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220話

昼一話夜一話です。

「はぁ?しばらく新しい階層に行くなぁ?」


「そうだ」



『昇華』がちゃんと使えなくなってから数日たった。

ダンジョンに潜ってはいたが、やはり一人では倒すのに時間がかかる。

戦い方を思い出してきたので倒す時間は短縮されてきたが、効率はよくない。

幸い、みんなで戦った時場合は影響があんまりなかったので問題はないだろう。

そう判断して新しい階層に挑むために親父に報告した次の日。研究所に呼ばれて新階層への侵入禁止を言い渡された。



「全体で見れば、問題ないんだけど?」


「だが、お前個人は弱くなっている。そうだな?」


「そら・・・まぁな」


「だからダメなんだ。ダンジョンは危険だと、何回も言ってるのはお前だろう」


「・・・俺が一番危ないってか」


「そうだ。元々戦闘力のないニホリはともかく、強かった人間が弱くなったら。どうなるかはわかるだろう」



親父は、俺の実力が差が生まれてしまったが故に起きる弊害について危惧しているようだ。

つまり、俺の認識の誤差による負傷。昔は出来たが今はできないといったことで起きるミスのことだろう。



「だけど、それはもう試したし・・・」


「完全に把握できているのか?今の自分を」


「っ、それは・・・」


「そうだ。出来るわけがない。まだ一週間も経ってないんだ」



俺は自分自身の今の性能を試した。ここ数日、新しい階層に潜らないで戦ってたのはそのためだ。

だけど、今の状態を完全に把握できたかと言われるとそうじゃない。

まだまだ、確かめなくちゃいけないことは多い。

だが、戦えるようにはなっているのだ。



「新しい階層で、何が起きるかわからない状態でそれに完全に対応できると言えるか?」


「・・・」


「言えるわけない。元々、弱くなる前のお前でも言えないだろうからな」


「・・・俺一人じゃ無理だ」


「皆に迷惑をかけるのか?」


「・・・」


「フミさんがいるから大丈夫ではあるんだろうが。最初からそれをあてにするのは違うだろう」


「・・・」


「ともかく、暫くは下に行くな。わかったな」


「・・・わかったよ」



親父の言っていることは・・・正しい。

下に行けるという判断も、あくまでも俺の主観によるもの。客観的に見て、今の俺が未知の階層に行くのは不安だろう。


反論できない俺は、部屋を出た。

コロちゃん達は今日は来てないから、一人なんだが・・・これなら連れてくればよかったな。



「恭輔君?」


「・・・藤岡さん」


「浮かない顔ですね」



なんとなく研究所内を歩いていたら、藤岡さんを見つけた。

この場合、見つかったってのが正しかな。


それにしても、浮かない顔か。そんなか顔してたか。



「まぁ、いろいろありまして」


「そう・・・ですか・・・」


「藤岡さんは今日は何を?」


「ああ、訓練のメニューの提出です~」


「訓練?」


「はい。ほら。来月来る新しい人たち用で」


「ああ、確かに必要ですよね」



俺とかは全く参考にならないからな~。関わろうとも思わなかったせいで何も知らんなそっち方面。



「ちなみに俺は見てもいい感じです?」


「大丈夫ですよ。これです」


「ん~・・・」



基礎トレーニングがメインで、直接戦闘するのは後回しか。

まぁそうじゃなきゃ危ないか・・・ん?

