17話
予約投稿忘れる間抜けとは私のことです
ふーちゃんがうちに来てから三日。俺の夏休みは終わり、高校生活が再開されると思っていた・・・。しかぁし!!
「なんで新学期早々休まなきゃいけないんですかね?」
「仕事だからじゃないか」
「なんでこうなった」
「ハハハ。本当にすまん」
何故か高校ではなく、山のダンジョンに親父達と来ていた。制服も着ていないぞ。着てるのはいつも通りの登山服みたいなやつにバッグ。鉈と剣のいつもセット。
今日はコロちゃんと、ふーちゃん以外いない。テイムモンスターは『テイム』スキルについて報告しなきゃいけないし、報告したら、もっと面倒なことになるのが目に見える。今はまだ報告しない。自衛隊か、他の誰かが『テイム』を取ったら言おう。
戦力ダウンと言っても、コロちゃんがいれば問題ない。そもそも今回は降りても五階層まで。そこから下は行かない。親父についてきている研究者の人たちも体力が持たないだろう。
「そういや親父たちって冒険者カード持ってるの?」
「持ってるぞ?一応今いる連中は一回はダンジョンに来てるし、コウモリも倒してる」
「そうなんだ」
意外と言えば意外だけど、ぽいっちゃぽいかな。
自分も持ってた方がいろいろ調べられるし。どうせならレベルもちゃんとあげといて欲しいけど。そうすればわざわざ俺が行かなくていいし。
てか、今いる人たち全員顔知ってるな。
「そりゃそうだろう。お前たちの誕生日とかに結構来てるぞ」
「あ、なんか見たことあるなと思った」
あっちの眼鏡の人は前にゲームくれた人だ。隣のきょろきょろ周りを見渡してる人は、ラノベの普及してきた人だ。あ、俺にロボットアニメの円盤を送ってくるおっさんだ。うん?
「全員オタクじゃん」
「お前がいるし、こういうダンジョンはオタクの憧れなんだと」
「道理でさっきからいろいろ持ってるし、なんか浮ついてるわけだ」
大丈夫か?
「大丈夫だと思うぞ?一応研究者として、そこらへんはちゃんとするさ」
「そこじゃないんだけど・・・。まぁいいや。コロちゃん。ちゃんと守ってあげてね」
「ワン!!」
「ふーちゃんは俺の近くね」
「頼むぞ~。今日でいいデータが取れたら、後は好きにしていいから」
「まかせんしゃい。ふーちゃんは戦うことになってるけど大丈夫?」
「キュ!」
やる気満々でござった。なんでうちの子はこんなにも戦闘意欲が高いのだ。
ま、行くか。
「ほら、お前ら!恭輔からあんまり離れるなよ」
「「「了解です、班長~」」」
「班長なんて呼ばれてるのか親父」
「一応研究班のリーダーだからな」
ダンジョン研究班に回されたって言ってたっけ。専門じゃないだろうに。
あ、いやでも。モンスターって動物みたいなもんだからいいのか?。ゴーレムは無機物だけど。
「ところで恭輔?」
「なに?」
「この部屋はいったい・・・」
「気しなくていいよ。俺も気づいた時にはあったし。なんの部屋かわからんし」
もちろん嘘だ。何の部屋か知っている。
俺たちが10階層のフロアボスを倒した後に変化は起きた。その時にも世界初は貰ったが今は関係ない。
10階層と、11階層をつなぐ階段の途中に部屋があった。
その中には魔法陣のような文様が地面に書かれていた。
その上に乗ると、声が聞こえた。
『行き先を選んでください』
その後、何もない空間から紙が現れ、空中に浮かんだまま
一層
移動しない
とだけ書かれていた。
一層の文字を触ると、魔法陣が光始めた。すぐに収まったが、周りに変化はなかった。
外に出ると見たことない場所だった。上る階段と、下に向かう階段の二つがある部屋。下に行けばコウモリがでてきた。上に上がれば外にでれた。この時、初めて自分が一層に戻っていたことに気が付いた。
ようするに、あの部屋はワープ部屋だったのだ。便利だけど、誰でも入れるのは問題だ。もし知られれば、俺に下まで連れてってくれ、と頼まれることもあり得る。正直、今は勘弁してほしい。10層より下で、複数の戦えない奴らを守る余裕はない。特にコロちゃんだけじゃ手も足りない。
こいつも知らせるのは後になるだろう。
「お、いたな。じゃあ頼むぞ」
「はいはい。捕まえなくていいんだよな?」
「大丈夫だ。今日は現地調査とふーちゃんの記録を撮るだけだからな。倒してもいいぞ」
「了解。一匹だけだし、ふーちゃん一人で大丈夫か?」
「コン!」
「そうか行けるか」
・・・?まて。今コンって言わなかった?
