160話
そういえばなんですが、私のもう一つの作品なんですが、割とちょくちょく評価してくださる方がいらっしゃいまして。平均評価って5のままとかあるんだとかびっくりしてます。
お昼一話夜一話です
29層ボス部屋。
久しぶりの洞窟型の部屋だ。10層以来なかったタイプだ。
そのせいか、最近のボス部屋にしては少し狭く見える。実際のところかなり狭くなっているだろう。
「これはこれでやりようがあるしな」
「ワン!」
周囲が壁に囲まれているこの状況。昔は出来なかった魔法が使えるってもんよ。下の階層だと使うまでもないから使わないやつだ。
軽く準備体操をしていると、奥の扉が空きボスが出てくる。
牛の頭の人型。大きさは俺二人分くらいか?まぁ見た感じミノタウロスだ。こりゃまた有名どころが来たな。
だけど、一体だけか?これだとかなり余裕なんじゃ・・・
「ブモォォォォ!!!」
「まぁいいや、戦闘開始!」
「ワン!」
「ちゅ!」
今回は魔法組はお休みだ。26層でかなり戦えるし、ボス戦はコロちゃんとねっさんに譲ってあげなきゃな。
まぁ俺は戦うんですけど!
「まずは力比べしようか」
「ォォォォ!!!」
雄たけびを上げたまま、手に持った斧を振り回しながらこちらに向かってくる。
その速度は体格に見合った速度といったところだ。
振り下ろされる斧を避けることはせず、そのまま体全体で受け止める。
「おお!?」
「も!?」
・・・結構痛い。
斧自体の切れ味はわりと悪いのか問題ない。ただ、こいつ自体の力がすごい。
受け止められるし、構えてれば問題ない。だが、割と俺自体が地面に沈められた足首まで埋められたぞ。
斧を受け止められて、驚いたのかミノタウロスの動きが止まっている。
これじゃあ困るな。
「ならよっと!!」
「ぶ」
斧を基点にミノタウロスを持ち上げる。斧を離せばいいだろうに、されるがままに振り回されている。体重も見た目通り、むしろ斧が軽いな。
そのまま地面に埋まった足を引き抜いてジャイアントスイングに移行。それでも斧は手放さない。
いや放せよ。
「だぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「モォォォォォォ!!!!????」
これ以上回ると俺の目が回るので誰もいない方向に放り投げる。
壁にたたきつけただけではこのガタイのモンスターに大したダメージを与えられない。
だから、俺が叩きつけるのはある方向に向かってだ
「ねっさん!!」
「「「「「「「ちゅちゅ?」」」」」」」
ねっさんの分身が壁に沿って山になっている方向にだ。
回転で勢いのつけられた状態でねっさんの分身爆発に巻き込まれる。
これでかなりダメージが入ったはずだが・・・
「・・・あれ」
「・・・ちゅ?」
「・・・ワフ?」
爆発の影響でかなり土埃が舞って敵が見えない。
まだ倒れてないと思うから、すぐに向かってくると思うんだけど、あれ?
影も見えないんだけど。
「・・・気配もないね」
「・・・ワフ」
「・・・ちゅ~」
残った分身でも姿が確認できないとのこと。
・・・これは・・・まさか。
ちらっと扉の方面を見てみると。
「なんと、そこには宝箱が」
「ワフ?」
「倒しちった」
なんか・・・倒しちゃったよ。
「いやちゃうんすよ・・・そんな弱いと思わなかったんすよ・・・」
「所詮キメラとグリフォンの次なんやからわかるやろ」
「ワン!」(プンプン
出番のなかったコロちゃんがお怒りである。
まぁ確かに、キメラもグリフォンも実際の強さ的に強かったかと言われるとそんなことない。
耐久力的なこと考えると、全員魔法一発で倒せる範囲ではあったな。
でもさ、だからって投げて爆発させてで倒せるって思わないじゃん?