特に面白そうなのはないかな。多分。自衛隊とかの訓練を元に作ってるんだろうし。

変わった点と言えば



「最初にカードだけ取りに行くんですね」


「そうじゃないとちゃんと強くなれませんしね」


「ああ」



冒険者カード。

俺は確か、すらっぴに俺が捕まえたコウモリをあげて手に入れたんだっけ。

懐かしいな。あの時は、コウモリ一匹捕まえるのも危なかった。



「でも、一回入ったらそのままいさせろってやつでてくるんじゃないですか?」


「まぁ、いた場合はそのままにしますけど」


「はい?」


「いや、普通の人はあのコウモリですら勝てるかどうか怪しいですからね?」


「一回体で危ないってことを覚えさせようと」


「そういうことです。まぁ、大丈夫だとは思いますけど」


「なんでです?」


「だって、そういうことを言う人は審査で落としますから」


「・・・ん?藤岡さん審査する人?」


「そうですよ?というか、私出世しまして・・・」



藤岡さんはポケットから名刺入れを取り出した。

一枚貰って見てみる。



「・・・ダンジョン冒険者チームリーダー?」


「ええ、今回めでたくそうなりまして」


「ああ、なるほど。来る人たちは藤岡さんの部下って形になるんですか」


「そういうことです・・・」



そらまた偉い出世だな。今まで、冒険者達の一応のトップは俺。実力が高いからってそうなっていた。

だけど、今回ので藤岡さんが名実ともにトップになるということだ。

まぁ元々俺がトップだからって何かあったわけではないんだけど。


でも、出世なのになんで藤岡さん嫌そうなの?



「いや、書類仕事が多くなるので・・・」


「ああ、そういう」


「全員分の訓練の経過とか、レベルの把握とか。考えるだけで嫌になりますよ。真面目にやりますけど」


「嫌なのに?」


「はい。嫌ですよ。でも私がそれを怠って部下が死んだら、私は私を許しませんよ」


「自分を・・・」


「恭輔君にとっての、コロちゃん達みたいなものです」


「・・・」



俺にとってのみんな・・・俺が無茶して、みんなに何かあったら。

俺の無茶をカバーするために、みんなが怪我したら?・・・俺は・・・。



「まぁでも、書類書くのは嫌なんですけど」


「・・・ハハ。お疲れ様でーす」


「他人事だと思って・・・ふふ」


「急にどうしたんです?」



藤岡さんが急に笑い始めた。特に面白いことは言ってないはずなんだけど。



「だって、恭輔君、ようやく明るい顔になったので」


「・・・あら?」


「そっちの顔の方がいいですよ?」


「・・・口説かれてます?俺」



俺、一応恋人いるんですけど。


そういうと、藤岡さんの顔が真っ赤になった。



「な、違いますよ!?」


「あーはいはい。自衛隊ってみんなうぶなんです?」


「いや全然わかってないですよね!?ていうかわかる気ないですよね!?」


「いやーどうっすかね~」



まぁ、今の俺はすごくいい顔してると思うわ。





















「ただいまー」


「おかえりーなんやって?」


「行くなって止められたよ」


「あちゃ~やっぱりそうなってもうたか」



家に帰ると、フミが迎えてくれる。

いい匂いがするから、ニホリが夕飯の準備をしてくれているのだろう。



「まぁゆっくり行こうや。期限決められとるわけでもないしな」


「・・・そうだなぁ・・・そうするか」


「・・・おろ?」


「・・・なんだよ」


「いや、恭輔のことやから、こっそり潜るくらい言うかと思たんやけど」


「・・・人生の先輩に思い出させてもらったことがあってな」



ダンジョンは危険。そんなことはわかっているが、その中でも、自分のせいでみんなが危険な目に合うのだけはダメだ。

それがあったら、俺は俺を許せなくなる。

親父にも言われたが、実際問題、かなり動けなくなっているみたいだし。今のこれだと守られてばっかりになりかねない。



「まぁ、なんでもいいだろ」


「むー。気になるわ~」


「ハッハッハ。また浮気でも疑うか?」


「うっ!それはうちに効く」


「冗談冗談。今日は一緒に寝ような~」


「ブッホ!?・・・き、急になんなん!?」


「そういう気分。いつも通りだろう」



ゆっくり行こう。何にせかされるわけでもなく、何かに邪魔されることなく。

俺たちのペースで、みんなで行こう。



「ニホリー、今日のご飯何ー」


「う!」


「はいすいません」



手洗いうがいはしてからだな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 恭介自身が守りたいものを再確認したなら大丈夫そうだな・・・ 復活は近そうだ
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