・
「まぁユニちゃんはこれしかできませんし」
「そうなの?」
「角で攻撃してもいいんですけど、踏みつけの方が威力高いですし。そうすると数増やす『分身』はやっぱ強いですし」
「はぁ~」
らしい。
まぁ確かに数は力だ。ねっさんだって数の力の強大さみたいなものがにじみ出る戦い方してるし。
まぁでも、ユニちゃんも順調に強くなっているようだ。スキル不足による攻撃手段の不足に関しては俺の運によるだろう。
ないかユニちゃんの強みを生かせるいい感じのスキルが出てくればなー。
そんなことを考えてきたら、ヨミさんたちはそのまま先に進むのではなくワープ部屋に向かっていた。
「あれ、もう帰るの?」
「はい。今日は帰ります」
「???」
「このまま行っても恭輔さんずっと気に病みそうですし」
「うっ」
ヨミさんの分身話は俺の心にくる。
「ほら、あんなふうに。だから早めにお願いごと聞いてもらおうかと」
「・・・」(コクリ
「ね?」
「ぐは」
「ちゅ~」
「るる」
面倒って言われた・・・皆に面倒って言われた・・・
そこまで気にすることじゃなくなーいって言われた・・・
「じゃあ帰りますか」
「!!」
「ちゅー」
「るー」
「にゃー」
「」(ワー
かえるぞー
「あら?早かったやん」
「ええ。いろいろありまして」
「へぇ~・・・うん?」
「どうかしましたか」
「・・・ヨミやないな」
「あら。気がつきますか」
家に帰ってきたらなにやら雰囲気が物騒なことに。
「誰や」
「ヨミですよ?分身用のコピーですけど」
「うん?」
「うーうー」
「・・・ああ!そういうことかいな!もー。はよ言うてや!」
「ふふ。やっぱりやさしいですねお姉さま」
ニホリが何かを言ったとたん。一瞬で雰囲気が変わった。
ニホリ何言ったの?
「う?」
「・・・知ってたのね」
「うー」
「いや、それをダンジョン内で聞かされてかなり俺がクソヤロウ・・・」
死にてぇ・・・
「ああ、ついに知ってしもたんか」
「あれは不可抗力ですし、私は気にしてないんですけどね」
「まぁ恭輔やしなぁ」
「だからちょっと一手打ちました」
「何したん?」
「この後お願い事聞いてもらおうかと」
「・・・うーん。ヨミやないんやけどヨミやしなぁ・・・」
「別にお姉さまから取ったりしませんよ」
「・・・二号さんとかならへんよな」
「分身の私が?」
「恭輔の事やから、そのうちそれもどうにかしそうって感じせぇへん?」
「ああ~」
「お前らの中の俺って今どうなってるの?」
なんかいろいろ自分に都合の悪いことを気合でねじ伏せるとかそんな感じになってない?
それとも困ったことがあっても知りあい(ダンジョン人型)とかに頼める立場にあるとか思われてない?
「必要なんや!って訴えればいけるんちゃう?」
「ですよね」
「・・・いや、流石に」
無理・・・だよな?
「まぁそういうことならしゃーないかぁ」
「あら?もうちょい暴れるかと」
「恭輔もうちのことなんやおもてるんや」
「いや、影響出てないのかって」
「ああ、そこがあったなぁ。今はまだ大丈夫・・・ていうか、これのお願いごとって多分知っとるし」
「へ?」
何か言われてた?
もしかして、ねっさん時代に何か言われてた可能性はある?
「まぁそんなところやな」
「嫉妬するものもないと」
「・・・ないわけやないけど、後で構ってもらうもん」
「それはもちろん」
なるほど、『昇華』の影響の中でも我慢できる範囲があるのか。
今回の場合はヨミさん・・・てか、ねっさんって印象が強いからかな。
ねっさんに女として嫉妬するって・・・いや、コロちゃん相手にそうだったからワンチャン?
「恭輔さん恭輔さん」
「はい?」
「お部屋に行きたいです」
「うん?まぁいいけど」
「まぁ二人でごゆっくり~やな」
「うーうー」
「ちゅ」
「はい」
「ちゅちゅ」
「!!ふふ。ありがとうございますね。私」
ねっさんがヨミさんに何かを伝えた。
それを聞いたヨミさんは、一度驚いた後に笑いながらねっさんを抱えた。
何か元ねっさんとして感じる物があるのだろう。
一通りねっさんを撫でたヨミさんは、何か満足そうな顔して俺の隣に来た。
「じゃあ、行きましょうか」
「・・・おう」




