209話
夜分です。
順調に進めている34層。
ちょくちょく敵を見かけるが、相も変わらず襲ってこないのでスルー。
こちらを見ているのだが、特に何もしてこない。
時々いる少女の姿をしたドライアドが葉っぱの陰からチラッと顔を覗かせてくるのは、非常にポイントが高いのではないだろうか。そういうのが好きな人は。
まぁ俺は・・・微妙かも。萌えポイント高いなくらいは思うわ。あんまり見てるとフミにつねられるのでほどほどにしないとな。
「それにしても深い森だわな」
「ワン?」
「いや、さっきから階段がありそうな物もないし」
森の階層だと、ボス部屋がある場所は特別大きな木の中とかの場合が多い。
しかし、少し木に登ってみてもまったくそういった木は見えないのだ。
じゃあ違うパターンなのだろうが、その場合は地面の下ってことになる。この場合、俺の『土魔法』の応用で探しても見つからないのだ。
正確には、扉が地面の中にあっても普通の地面としか認識できない。
故に、こうなると歩きまわる必要がある。
「しかし、何もないなここ・・・マジで」
「クゥ・・・」
ふーちゃんはすでに飽きてきている。
モンスターが襲ってきてくれればなんとか暇にはならないが、何も来ないし。
周りも木ばっかりだから景色を楽しめるわけでもない。
むっちゃ広い階層だったら走り回ったりで追いかけっこもできるんだけど、森だからそういったことにも向いてない。
ん~なんもない。
しかもゴールがどこにあるかもわからんと来た。
「せめてボス部屋の場所がわかればな・・・」
「ん~。うちのいたとこと場所ちゃうみたいやしなぁ・・・」
「あ、そうなのか」
「ていうか、そもそもの広さが違う感じや」
「狭いのかここ」
「うちのいたとこの半分くらいやないの?」
最悪だなそれ、今でさえすでに一時間くらい歩いているのに見つかってないのだ。
倍とか見つけられる気がしない。
「ニホリー」
「うーうー」
「だめかー」
最終手段ニホリ知識もダメだった。下にあるくらいしかわからないそうだ。
ねっさんも『分身』で大量に数を増やして探してくれているが、今のところ報告なし。
この階層だけ他と比べてもむっちゃ広いとかあるのか?
「・・・一回休憩すっか」
「せやなぁ。みんなモチベ駄々下がりやしな」
「めぇ・・・」
「るる~」
しーちゃんも流石に飽きている。そもそも戦いたい組に入ってるから今の状態は嫌だろうな。
ああ、ピッちゃん。お前が飽きるのは別にここだけじゃないでしょ。
「るる!」
「ん?だったらその辺の精霊とおしゃべりもできるんじゃないか?」
「・・・る?」
「う!」
「るる~」
飽きたのではなくて、ずっと見られてるから疲れちゃったそうだ。
そうか、さっきから見られているのは俺じゃなくてピッちゃんか。
精霊関連のスキルを持っているのはピッちゃんだけのはずだし。その関連かな?
「ついでにふーりんちゃん呼んでやれよ」
「る!」(ポン
「・・・にゃ?」
ふーりんちゃんが出てきたその瞬間。付近の精霊たちが反応を示した。
今まで見てくるだけだったのが、ふーりんちゃんとピッちゃんに近付いてきたのだ。
「るる!?」
「にゃ?」
「カカ」
「え、何々」
「・・・る?」
「カ」
「にゃ~ん」
「カカカ」
やべぇまったくわかんねぇ・・・。
完全にカカっとしか聞こえないし。
「あ、俺が理解できない子って久しぶりじゃん!」
「なんでうれしそうなんや?」
「え、新しく知れる子が増えたなって」
「うわぁ・・・」
「うー・・・」
「なんで引かれてるの俺」
いいじゃないか、知らないことを知ろうとすることは。いいことじゃないか知的好奇心。
「それでそれで?なんて言ってるの?」
「るる~」
「え、何それ」
「る」
「にゃ」
「なんて言ってるん?」
「仲間ーだって」
「・・・え、それだけ?」
「るる」
「にゃん」
そ、それは流石にわかんないな・・・
・・・まぁいったん休憩するかにするか。
「・・・」(ジー
「・・・う?」
「カカ」
多分今のはかたじけないとか言ったと思うわ。
「なんで古風なんや」
「なんかそういう子かなって」
「る!」
「なんでこんな早く理解できるようになるんや・・・」
長年の経験がいろいろあってこうなった。
「いや、危なくないのはわかったけど、まさか羊ちゃん達みたいにお話もできるとは」
「カカ」
「そうそう。もっと上の階層にいるんだけど。このしーちゃんみたいなの」
「カカ」
「おお~いいね。どうにか連れてけないかな・・・」
「いや早いわ」
「うー」
休憩開始10分で会話までできるようになったわ。がんばったわ。
ちなみに、さっき精霊の子にあげたのはニホリが持ってきたお茶だ。コップを覗き込んでゆっくり傾けてあげて飲ませてあげる。
するとうれそうに飛び回り喜びを全身で表現してくれる。
「にゃ」
「うーうー」
ふーりんちゃんもそれを見て、水飲み皿に入れてと要求。
それを聞いて、はいはいと返事をして水を入れてあげる。その瞬間に皿の周りに集う精霊たち。
「にゃ」
「カカ」
「にゃ」
「カカ」
そしていくらか話した後に一緒の皿で水を飲み始めた。仲良し。
「もしかして、こいつらも飲めるのか?」
「ビクッ」
俺の後ろにいたドライアド(少女)を振り向く。
それだけでかなりビビったようだ。カサカサとはっぱで顔を隠す。
「・・・何、俺そんな強面?」
「カカ」
「え?『土魔法』?」
確かに持ってるけど・・・あ、もしかして『昇華』で変化してるせい?
「『ガイアマジック』のせい?」
「カカ」
「強すぎるのか・・・」
ドライアドたちは、そもそもボスでない限りは『土魔法』の持ち主には攻撃してこないらしい。
なんでも、自分たちが生きているのは大地と繋がっているからで、『土魔法』の持ち主は自分たちをあっという間に殺せてしまう。
それが嫌だから攻撃しないのだ。
「なるほど、フミだけの時に攻撃されたのは『土魔法』がないからか」
「今は恭輔って言う『土魔法』の上位互換を持っている存在がおるから何もさせれんのやな」
「まぁ確かに利口な判断だわな」
ボス戦の時もあっという間に倒せたし。地上に体が出てのなら、根っこから切り離すことも簡単だからな。
防衛本能として、非常に正しい行動であると言える。モンスター的にどうなんだって話はあるけど。
「う?」
「どうした?」
「うーうー。うー」
「・・・あ。言われてみれば」
なんでこいつらは俺が『土魔法』を持っているのがわかるんだ?
「カカ」
「へぇ~魔法スキル持ちは魔力にその特性が乗るのか」
「ぴ?」
「クゥ?」
「カカ」
「ぴぴ~」
みんな別々の魔力の波長・・・特色が出てるらしい。
それを見ることができるから、ドライアドは相手がなんの魔法を持っているかを判断できるのだそうだ。
俺もすらっぴもそこまで詳しくは見えない。俺たちが見えたり、感知できるのはあくまで魔力の有無と大きさのみ。
その点でいうなら、彼らは俺たちを大きく超える魔力認識能力があるってことになる。
ん~ちょっとお話聞いてみたいな
「・・・いや、なんで出会って数分の精霊からそんな重大情報バンバンもらえんねん」
「・・・うー」
俺だからかなぁ・・・




