167話
夜分一話投稿
「ん~こんなんでいいかな」
「何本持って帰る気よ・・」
「そらバトちゃんが満足するのを見つけるまで」
一本持って帰っても大丈夫かわからないしね。
選ばれなかったやつでも角材にするなり別の材料にするなりで無駄にならない。
だから何本か持って帰りたい。
「・・・だからってそんな持つ?」
「え、普通じゃない?」
「普通は軽々3本も持てないわね」
そういう姉ちゃんも1本軽く持っとるけどな。普通の人間は一本で結構きついでしょ。
「ああ・・・そういえばそうね」
「こうして俺たちの常識は失われていくのだ」
「案外馬鹿にならないわよねぇ」
「周りに同じ感じの人しかいないしな」
俺の場合、さらに上の存在と動物とモンスターしかいないんだけど。
姉ちゃんの周りは藤岡さんたちだからそこが比較対象か。どっちがましなんだろうか。
ちょくちょく会話しつつ。
もうちょい持って帰ろうかなぁと木を見定めていたところに、急速に接近する気配あり。
「ん、来るな」
「うん?」
「おったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「きゃ!?」
「おっすおっすフミ」
まぁフミだよねっていう。
「そして姉ちゃんはそんな驚き方するのん?」
「びっくりした・・・」
「あ、やってもうた・・・」
「あ、大丈夫大丈夫」
フミの勢いに驚いた時にしりもちついてしまったらしい。座り込んでいた。
てか、きゃって。
「立てる?」
「うん。大丈夫!」
「ごめんなさい・・・」(ショボン
「気にすんなって。気配を察知できない方が悪いって」
「そうそう。あんなに速いんだから、音とかもっと気を付けるべきだったわ」
「うう~。ありがと~」
ダンジョン内じゃ何があるかわからないんだからな。
まぁここの階の付近。20行くまでならぶっちゃけ余裕なんだけど。
「ていうか何しに来たの?探してたみたいだけど」
「あ!!そうや!。おばあ様来たから戻って!!」
「あれ?一時間遅れる?」
「とっくに経っとるわ!!」
「え?・・・あ」
「うっそー・・・あ」
「・・・ワフ」
「・・・る~」
「にゃ」
「全員忘れとったんかい!!」
完全に頭から抜けてた。
「いやー木の物色に集中しすぎたわ」
「いやー恭輔の行動にびっくりしてたわ」
「ワン」
「にゃー」
「るる?」
「何しとるんや・・・」
コロちゃんも木を探してて、ふーりんちゃんはそもそも知らなくて、ピッちゃんは知ってたけど時間わかんなくて、まぁいいかってなったらしい。
全員ダメダメだな。
「せやからはよ戻るんや」
「うぇーい・・・持たれる?」
「その方がええな」
「え?持たれる?」
「だから」
「こうや」(ヒョイ
「・・・え」
フミが小脇に俺を抱える。それを見て引いてる姉。
その隙にピッちゃんはふーりんちゃんを戻してフミの懐に潜り込む。コロちゃんは準備運動完了。
「これで走ってもらう」
「コロちゃんと競争や」
「ワン!」
「・・・ええ」
「そんなわけで」
「失礼します」(ヒョイ
「え」
姉ちゃんに反応させずに空いた方に姉ちゃんを抱えるフミ。
これで両脇に人間抱えてる状態。ちなみに、この競争でコロちゃんが勝ったことはない。
なんならユニちゃんを背負った状態でも勝ててない。むっちゃ速いよね。びっくり。
「これのほうが速いのよ」
「・・・だからってこの体勢は」
「行っきまーす」
「ワォォォォォォン!!」
その瞬間。景色がゆがむ。風が強くて顔がゆがむレベル。ジェットコースターも目じゃないレベルの加速と速度だ。
それに並走しているコロちゃん。これはフミが手加減している状態だからこそ成立している状態だ。正確には、段階ごとに力加減を変えている。
現時点で3段階らしい。全部は知らない。だけど、何回か見た戦闘ではもっと速い瞬間があったことから、おそらくまだ半分行ってないかなってくらいだろう。
あっというまに階層を駆けあがっていく。ゴールは10層のテレポート部屋。
スタートが16層だったので6層分上がることになる。
これを大体3分未満で上がるのがこの競争だ。
コロちゃんも、普段の戦闘では一瞬しか速くならないからわからなかったけど、それくらいは走り続けることができるってことだな。
それにしたって・・・
「ばやびば」
「・・・」
あ、姉ちゃん気絶してる。
「うちの勝ち~」
「・・・クゥーン」
「あーいよしよし」
「るる?」
「着いたで」
「る~」(ピュー
「・・・ハッ!?」
「あ、起きた」
流石元自衛隊。終わったらすぐ起きたよ。
「もう着いたぞ~」
「・・・え?どこに?」
「だから、入り口。倉庫じゃん」
「・・・ああ!?本当だ!?」
「早かったでしょ」
「なんかこう・・・気がついたら終わってた的な」
気絶してたしな。
ていうか、ピッちゃん到着してすぐにどっか行っちゃったけどどこ行った。
「なんかふーりんちゃんが呼んでたらしいで」
「あれ?戻してたじゃんか」
「ん?あ、内緒やったな」
「・・・聞かなかったことにしよう」
「ごめんなー」
なんか隠し事・・・というか、俺をびっくりさせたいんだろう。それに気がつかないふりをするのも良い飼い主の勤めだろう。
「ん~みんなは庭か」
「ばあちゃんに挨拶しとったけど、まだしとるんかな」
「みたいだな。母さんも親父もいるし」
「うーん。微妙にしかわかんないし判断できない」
「要特訓」
「がんばればできますって」
「いつになるのかしら・・・」
俺が20行けるようになった時ってどうだったかな。確か家の中くらいは完全に判断できた気がする。
今みたいに広い範囲とかはもうちょいあとかな。フミに会うくらいの時?
「まぁ近いうちにできるっしょ」
「なぁんかあんたと比べると弱い気がするのよねぇ」
「俺の場合はコロちゃんとかの影響も受けてるしな」
「そうなの?」
「だって俺、コロちゃんとかバトちゃんとかふーちゃんとかに合わせて戦ってたんだよ?」
「ああ~」
そら合わせられるように俺の方が成長するよねって。
最初っからコロちゃんの戦闘速度は全く見えなかったけどな。今も見えないけどな!!
「てか行くか」
「そうね、話過ぎてるわ」
「・・・二人って仲ええよなぁ」
「そらまぁ弟だし」
「だって姉だもん」
「・・・ええなぁ」
「でも姉弟だと結婚できないけど?」
「今が最高や!!」
「現金な狸だ」
「いいじゃん。恭輔の事好きなんだから」
「正直めっちゃいい気分」
「最近のあんた随分正直になったわね」
その今までの俺がひねくれてたみたいな・・・間違ってないか・・・。




