218話
昼一話夜一話です。
喧嘩・・・喧嘩?は無事に終わり、数日が過ぎた。
俺の『昇華』の影響がいつ誰に出るか、それはわからない。
しかし、あの人型が教えてくれたことが真実なら、『昇華』の進化が今最も優先されることだ。
だが、問題がある。
スキルを進化させる場合、そのスキルを重点的に使うことで進化するものと考えられる。
そもそもスキルが上位の物に進化したのはうちでも数例だが、おそらくこれが正しいと思う。
なにが問題か。『昇華』って聞いたところによると常時発動型。『魔力節約』とかと同じだ。
・・・重点的に使うとかできなくない?
「だれか常時発動タイプで進化したって人いないの?」
「いや、おるわけないやんか」
「だよなー」
そもそも俺が人間では一番強いんだよ。
「え、じゃあ手詰まり?」
「とりあえず使うしかないんやないの?」
「・・・まぁだよなぁ」
なんかもうすぐとか言ってたし。戦うか・・・
これ、今までと何が違うの?
「この状態で潜ってもいいのか・・・?」
「まぁ・・・うちは何も言えへんし・・・」
「う?」
「ワン・・・」
「クゥ!」
「ぴぴ!」
35層。敵自体は大したことない・・・ていうか、状況を間違えなければ負けることはない。
だが、ボス戦は何が出るか不明。
本当は戦う気だったんだけど。正直、今の状態で戦いたくない。
体のコンディションはいいんだが、それ以外は最悪だ。
何が最悪か。
それは、俺が『昇華』の能力上昇を使えなくなったことだ。
「るる!」
「にゃ!」
「うん。ありがとうみんな」
それはすでに皆に伝えてある。
そのおかげか、みんな恭輔の分も頑張るって言ってくれてる。
コロちゃんとフミを除いて、やる気は十分だ。
何故、コロちゃんとフミは違うのか。
「ごめんなぁ恭輔」
「クゥン」
俺が『昇華』を使えなくなった理由。おそらく、みんなに影響が出ることを知ったことで俺の中で『昇華』を使うことへの拒否感が生まれた。
その切っ掛けとなったコロちゃんとフミ。それが原因で、元気がない。
「お前らのせいじゃないって」
「けど・・・」
「俺の感情の問題なんだ。そのうち元に戻るさ」
皆に影響が出るのが仕方ないとは言え、そのスキルの恩恵を俺が受けるのが嫌なのだ。
しかし、使わないことには進化もいつになるかわからない。
ままならない物だ。
「とりあえず、何体か倒すか。俺も、久々に『昇華』なしで戦うから様子を知りたい」
「ぴ!」
「ちゅ!」
「頼んだぞ」
普通の『土魔法』での使用は少し久しぶりになる。
進化先のガイアとかと勝手が違うから、感覚を忘れてないといいけど。
『硬質化』も、どのスキルも弱体化・・・もとに戻ったが正しいんだけど、
それらを確かめるために、一対一でロックリザードと戦うことにした。
やつらは岩に擬態してるから、見つけ出すのは面倒なんだけど、大砲サイの攻撃を誘発すれば、あちらから出てくる。
ねっさんに周囲を探索してもらっているから、すぐにでもサイは見つかる・・・
「ちゅ!」
「オッケー!!」
早速来た、サイもこちらに気がついているらしい。
大砲の砲撃音が聞こえる。全部で2発。奴らは連続で発射できないから、サイの数も2体。
「ぴ!ぴ!」
すらっぴが砲撃を撃ち落として守ってくれている。
俺が集中できるように、可能な限り遠くで撃ち落としてくれているのだ。
護衛をすらっぴに、周囲の探索と迎撃をねっさんが担当してくれているおかげで、今目の前にいるやつと一対一でやりあえる。
他のみんなはいざという時の備えだ。正確には、フミとコロちゃんに何もないように近くにいてもらっているが正解なんだが。
「おっと!」
「グァァ!!」
考え事はここまでのようだ。
今まで戦ってた時は、『昇華』込みでの経験だ。
今の俺のスペックとは比べ物にならないくらいの差がある。
その差のせいか、ロックリザードが速いのだ。
