226話
昼一話夜一話です
「!!」
「ああ、来ましたね」
「遅れましたーおお!?」
「!!」(スリスリ
ねっさんにヨミさんたちをボス部屋の前で止めてもらい、ようやく合流となった時にユニちゃんに思いっきり突進された。
受け止められずそのまま倒され、なすがまま、されるがままの状態に。
久しぶりーって甘えられてるけど家で毎日会ってるでしょ?
「!!!」(フン
「ああ、まぁ確かに」
ユニちゃんもダンジョンに潜るようになり、前のようには時間がとれてないのはある。
まぁ今俺は休憩期間みたいになってるから家にいるんですけど。
「・・・?」
「いいですけど、そうすると合流できるの遅くなりますよ?」
「・・・!」
「ふふ。そうですね。がんばりましょうか」
まぁ俺といたいからダンジョンの時間減らしたら将来的に一緒にダンジョンに潜る時間が減るってことだからな。
まぁ今のペースだと誤差みたいなもんだろうけど。
ていうか、ヨミさん。なんか違わない?
「分身体と本体でなんか違うような・・・」
「・・・ああ、本当に気がついてくれるんですね」
「ん?」
「ふふ。だって私は本体のヨミとは違いますから」
「・・・うん?」
分身のヨミさん曰く、自分の見たもの、感じたものの記憶は分身から情報を送る。
例えば、ねっさんの場合は探索が多いから、俺が命令した物を見つけた分身が本体に見つけた時に情報を送る。
だからすべての情報を共有してるわけじゃない。
そして違うと言った最大の理由は
「別の思考?」
「ええ、私の場合、ヨミを参考に生まれ、『分身』というスキルに蓄積されていく存在です」
「・・・じゃあ」
「一応、私たちは一つの生命体と言えますね」
まぁ体が消えても死なないんですけど。
それを、なんでもないように告げる。
だが、俺にとってその事実は大きなことだ。
「・・・ねっさんたちも?」
「ちゅ?」
「はい?」
「・・・いや、ヨミさんじゃなくて」
「いや、私。ねっさんだった時期もありますよ?」
「・・・うん?」
「だから『分身』に蓄積されてるって言ったじゃないですか」
「・・・・・・んんんん????」
どういうことだってばよ。
「ああ、言い方がよくなかったですね」
『分身』は、使用者を参考にもう一人の自分を作り出す能力。
つまり増やせる数はこの蓄積できる自分の数によるってことだ。
「だからヨミさんはヨミさんだよね?」
「いや、だってスキル私は持ってませんし」
「・・・あ」
そうなのだ。『分身』自体はねっさんのスキル。今はユニちゃんも持っているが、最初にヨミさんが来た時は覚えてなかった。
ヨミさん曰く、私が他人をスキルを使用できるのは、他人のスキルをそのまま使用しているから。
自分の物として使っているわけではなく、あくまでも他人の物として使っている。
『分身』の場合、自分のストックもねっさんの物になる。
ねっさん自身の『分身』にはまだ大量に空きがあったので、その容量の空きを借りたらしい。
「・・・そこにヨミさんを入れたんじゃ?」
「ではなく、ねっさんの私達を統合してヨミを生み出した。これが一番いい表現ですかね」
「な・・・るほど?」
「まぁ無理に理解しなくてもいいですよ」
いや、うちの子のスキルなんだからどうなってるのかちゃんと理解する義務があってな?
ていうかそれだと今俺の目の前にいるヨミさんはねっさんだったからうちの子?
「ねっさん・・・?」
「いや、今はヨミです」
「ちゅ!」
ってそうじゃない!
「・・・ねっさんたちも、意識は普通にあるってことだよな?」
「いやないですけど」
「んんんん???」
言ってることが毎回違ってるんだが!?
「ああ、そういうことですか」
「ちゅちゅ~ちゅ!」
「ええ?」
ねっさんの『分身』達は、『爆発』で相手に特攻することが前提の子たち。
だから、ねっさんは分身を増やす際に自分のコピーではなく劣化コピー。考えることも感じることもしない、あくまでもスキルと外見だけの最低限のコピー体を作っていたらしい。
だからこそ、大量に分身体を増やせた。
「そんな器用なことできるの?」
「できますよ?基本意味ないですけど」
「なんで」
「だって、一々動かすのに命令しなきゃいけないもう一人の自分って意味あります?」
「ああー」
そう考えるとそうだ。
ねっさんの分身は特攻。当たって砕けるを地で行く子たち。だからこそ、スキルさえ正しければ問題ない。
スキルだけあれば本体みたいに考える必要はない。
「じゃあ、俺はねっさんたちに自爆を強制する糞やろうじゃない?」
「そこですか気になってたとこ」
「ちゅ~」
「いや、前の説明はこんなとこまで聞いてないから・・・」
マジで焦った・・・
「まぁそれはそれで私の問題は解決してませんねそういえば」
「ああー!!!」
なんなのだ『分身』初期からあるスキルの癖にいろいろ深すぎるぞ。
「まぁ面倒なので、元ねっさん現ヨミってことで」
「・・・いいのかそれで」
「いいんじゃないですか?今にしろ昔にしろ分身であるって意識に変わりはないので」
「最初から?」
「最初の私・・・ねっさんはスキルの調整なんてできませんでしたから。まぁその私たちの集合体が今の私なんですけど」
・・・・・・・・
「それ結局昔の俺がクソヤロウってことに変わりなしじゃん・・・」
「あ。そういえばそうですね」
「ちゅ、ちゅ~」
「る~」
「・・・」(スリスリ
うわぁ・・・うわぁ・・・
「いっそ死にてぇ・・・」
「うわ。一気にめんどくさくなりましたね」
「ちゅ~」
いいんだねっさん。俺のせいだから。
お前がスキルを調整できないせいじゃないから・・・
「ん~。自爆してたのは私たちなので、私が許すってことでよくないですか?」
「それはお前が自分の事を本物だと思ってないからだろ・・・」
「いや、一応分身なりに命の価値はわかってるんですけど」
分身なりって・・・
「うーん。じゃあ後で私のお願いごと聞いてくれますか?」
「・・・お願い?」
「はい。分身の私たちがずっと願ってたことです」
「ずっと・・・」
俺の命とかかなぁ・・・
「あ、面倒な勘違いされてもあれなんで今言いますけど・・・」
「・・・え、そんなんでいいの?」
「はい。だって。私たちはされたことないんですもん」
「・・・わかった」
「ふふふ。お願いしますね。それじゃ、行きましょうか」
この分身のヨミさんは、あまり表情を変えない。
でもしっぽはるんるんだ。むっちゃ振ってる。なんなら耳もぴーんって立っている。
テンション上がった時のヨミさんそっくりだ。
「・・・る?」
「・・・ちゅ~」
「???」
「にゃ」
「ちゅちゅ~」




