172話
朝寝ぼけすぎて予約投稿忘れてました。
今一話夜一話です
それは、ある時唐突に自分という存在を認識した。
ここがどこなのか、どういった場所なのか、なぜ自分が生まれたか。
視界に広がる光景は暗く狭い。土で囲まれた空間。
それ以外、何もなかった。
暫くすると、何かを見つけた。透明な球体・・・自分と同じような姿の何か。
それは、自分のようにちゃんと意識があるわけではないようだ。
他にも、上を飛んでいる黒い何かもいる。どうやら、彼らも自分とは違うようだ。
似た姿の存在はいるが、同じじゃない。そんなことをぼんやりと認識した瞬間、何かに気がついた。
誰かが近くにいる。それも、自分と同じ何かが。
ゆっくりとだが、そっちに向かって動く。あの黒いののように動けないのがもどかしい。
自分と同じ何かは、思ったより大きかった。それどころか、全然似ていない。なんかいっぱい生えてるし、色もおかしい。
それでも、間違いなく、彼は・・・
「・・・俺は夢でも見ているんだろうか」
・・・何言ってるかわからない。
「・・・ぴ?」
「おお、起きたな。なんか寝言言ってたけど。夢でも見たか?」
「・・・ぴ!」
「初めて会った時?ああ、お前が無警戒に近づいてきた時ね」
「ぴー!!」
「はいはい」
「ぴっぴ!」(プンスカ
「はっはっは。ほら、そろそろおやつの時間だから、みんな呼びに行くぞー」
「ぴぴ?・・・ぴ!」
珍しいな、すらっぴが夢を見るなんて。
まぁ今までもなんか寝言は言ってたからなんかしら見てたんだろうけど、回数は多くなかったし、なによりあんなはっきりした寝言じゃなかったからな。
なんだろう?自分と同じって。一層のスライムの事か?
「まぁいいか」
そう口に出して意識を切り替える。
ばあちゃんが来て二日目。そろそろ帰るころだろう。毎回おやつの時間を少し過ぎてから帰るからな。
出かけてから帰ってきてから、一日中ばあちゃんは母さんとニホリと話していた。
何故か一緒に料理も作っていたけど。普通お客なんだからやらない物なんじゃないっすかねとか思う。
まぁ楽しそうだったからいいか。
ばあちゃんは普段一人で暮らしている。叔父さん達は一緒に住まないかって聞いてたみたいなんだけど、どうもばあちゃんの方から断ったらしい。
なんでも、夫婦水入らずを邪魔しちゃだめよ~との事らしい。非常にばあちゃんらしい。
友達ともよくカラオケとか行ってるみたいだけど、それでもやっぱり家では一人だ。寂しいのは変わりないだろう。
それを、うちに来て少しでも和らげられるのならよかったというものだ。
・・・それでも、なんか今回はいつにも増して楽しそうだったけど。
「そこんとこどう思うよ」
「ちゅ?」
「クゥ?」
「まぁだよね」
まぁわかんないよね。
「恭輔君?」
「ん?どうしたのばあちゃん」
「ちょっと」
「お?」
なにやら手招きされている。何かあったか?
しかしなにやらニコニコしている。悪いことではないみたいだが。
「いつ結婚式はするの?」
「おおう・・・」
説明しづらいことを・・・
「ん~。あんまりやる気ないんだけれど」
「ダメよ~。女の子はだれしも憧れるものなんだから~」
「憧れね~」
むしろそういう女の子的なのは妹のヨミさんの方だと思うんだけれど。
「そういうもの?」
「そうよ~」
「そっかー・・・」
うーん。何て言ったものか。
別にフミがモンスターだからとかはあんまり関係ない。ぱっと見、人間の姿と変わりない状態には出来るしな。
ていうか、ばあちゃんがいる関係上現在はしっぽも仕舞ってるから今の見た目は完全に人間だ。
すらっぴとかいる時点で隠す意味あるんかって話ではあるんだけど。
「ふふふ。それにしても安心したわぁ」
「・・・嫁さん捕まえて?」
「いいやぁ。恭輔君が変わらず優しい子で」
「うん?」
「みんなを見てればわかるわ。あと、すっごくらしいなって」
「・・・さっぱりわかんないんだけど」
「ふふふ。まぁわからないわよね」
ばあちゃんは好きなんだけど、こういうところは苦手だ。何かわかっているのにそれをぼやかして俺に伝えてくるとこ。
「大変だと思うけど。ニホリちゃんもフミちゃんも、大事にしなきゃダメよ?」
「・・・まぁ、わかってるよ」
・・・ばあちゃん。何か気づいた?
