211話
夜分です
サイに大砲があるんならうちの子にもあってもよくない?
「いや誰につけるんや」
「・・・しーちゃん?」
「めぇ!?」
「いや?」
「めぇめぇ」
「ああ、確かに重そうだわな」
ワンチャン馬力的にはユニちゃんなら行けるか?
「めぇ!」
「おっふ」
怒られた。
35層突入。しかし、そこまで探りはしない。
今回の目的は・・・ズバリ、大砲だ。
「まぁドロップするかはフミに聞いたんだけどな」
「うちも何本か持っとったで」
「どこにあるの?」
「いらんから一層のスライムたちにぽいした」
「あれも食べるのかあいつら・・・」
まぁうちのすらっぴも食えるだろうし、いけるか。
さて、すでに35層には入っているんだが、砲撃が来ない。
来られても困るんだけど。
ボス戦では入ってすぐで撃たれたから警戒してたんだけど、普通の階層の場合は来ないらしい。
ボス戦の場合は、敵がこちらに気がついている状態で始まるからある意味当然なんだけど。
階層の状況的に岩だらけで視界が遮られるからどっちにしろ見つけにくいんだけど。
「ねっさん何体いた?」
「・・・ちゅ?」
「6体・・・どれくらい探せた?」
「ちゅちゅ!」
大体階層の半分くらい・・・そうみると少ないな。さほど大きな敵じゃないから、もうちょいいると思ったんだけど。
多すぎて常に砲撃くらうよりマシか。
どっちにしろ、半分ってのは、おおよそ今まで攻略してきた階層の平均で半分ってことだろうしな。もしかしたらもう少し広いかもしれない。
そういや、もう一種類は?
「いないの?」
「ちゅ!」
「あ、いるんだ。どこ?」
「ちゅちゅ!」
「は?となり?」
隣というと、大きな岩しかないんだけど・・・
そう思い、隣を振り返る。
・・・うん。やっぱり岩だよね。
「岩じゃないのこれ?」
「ちゅ!」
「あ、うちが教えたんよ」
「へぇ~・・・いや、岩だよな」
ほら、触り心地だって完全に肌・・・
「・・・いやなんで」
「やから、モンスターやから」
「ちゅ!」
「うっそだろおい」
俺がペチペチ叩いていたこの岩(擬き)
どうも何かのモンスターが擬態しているらしい。そしてまた俺たちは襲われないと。
「またこのパターン?」
「いんや?ここのはそんなに優しくないで?」
「え」
「あ、気づかれてたわ」
「お?」
「ワン!」
「ぴぴ!」
コロちゃんが『魔刃』を飛ばし、すらっぴが『水魔法』で飛んできた弾を撃ち落とした。
どうやら、サイに気がつかれたらしい。
迎撃が完了し、相手の位置を探ろうとしたその時。
「グガァァァァ!!!」
「おん!?」
「きき!」
「クゥ!」
岩に擬態していた何かが俺たちに攻撃を開始した。
サイの攻撃と同期するようになっていたようだ。なるほど、遠距離からサイが攻撃、近距離ではこいつらが不意打ちってわけだ。やさしくないわな。
そして問題は、バトちゃんとふーちゃんの魔法がはじかれたってことだ。
「ガウン!!!」
「きき!?」
「クゥ!?」
「おっと危ない」
魔法が効いていないどころか、気にしてもない様子のモンスターに驚き、回避が遅れたバトちゃんとふーちゃんを抱えて離脱する。
攻撃の様子から、早さはそこまででもないようだ。
「大丈夫か?」
「き~」
「クゥ」
「魔法はダメか?だったら」
「ワン!」
「そういうことだ!!」
爬虫類のような印象を受けるそのモンスター。岩に擬態していたことを考えてロックリザードとでもしておくか。
こいつの相手は、俺とコロちゃんで相手することに。
他の魔法組はサイの砲撃を撃ち落とす役目に。
ねっさんは増えて周囲のサイを全滅する。おそらく、戦闘が始まると周囲からどんどん敵が寄ってくるはずだ。
サイの数が増えた場合、迎撃が追いつかない可能性もある。先に始末しておきたい
「ねっさんよろしく!」
「「「「「「「「「「ちゅちゅちゅちゅちゅ!!!!!」」」」」」」」」」」」
「がんばり~」
「うーうー!」
戦闘開始。
さて、意気込んで任されたものの、こいつはさほど強敵ではないのかもしれない。
そう思った理由その一。
「動きがとろいんだよ!」
「ガウ!!」
「グカ!?」
攻撃された時も思ったが、全体的に動きが遅い。最初の攻撃はしっぽにで叩いてきたが、バトちゃん達を余裕を持って助けられたのはこの遅さのせいだ。
今も、『昇華』で基礎スペックが馬鹿上がりしてる俺とコロちゃんの動きにまったくついてこれてない。
二つ目の理由。
「岩よりちょっと硬い程度じゃ意味ないだろ!!」
「ゴ!?・・・」
岩でも、硬ければ十分脅威。いや、たぶんこいつは十分硬いんだと思う。
しかし、フミから貰った斧だと抵抗を感じずにバッサリ。コロちゃん達から貰った大剣でも、ちょっと苦労するが問題なく切れる。
しいて言うなら、俺のゴーレム籠手が壊れたことだろうか。
まぁそれくらいには硬いってことらしい。今となっては、『硬質化』込みの素手の方が硬いんだけど。
「ワン?」
「ん?大丈夫大丈夫。最近殴ることあんまりなかったし」
本当に最近武器持って戦うことの方が多かったからな。殴らんでも十分戦える。
まぁゴーレム籠手もそろそろ変えたかったしな。あれ貰ったのいつだっけ?
ゴーレム自体が結構下・・・確か11とか12のはず。そのあたりのモンスターから造られた装備が今の今まで通用してたんだから十分だろう。
ゴーレムのドロップ品である砂の魔力を通すと固まるっていう特性が優秀だったってことだな。
「ところでさっきから暇なのは何故?」
「ワン」(ドヤ
「左様か、イイコダナー」
戦闘音で何体か来てたのに、今もういないの。コロちゃんが全部切っちゃったの、ばっさり。
砲撃の音も少ししかしない。ねっさんがいい感じに殲滅してるみたいだ。
・・・あれ、これもう仕事なくね?




