15話
俺が、新宿ダンジョンに潜ってからしばらくたち、夏休みも終わり、再び高校生活が始まる・・・と思ったのだが。
「なぁんで俺は学校に行かずにこんなところに・・・」
「いやぁ、なんというか・・・すまん」
あれから、自衛隊の人たちはかなり頑張ったようで、藤岡さん以外の人も、何人かスキルを手に入れたようだ。宝箱に入っている確率的に、そんなに数が手に入るとは思わないが、ラッキーだったか。それとも、俺みたいに世界初~のような奴でも見つけたか。
まぁ、そんなことで自衛隊の戦力強化はちゃくちゃくと進んでいたらしい。オーガや、オークも倒せるようになり、二、三個下の階層にも行けるようになったそうな。
俺達はあまり変わってない。それぞれが強くはなっている。しかし、スキルスクロールが二週間で6つしか手に入らなかったのだ。今のところ困ってないので使ってないのだが。
その6つは、新しいフロアボスの世界初報酬なので、俺の運がよかったわけじゃない。逆に言うと、確定で貰える物以外は全滅しているので、6個しかなのだ。マジでむかつく。
もともと過剰戦力ぎみなので、急いで強化することもないのだが、もっと数があれば好き勝手に使えたのだが・・・。
ああ、そういえば、手に入ったうちの三個は国に売った。前に手に入れた物が残っていた、といったので、俺が潜って手に入れたものだとは思わないだろう。・・・一部の人間以外は。
「きききー!!」
「おはよ、バトちゃん」
あと、ダンジョンについて。世間での注目度は依然高いままだが、わからないことが多すぎて、やや下火になりつつある。そもそも、多くの人にとっては関係のないことなので、気にする人が減っていることもあるだろう。
ダンジョンから物が獲れるようになったのは、違う国が発表したので知らない人はいないだろう。何が獲れるのかは、発表されていないのであまり騒がれなかったが。現状だと有用なのは肉くらいだしな。
鉱石とか、燃料とかあれば話は変わるんだろうけど。
あ、後は、宝箱から出てきてたあの宝石擬き。あれに関しては使い方はわかった。何かしらのエネルギーがあることもわかっている。自衛隊のスキル持ちが、スキルを使いながら触ったところ反応があったようだ。俺も試してみたけど、どうも魔法スキルに反応しているらしい。『硬質化』には反応なしで『土魔法』で光ったのだ。
そこでその状態で、魔法を使った所、魔法の威力が上がったのだ。びっくりして怪我したけどな!
それに、杖持ちゴブリンの持っていた杖にも、似たようなものがついていた。元々、そういうブースト的な能力前提の物なのだろう。俺もこれをどうにか使いたいのだが、少々困っている。
携帯するには邪魔なのだ。杖みたいな形にすれば、いざという時に牽制になるしいいんだが、俺は石のままでしかもっていない。ようするに、邪魔なのだ。片手がふさがるし、二刀流のようにガードもできない。邪魔だ。
ならばアクセサリーなら。とも思ったが、俺自身で細工しなければいけない、という縛りありなので無理ということになった。できれば今はダンジョン産の物を、人目に触れさせたくはないのだ。
そして、今現在。俺がたどり着いた階層は13階層。10階層にもいろいろあったがそこはいいんだ。ダンジョンでの活動が楽になるものがあったし、本当に全滅しかけたがそこはいいのだ。
10階層でのボスは、狂化されたオーガとだけ言っておこう。そのうち語ることもあるだろう。
10階層より下は洞窟ではなく、草原が広がっていた。普通に空が存在する上に太陽もある。一瞬、外に出たのかとも思ったが違うことはすぐわかった。
扉の後ろは壁が広がっていたし、ある程度まで端に行くと、見えない壁に遮られるのだ。広さはそれまでの洞窟とは比べ物にならない大きさだったが、円形状に広がっていた。
今までの、限られた空間での戦闘ではないので、勘をつかむのに手間取ったが、今はなんともなくなった。
今いる13階層にいる敵は、オーガと、ゴーレム。オーガは前に戦った狂化個体ほどじゃないが強くなった個体だ。むしろ、こいつと戦って、狂化と例えることにしたんだけど。