「アブね!?」
「ァァァァァ!!!」
相手の速度が速いというよりは、俺の動体視力が落ちている。
反応も鈍いし、魔力を貯める時間も長い。
だが、攻撃を回避できないわけじゃない。速いがちゃんと見えている。
俺は近接戦もできるが、主な火力は魔法に頼っている。スキルに近接で使える物はないしな。
武器はフミから貰った斧だが、筋力も落ちているので振る速度も遅い。
総じて、じり貧だ。
「お、よっと。そら!」
「ガァァ!?」
大振りの攻撃は出来ない。その隙にやられるかもしれないし。
だが敵の攻撃は回避に専念すれば当たらないのだ。いろいろ考えることは出来る。
「まず、動きながらの魔力のチャージ」
「ゴガ!!」
「とりあえずは!・・・出来る」
静止状態より時間はかかるが可能。『昇華』状態より遅いが十分使える。
「次、即時の魔法使用」
「グガ!?」
「・・・っ!・・・出来る!」
負担が大きいが、チャージなしで使うことは出来る。
魔力の消費も大きいが、大丈夫なはずだ。
元々今の状態で思いついたやり方だ。出来ないってことはないと思っていたが、大丈夫なようだ。
負担については、『昇華』の強化ありきで使ってた期間のせいで痛みを忘れてしまってたようだ。
すぐに慣れる。
最後に『硬質化』に関して
「ガァァァ!!!」
「おおおお!!」
相手が勢いよく振ったしっぽを正面から受け止める。
「恭輔!?」
「ワン!!」
「う!」
「でも!」
「うーうー!」
「っ!・・・ニホリ・・・」
「ワン・・・」
踏みとどまることはできない。
腕で受けたが、はじかれ、体ごと吹き飛ばされ岩に叩きつけられる。
「カッハ!」
痛み・・・ダンジョンでちゃんとダメージを食らったのは始めてか・・・。
だけど、『硬質化』で受けられている。ダメージは、叩きつけられた際の背中だ。
腕は大丈夫だ。
「グゴア!」
「・・・調子に乗んな!!」
勝った気でいるのか、近づいてきたロックリザードの足元に穴を開ける。
「ゴ!?」
「ああ・・・疲れんなマジで・・・」
慣れてないことを差し引いてもひどいなこれ。元に戻っただけなのにこれだ。
まさに弱体化だ。
「まぁ、こうなりゃ関係ないか」
「グルルル」
「ハハ。唸ることしか出来てないな」
見事に穴にはまったロックリザードは、穴から出ようともがくが全く動けていない。
実質唸っているだけで脅威ではなくなった。
とどめを刺すなら今だろう。
今回は魔力を丁寧に貯める。最大威力での魔法も見ないといけないからな。
イメージは、サイの大砲をモチーフにした。
今まで巨大な岩にして撃ちだしたり、槍の形にしたりといろいろやっていたが、今回のは少し違う。
形状を球体に。この魔法の最大の利点は最大速度。
「つぶれろ!!」
「ゴ!?」
サイズは球体のサイズはボーリングの球ほど。これで潰すのは難しい。
そもそも
サイズが足りなくて巨体を潰すのには足りない。だが、相手に向かって飛んだ球体は、相手の顔に当たりそのまま貫通した。
「・・・ふー」
「恭輔!!」
「ワン!!」
「おわっと」
ロックリザードが倒されたのを確認したら、フミとコロちゃんが駆け寄ってきた。
フミは少し泣いていた。
「大丈夫やな?どこか痛いとこない?」
「大丈夫だって。背中だって、途中から硬質化間に合ったし」
「むっちゃ思い切り叩きつけられとったやん!」
「あーもー泣くなって」
「ワンワン!」(グリグリ
「おおう。コロちゃんまで・・・」
「うー」
「おうニホリ。ありがとうな、止めてくれて」
「う!」
「ああ、うん。反省してます」
確かに無茶な戦い方ではあった。『硬質化』試すなら実践じゃなくてもいいのに強行したからな。
「とりあえず、戦えるのはわかった。このまま行ける・・・」
「う!」
「・・・ウィッス」
今日はこのまま帰る!みんなと遊べ!と怒られました。