「うちとやっててかなり強くなってるんやから当然やろ」
「あ」
「ちゅ」
「うー・・・?」
ニホリの忘れてたの?って視線が痛い。ねっさんも完全に忘れてたようで、この様子だと本気で爆発させたな。
「・・・コロちゃんすまぬ」
「ちゅ~」
「・・・ワン」
「え」
「ちゅ」
コロちゃんが出した条件とは・・・
「ワフ~」
「「「「・・・・・・・ちゅ?」」」」
「いや、まぁこれでいい・・・らしい」
俺に寄りかかりつつ、ねっさんの分身がお布団代わりになるでした~。
「なぜ」
「ワン」
「うぃ」
「ちゅ~?」
「ワフ」
「ちゅ~♪」
まぁごらんのとおり、コロちゃんは満足そうだ。
温かいのがいいのか、ねっさんが気持ちいいのか。俺に寄りかかるのはどうなのかとかいろいろ聞きたいことがあるが、まぁ満足そうなので後回し。
「じゃあその体勢でええから話してもええか?」
「ええよ~」
「ほならまぁ」
一通り会話が終わったのを見たところで、フミが話しかけてきた。
ずっと待っていたようだが。
「なんかあったか?」
「むぅ~うちとお出かけはいつ行ってくれるん?」
「あれ?いつでもいいって言わなかったっけ」
「聞いとらんもん」
もんってお前。
「じゃあいつでもええんか?」
「まぁね。最近一気に進んでるし、特訓もしてるからそろそろ休まないと」
地味に休まずに続けていた訓練とダンジョン探索。
体力的には大丈夫だろうが、完全に疲れが抜けるわけじゃない。みんなだって、ずっと戦うのは嫌だろうしな。
実際、そろそろピッちゃんが飽きるころだろう。ニホリも、新しい料理がしたいとか言ってたし。
「実際、コロちゃんのこれも疲れてたんだろ。寝てるし」
「zzzzz」
「あらほんまや」
コロちゃんは戦闘においての一番槍。最も速いコロちゃんは近接戦闘から敵の陽動までいろんなことを一匹でこなす。
探索などはねっさんやバトちゃんもいるけど、それでも戦闘の大部分ではコロちゃんの影響が大きい。
一番疲れがたまりやすいのはコロちゃんで、それを表に出さないのもコロちゃんだ。フミが気がつかなくっても仕方ない。
「そうやったんかー」
「ちゅ~」
「お前は分身に任せるのもできるけど、大丈夫か?」
「ちゅ!」
『分身』は魔力の消費のあるスキルなので、直接体力が奪われるわけじゃないが、それでも多く魔力を使えば疲れる。
『分身』と『爆発』の二つを戦闘で連続で使い続けるねっさんもそれなりに疲れてると思ったんだけど。
「ん~。まぁギリだな」
「ちゅ?」
「大丈夫な範囲ではあるけど、あんまり無茶してほしくないレベル」
だからちゃんと休んでね。
「ちゅ~・・・zzzz」
「・・・いや、ここで寝られても」
「諦め時も肝心やで」
「・・・まぁ言い出したのは俺だしな。それで?いつ出かける?」
「明日」
「いいぞ」
「ええんかい!?」
「え、だって休みは必要だって言ったじゃんか」
「・・・え、そんなギリギリやったん?」
「お前と戦ったせいでいまいち感覚鈍ってたみたいでな。みんな」
自分の体調と、レベルアップ時の能力上昇が変な感じにかみ合って疲れてないと思ってしまったのだ。
まだ問題になってないが、おそらくこれ以上戦ってたら何かあっただろうな。
「じゃあ、明日ってことで」
「え、ええ・・・どうしよ・・・」
「どこ行きたいとか考えてなかったのか?」
「だってもうちょい後やと思ってたし・・・」
いや、いくら何でも前からしてた約束をそんな後回しにはしない・・・はず。多分。
「じゃあ考えるついでにこっち来て」
「ほ?」
ちょこちょこっと動いてきて、俺の後ろに座ってもらう。
「じゃあ失礼して」
「・・・おろ?」
フミの膝に頭を置いて横たわる。もちろん、ねっさんやコロちゃんを起こさないように。
「膝借りる。そして寝る。おやすみ」
「・・・おやすみ。恭輔」
目を閉じると、いろいろ感じることができる。コロちゃんの温かさ。ねっさんの柔らかさ。
そして、フミが俺の頭をなでている感覚が。
・・・やわっこいなぁ