「クォ!!」
「ギャッ」
火魔法で一撃。そりゃそうだよなぁ。
「魔法覚えさせたのか」
「三つ残ってたから全部使った」
「出来れば魔法とかスキルなしのが知りたいんだが」
それで怪我なんてしようものなら、俺が取り乱すから最後にね。まずはレベル上げたいんだけど。
「いや、最初の状態でも戦えるかどうかが知りたくてな?」
「そもそも最初は戦わせる必要ないぞ?」
「そうなのか?」
おぼえているかどうかわからないが、俺とすらっぴの出会いはどうであっただろうか。
おれが捕まえたコウモリを、すらっぴが食べることで倒した。その結果、俺のレベルが上がった。
つまり、全部戦わせる必要はないのだ。とどめのみ、途中まででも経験値は入る。
「そうだったのか」
「そそ、だから最初は人間がやって、あとから動物のほうがいいよ」
あんまり能力はあがらないけど、人間と比べたら上がり幅が大きいのか。コロちゃん達は明らかに俺より強くなるのが速い。
「それでも、最初から任せた方がいい場合はあるだろうけど」
「そうだな、大型犬なら人間より力は強い。コウモリも飛んでなければどうにでもなるしな」
なんなら、人間が網でも投げて動きを止めればいいだけだし。なんでもいいのよ。
「ふんふん。わかった。参考にしよう」
「じゃあふーちゃんはこのまま魔法で」
「しょうがないな」
どっちにしろあと何回かで使えなくなるし、いいでしょ。本当なら下の階層でレベリングしたい気分だけど。
今日は空気になれるってことで勘弁してやる。
「クゥ~」
「はいふーちゃん限界~。お疲れ様」
「キュ~」
慣れない魔法疲労で疲れてるみたいだ。俺も最初はしんどかったなぁ。今はその状態でも、オーガくらいならガッツリ倒せますけど。
それにしても十二回か。随分多かったな。俺(4話で主人公は魔法を12回使ってます)とすらっぴの最初は数発だったと思うんだが。
魔法向きなんだろう。
「ふーちゃんは魔法向きみたいだから近接させない?」
「完全にさせないわけじゃないけど、多くはやらせない」
「向き不向きがあるのか・・・」
「それが動物の種類ごとなのか、それとも個体で差があるのか」
「調べることが増えましたね」
一応、ここは危ないダンジョン内ってことになってるから、もっと注意してくれない?いくらコロちゃんが周囲を警戒して、一匹でもいたら即殺してるとは言え、気を抜きすぎでしょ。
「いやー。コロちゃんのおかげで、敵の影も見ないからついね!」
「一回わざと見逃してやりましょうか?」
「ワン?」
「ハッハッハ!ナイスジョーク!!」
ジョークじゃねぇよ。コウモリけしかけるぞ。
まぁいいや。このあとどうするんだ?
「うーんそうだな。ふーちゃんに向いてない事させて負担をかけるのもなぁ」
「俺的にはそれでいいんだけど、研究者的にそれでいいのかよ」
「もともと母さん主導で始まった話だし、自衛隊のせいで研究が進んでないから、その間の時間つぶしの面もあるし・・・」
「え、なに?俺、あんたらの暇つぶしのせいで学校休むことになったの?」
「大丈夫だ。公欠扱いだから問題ないぞ」
「問題大有りだわ」
公欠っても、休んでることに変わりないから課題とか出るんだぞ?それは大変面倒なんだが?
「国からの仕事だから課題も出ないと思うぞ。なんせ、今をときめくダンジョン問題についてだ。
給料とかいろいろ待遇面で優遇されてるからな」
「それって俺も?」
「今回からそうだな。お前の口座に今月末振り込まれる」
「俺、学校辞めていい?」
「学校行きたいんじゃないのかよ」
「友達はネットあればしゃべれるし、大体近所の奴らだし。課題が面倒なんだよ」
「ああ、まぁ高校生なんてそんなもんか」
勉強は面倒だが友達と話したり遊ぶのは楽しい。そんなもんだ。ソースは姉ちゃん。
「クゥ」
「ああ、ごめんねぇ。ふーちゃん。早く帰ろうね~」
「お前は本当に動物に甘いな」
「突然増えたら驚くけどな」
「驚くのその一瞬だけじゃないか」
「可愛いから」
「キュー」「ワン」
「その優しさを姉に分けてやったらどうだ・・・」
だってねえちゃんすぐに図に乗るから・・・




