195話
夜分です。
「よかったね。友達増えて」
「はい!今度うちにもご招待します!」
「ん?雪ちゃんの家?」
「はい!みんなも会いたいって」
「・・・皆さん」
「メイドのみんなです!」
家にメイドがいる。お金持ちの証である。
あ、もしかしてその時は俺も行くことになるのか?ニホリの保護者枠で。
・・・やっば
雪ちゃんに友達が増えた次の日のお昼。
俺とフミは、二人そろって部屋で悩んでいた。
「んー」
「むむ」
「・・・う?」
「ワン」
「クゥ」
ニホリが、何してるの?大丈夫?と声をかけてくる。
それに対して、コロちゃんとふーちゃんが邪魔しちゃだめよーと止めてくれる。
心配してくれるのはありがたいんだけど、今はちょっと悩まなければいけないのだ。
時は、本日の朝まで遡る
「めぇ」
「おん?どうしたしーちゃん」
「めぇ」
「しーちゃんが?」
朝起きて、普通に朝食を澄ましたらしーちゃんに呼ばれた。これだけなら何もおかしくはないんだけど、呼んでるのはユニちゃんだというのだ。
誰かを介して俺を呼ぶのは珍しい・・・てか、今までなかったか?
「じゃあ行くか」
「めぇ」
大体みんな俺にそのまままとわりついて甘えてくるか、遊びのお誘いだったりするので自分で呼びに来ることが多い。
手が離せない時のニホリなら誰かに頼んで呼ぶことはあるんだけど、まぁそれくらいなものなわけで。
窓から出れるように、近くにサンダルは常に置いてある。靴じゃないのは、出るだけならこれが速いから。
靴履かなきゃいけない場合は、靴の棚があるのでそこから取り出す。
「どったのーユニちゃん」
「・・・」
「・・・ユニちゃん?」
「!!」
「うお」
珍しくユニちゃんがべったり甘えてくる。
ユニちゃん。普段べったりくっつくのはしーちゃんなのだ。俺じゃなくて。
遊んでるときも、俺を乗せたがるか、見て見て~!と言った感じなのだ。今みたいに顔を俺に擦り付けて甘えてくるのは珍しい。
しーちゃんにはしてる。俺じゃなくて
「めぇ」
「ごめんなさい真面目にやります」
怒られました。
「どうしたの?ユニちゃん」
「!!」
「・・・え」
ユニちゃんが甘えてきた理由。それは俺にお願いをかなえてもらいやすくするため。
こんなことしなくても大体のお願いは叶える気なのだが、即答できなかった。
お願いの内容が、ダンジョンに一緒に潜りたいだったから。
そして時は戻り、お昼恭輔の部屋。
「うーん」
「むむ~ん」
「・・・う?」
「・・・ワフ」
「・・・クゥ」
何で悩んでいるって、別に連れていくことに関しては悩んでいないのだ。
フミもいるから、今行ける階層なら問題なく守れる。
だが、ユニちゃんの希望はそうじゃない。直接言われてはないが、コロちゃん達のように一緒に戦いたいってことだと思う。
そうすると、今の32層。ボスは倒しているので33層では敵が強すぎる。
じゃあレベル上げをすればと思うかもしれない。たしかにそうなのだ。それで解決はする。
しかしそれができない。
何故なら俺は一応とはいえ仕事でダンジョンに潜る身。ユニちゃんのレベル上げに構っていると、探索がおろそかになる。
素材を集めたり、魔石を集めたりと割と時間の余裕はない。新しい階層に向かう時は早めに上がるが、それはいろいろ鑑みた上での行動だ。
ここにユニちゃんの特訓をいれると、手が回らなくなる。
「どうするか」
「どうしよか」
「お前が上で見てくれるのはないんだよな?」
「ないな。下に向かう恭輔から離れるのは嫌や」
「なら仕方ない」
まぁこれに関しては仕方ない。フミの気持ちを優先せねば。
「そうすると、他の子をつけるか?」
「ん~でも、そうするとユニちゃんといる子とそうじゃない子で差が出てまうし」
「戦力差が生まれるのはダメだなぁ・・・」
連携も取れなくなる気がするし。
だからといってユニちゃんのお願いを断るのも・・・
俺が嫌なのは、お願いを断ることではない。
これがユニちゃんのわがままならダメと言っている。ユニちゃんは、自分が何もしていないことを嫌がったのだ。
ニホリもロラちゃんも非戦闘要員だが、それぞれ何かしている。それは、間違いなく俺たちの役にたっている。
しかし、ユニちゃんだけは何もしていない。
俺は特に気にしてないし、みんな気にしないんだけど、ユニちゃん本人がすごく気にしたのだ。
その状態でこのお願いを断ると、ユニちゃんの悩みを解決できないで終わることになってしまう。
それは避けなければいけない。
「でも解決策が浮かばない」
「実際のところ、ユニちゃんってどれくらい強いん?」
「えー、『分身』込みで・・・8層かな」
何もしてないで8層は十分すぎるくらいに強い。
まぁユニちゃんはユニコーン。それも外の動物園で生まれた子だ。
元が特殊な分、それくらいの差は誤差でしょ。
「世の中普通の人間でコウモリ鷲掴みにする大人がいるんですよ」
「・・・世の中初見でコウモリ殴り落して、スライムに餌付けする青年もおるやん」
「ナンノコトダロー」
俺のことはいいんですよ
「はぁ、フミがもう一人いればな」
「そしたら恭輔の女が増えるんやな」
「訂正、俺の事をそこまで好きじゃないフミがいればな」
「せやなぁ。まぁ、うち程と言わんでも、ある程度強くて、判断を見誤らないやつおれば」
「信頼できるかも大事だよなぁ・・・」
「まぁそんなやつおらんのやけど」
「いないから困ってるんだけど」
「「・・・ハァ」」
「う!」
「・・・お、どうしたニホリ」
「うう!」
「ああ、ありがと」
「おおきに~」
ニホリがお茶とお菓子を持ってきてくれた。休めってことだろう。
「ズズ・・・上手い事いかんねぇ」
「まぁ仕方ない部分もあるわ。なんでもできるわけないんやもん」
「だよなぁ・・・あ、これおいしい」
「ホンマ?・・・ホンマや」
ニホリが持ってきてくれたのは羊羹だ。包装を見れてないので、そこからの判断はできないが、明らかに高い味がする。
前に千爺がくれたやつと同じ味。
「こんなんなったのか?うち」
「う」
「ああ、ヨミさん・・・ヨミさん?」
「んあ?ヨミは使えへんやろ、雪ちゃんの事もあるし」
「いや、ヨミさんを頼ろう」
「ええ?」
「う?」
「ありがとうニホリ。すっかり忘れてたわ」
ヨミさんは、確かに雪ちゃんの護衛っていう立場がある。だから、雪ちゃんのそばを離れることはできない。
しかし、やり方はある。
ヨミさんは、俺の仲間のスキルを条件付きで使えるのだ。
増えてもらおう。
 