「うん。じゃあそろそろお邪魔するわね~」
「あれ?帰るの?少し早いけど」
「今日はちょっと凝った物作ろうと思ってね?」
「ああ、そういうこと」
「また来るわね~」
外から車のエンジン音がする。親父にすでに準備しているようだ。
ばあちゃんは玄関に向かって歩いてく。何か満足そうだ。
「・・・ねぇばあちゃん」
「はい?」
呼びかければ、こちらを振り返ってくれる。いつもとかわらない笑顔だ。
「・・・ニホリもフミも、まぁちょい訳ありっちゃ訳ありなんだよ」
「うん」
「それでもさ、俺といるのが楽しいとか、幸せとか言ってくれるんだよ」
「うんうん」
「だからさ、時々思うんだよ。俺でいいのかって」
「・・・恭輔君」
「背負うのって重いんだよ。コロちゃん達とは・・・やっぱり違うし」
「恭輔君。私がさっき言ったこと。覚えてる?」
「・・・いやどれ」
「変わらないで良かったって言ったわよね」
「・・・言われたね」
「それでいいのよ」
「・・・はい?」
「恭輔君は、今のままで大丈夫よ」
「・・・本当に?」
「もちろんよ。だって、本当に幸せそうに見えたから」
ばあちゃんにはそう見えたらしい。
・・・だったら、そうなのかな。
「それでも心配なら、もっとちゃんと聞いてみなさい」
「はい?」
「案外、答えてくれるものよ~」
そう言って、最後に手を振って玄関から出て行った。
・・・・
「肝心な部分だけ言われてない気がする・・・」
聞いてみることか・・・
「いやーおつかれさまみんな~」
「う~」
「ニホリちゃんは可愛がってもらったわねー」
「う~♪」
えへへ~って感じに照れている。実際、いろいろ可愛がってもらってたしな。
親父は帰り際に買い物をしてくるそうで、まだ帰ってきていない。
「それでもまったくすらっぴに驚かないのはさすがだなって」
「まったくやなぁ」
姉ちゃんも、ばあちゃんが帰ってからほどなくして帰っていった。
まぁ昨日も泊まってたしな。そこまで休みとってないんだろう。
「じゃあ俺、夕飯まで部屋いるわ。ニホリはどうする?」
「うー!」
「オッケー」
ニホリは夕飯の準備を手伝うようだ。今日は別に手伝いの日じゃないけど、ばあちゃんと一緒に作って楽しかったのだろう。
ニホリに見送られながら二階の俺の部屋に向かう。
他のみんなはまだボヤっとしてる。多分、今日中はあんなかんじだろう。
俺は慣れたものですでに大丈夫だ。ていうか、結構いろいろ考えてたせいで頭が動く動く。コロちゃんはばあちゃんパワーじゃなくて純粋にぐでぐでしている。
それにしても、ばあちゃんは何を思って、何に気がついていたんだか・・・
「恭輔ー」(ヒョコ
「おん?どうした。珍しいな狸モード」
普段俺が頼まないとなってくれないんだけど。珍しく今は狸モードだ。
「ちょいお話したいんやけど・・・」
「いいぞ。俺の部屋でいい?」
「うん。あ、でも二人っきりがええなぁ」
「???まぁいいけど」
最近こうやって一対一で話す機会が増えたからわかるけど、なんだ?
照れてるってわけじゃなくて、なんというか、いじらしい?




