181話
夜分です
「カワウソってさ、可愛いと思うんだ俺」
「・・・飼うのはあかんで」
「何も言ってないじゃん」
「・・・う?」
「いや持ってこないから・・・」
本当に話しただけなんです・・・
フミに告白してから数日後。
フミが嬉しさのあまり暫く暴走したのを除けば基本平和に過ごせていた。
逆に言うとそれがあったから平和ではなかったかもしれない。
フミのやつ、一緒に居たいからって狸モードで俺に体をこすりつけるとかしてきやがったからな。
卑怯な手だ、絶対に離せなくなった。もっとやれ。
まぁそれを見てみんなも同じことしてくれたからなんでもいいんだけどな!!
まぁ今いる所とこの話はまったく関係ないんだけど。
だって31層だし。
「・・・まさか本当にボスがいないとは」
「倒した扱い・・・ちゅうか、あいつが出ないように設定したんやろ」
「ワン」
「そうだな、若干不満かもしれん」
30層のボス部屋。人型ダンジョンと戦ったあの部屋だ。
本来は各階層でボスモンスターが存在しているはずが、なぜか今日向かっても出てこなかった。
正確には、ここ数日毎日来てはいた。故に、あの人型が何かをした結果出てこなくなったのだろうという結論に至った。
これのデメリットは何か。というより、デメリットしかないんだよな。
まず、各十層ごとに出てくる強いボスが減ったこと。これにより俺たちが強い敵を戦う機会が減った。
もう一つは魔石の確保の事だ。ボス一回分の魔石がなくなったと言ってもいい。
良い所って・・・やっぱないかも。
「仕方ない。諦めて31層さっさと抜けるか」
「大丈夫なん?『昇華』もまだ扱えてへんやろ?練習してへんかったし」
「ここ数日のお前よりは大丈夫だよ」
「いわんといて!!」
本人曰く、発情期だったらしいが。
・・・そのスイッチ入れたのは俺なんだろな。
あと、フミは一つ勘違いしてる。俺はすでに『昇華』を使える。
「ええ!?」
「ワフ?」
「ぴ~?」
「うー!」
「ぴぴ~」
「え、うち?」
「う」
「クゥ♪」
「めぇ?」
「ワン」
「じゃあ一体目は俺が一人でやるからな」
ニホリが説明したのは、俺の『昇華』の発動条件じゃない。
いや、間違っていないんだけどさ。フミがいないと使えないって表現はどうなんだ。間違ってないけど!!
「じゃあ探索よr「「ちゅ!」」・・・おおう」
「ちゅー!」
ねっさんがすでに分身たちを広げてくれてたようだ。はっやい。
そしてちゃんと見つけてきたようだ。さてさて、何がいるのやらって・・・
「■■■■■■■!!!」
「なっつい」
白濁した理性のない目。大柄で青い体。そして頭から生えた二本の角。
若干違うが、狂化オーガかこれ。
「いやぁ。懐かしい顔もいるんだな」
「・・・余裕やね」
「だってなぁ・・・」
確かに10層のボスだから強いのはわかる。階層が下になった分強くもなってるだろう。
だけど未知の敵じゃない。知ってる敵だから、そのおおよそのスペックや対策も大方わかってしまう。
その結果、今の俺と戦うには物足りないモンスターであると言える。
「自信満々やな」
「うー?」
「だって、今攻撃きてないでしょ?」
「・・・う!」
「そうそう、足元固めてみた」
狂化オーガが出てきた時点で、すでに魔法は発動させていた。
足をがっちがちに固めることで動けなくさせた。もちろん、足を固めている物は銀色に光っている。
「あ、もう使っとるんか」
「そうそう。やっぱりこうなるよなぁ」
「ぴ?」
「いいぞ」
「ぴー!」
「クゥー!!」
「ぴーぴ。ぴーぴ」
「クーク。クーク」
ディーフェンスディーフェンス的な動きだ。むっちゃ煽ってる。
ほら、理性のないはずのオーガ君の頭に青筋が見えるよ。全く動けてないけど。
「■■■■!!ゴガ!?」
「あ、転んだ」
「痛そ」
「うー・・・」
足元だけ固定されているので上半身は普通に動かせる。
だけど結局足元は動かないので移動はできない。なんならバランスをとることも難しい。
その状態で暴れるとどうなるか。バランス崩して顔から墜ちる。
「可哀そうだから終わらせるか」
「どうするん?」
「こうするのん」
「ギャ!?」
今日持ってきた武器はコロちゃんとニホリから貰った大剣だ。今は軽くして持ってきていた。
それを、軽くしたまま上に持ち上げ、一気に重くして振り下ろす。
一切の抵抗感を感じずに狂化オーガを真っ二つに両断する。しかし、力加減をミスって地面に思いっきり刺さる。
「あ」
「やりすぎや」
「うー・・・」
「ワン・・・」
「めんごめんご。よっと」
まぁ軽くしたら簡単に抜けるからいいんだけど。
ん~それにしてもいい切れ味だ。これならしばらくこれでいいかも。
「ええーうちの斧は~?」
「あれ強いんだもん。楽になっちゃうよ」
「それも大概やと思うんやけど」
「まぁ・・・仕方ない」
だって他の武器ってなぁ・・・壊しちゃうし。
「別のが手に入ったら変えるかも」
「う!?」
「ワン!」
「だって貰い物壊すわけいかないし」
この大剣だって大事に使いたいからな。できればこれ以外にも欲しい所だ。
武器は消耗品だからな。何本あっても困らない。
「「「「ちゅー!!」」」」
「お。他のいた?」
「ちゅ!!!」
「え、何だって?」
何よくないのって
「・・・あ!そうやここあれがおるんや!!」
「え、何々」
「はよ抜けるで!」
「いや、だからなn・・・」
「恭輔が見たらあかんのがおる・・・って恭輔?」
「・・・あれのこと?」
「え?」
ねっさん(分身)が帰ってきた方向には人間がいた。
ちょうどフミの死角になっていたから気がつかなかったのだろう。
だたし、その人間はやはり人間ではないようだ。
オーガのようなものではないが角が二本。後ろにはコウモリらしき羽根が見える。
手足はそういう服なのか黒い。
ここまではいい。こっからダメだ。
非常にセンシティブな格好になっている。そんな存在が複数。髪型も胸の大きさも全部違う。
「・・・あ、サキュバスかこれ」
「出よったな!!」
「・・・うー?」
「るー?」
「ワン」
「めぇ」
ニホリとピッちゃんの教育に悪いとコロちゃんが首根っこ銜えてしーちゃんに向かって投げる。
投げられたしーちゃんはすでに増毛済みでニホリはすっぽりその中へ。
ニホリもなんでー?と聞くが、二匹とも二人にはまだ早いという。正しい。
「へぇーこういうのもいるんだ」
「絶対に恭輔に会わせたくなかったのに・・・?」
「まぁ世の男性は喜ぶんじゃね?」
「・・・なんで?」
「お?」
「いや、サキュバス・・・」
「・・・あ!俺催淫されてない!!」
「いや気づいてへんかったんかーい!!!」
「「「」」」(オロオロ
サキュバス側も混乱している。
フミ曰く、こいつらは視界に入れただけで相手を催淫状態にしてしまうらしい。
フミが効かないのは単純に強いから。
他の子が効かないのは人型じゃないから。ニホリとピッちゃんは視界をしーちゃんの毛で覆われて見えてないからセーフ。
じゃあ俺は?
「・・・え、なんで」
「いやなんでや」
「「「」」」(オロオロ
「なんかむっちゃ戸惑ってない?」
「そらそういうのが効かん敵なんて初めてやろうし・・・」
「ふーん。・・・狂化オーガにも効くの?」
「理性関係ないからなぁ。大体従えてる感じやな」
「サキュバスが?」
「そや」
「そっかー」
女王様的な感じか・・・
「まぁいいや」
「へ?」
「「「!?!?」」」
俺に効かないんじゃ確かめようもないので終わらせようと思った。
地面から槍を数本生えさせてサキュバス達を串刺しにする。
元の戦闘力は高くないんだろう。避けるそぶりすら見せることなく刺されて倒された。
全身を槍で刺された人型ってわりとグロいんだな。
「・・・うわぁ」
「引かれてる」
「いや、普通そうするかいな」
「だってなぁ・・・所詮敵だし」
「人間みたいでも?」
「てか、敵なら人間でもやるよ」
だって敵だもん。手加減する必要はないし。最速で最高率で殺せるのならなんでもいい。
「ん~やっぱり『昇華』中は危ういなぁ」
「そうか?」
「殺し方がえげつないんよ」
「はぁ」
全く自覚はないんだが、まぁフミが言うならそうなんだろ。
あ、今度だれかここに連れてきて確かめなきゃダメじゃねこいつらの催眠・・・催淫?
・・・めんど