次にゴーレム。こいつはオーガより遅いが、力はオーガ以上。そしてなにより、かったいのだ。コロちゃんも、最初は魔刃でも攻撃が通らなかったのだから、その頑強さは想像できるだろう。魔法にはその分弱いようで、近づかなければ苦戦はないのだが。
ハイオーガは角、もちろん硬い。
問題はゴーレムのほうだ。
材質はぱっと見だと土なんだが、明らかに硬すぎる。俺も魔法で似たような強度には出来るが、それはスキルの成長でできたことだ。ゴーレムは魔法の産物、なんて話もあったはずなので、そう考えれば納得なのだが、なんとなく違うとおもった。倒されると土に戻るのだ。その状態で魔法を使おうすると、また硬くなる。魔法スキル発動時に、俺の魔力とでもいうべきものが、土に流れるのだろうか、魔力に反応して性質が変わる。これが今の俺の問題だった。
10階層を超えて、一層毎の敵が二種類になっているから、この先問題は増えそうだな。
「使い方によっては、かなり便利なのには間違いなんだけどなぁ」
問題は、これについて報告できないことだった。俺が、ダミーとして報告した、爺さんの山のダンジョンは、自衛隊の管理下にあるので、俺の言い訳には使えない。
でも、うちにあるダンジョンを教えると、俺が自由に潜れなくなる。そんな感じになっている。
俺の興味は、あくまでもレベルアップ。スキル強化に、スキルの増加だ。
ただ、その過程で得た成果については、別に独占する気はないので公表してもいいかなぁ、くらいに考えている。
ゴーレム以外にも、いろいろ情報がたまっているのに、それを伝えられない。別に義務ではないんだが、小市民の俺はなんとなくもやもやするのだ。
「俺が護衛する時に、そこまで行ければ楽なのに・・・」
前回、俺が新宿ダンジョンに潜った理由は、護衛するにあたっての俺の戦力調査だったはずだ。
それが、俺の戦力と情報を聞いて、先にやることでもできたのか、その護衛の話が延期になっているのだ。
本当は先週行くはずだったんだけど。
親父もカンカンに怒っているわけだ。せっかくのダンジョンが遠のくわけだから当たり前か。ほかの研究者の人たちも不満がたまっているらしい。
「そういや、俺そろそろ夏休み終わるのか」
いろいろあったので忘れていたが、後二日で学校が始まる。ダンジョンに潜る時間が減るのは嫌だが、学校も別につまらないわけじゃない。久しぶりに会うオタク友達とくだらない話をするのも楽しいしな。
宿題に関しては、ちゃんとこまめにやったのがよかったのか。全部終わっている、実は問題集が一つ、なんてありがちなミスもない。
故に、後は学校までゆっくりかな、とか思ってた時に限って問題はやってくる。
?~
「?母さんか。携帯って珍しいな」
普段の母さんは基本的に電話しない。来ても家の固定電話に来るのだ。
よほどの緊急事態か何かでもないとかかってこないと思ってたんだが。いや、前ならともかく、今なら緊急事態あるな。
ダンジョン関係だよなぁ。
「もしもし?」
『あ、恭輔?よかったぁ。起きてたのね』
「いや、今10時だし。起きてるわ」
確かに、夏休み中は遅く起きてたけど、基本的に、この時間には起きてたでしょうが。
「携帯にかけるなんて珍しいじゃない」
『急いで買ってきてほしい物があってね』
「買い物・・・?」
ダンジョン関係なし?
「なんか緊急なの?」
『緊急よ~。私も今帰ってるところなの』
「出勤したの2時間前とかだったよな!?」
本当に何があった!?母さんの様子から、まずいことが起きたのではないのはわかるんだが、これはこれでこわいんだけど!?。
嫌、まて。この感じ。前にも似たような事があったような・・・?
『えっとねぇ。キャットフードと、犬用のおやつと、ペット用のトイレ砂と・・・・』
「今回は何が増えるんすかねお母さま!?」
またペットが増えるのかぁぁぁぁぁぁぁぁ。
しかも、なんか大量に買いに行かせる気満々じゃねぇか。持ちきれるか!!
『今の恭輔ならいけない?』
「物理的に手が足りないわ」
『あらぁ、そうなのねぇ』
魔法ありならなんとか?土で、手なりなんなり、物を持てる形に固定しながらなんとかってところ?絶対使いませんけど。
「とりあえず、寝床用の毛布と、クッションと、キャットフードとか、その辺は買ってくるわ」
『ありがとう~』
動物は俺も好きだから増えるのはいいんだけどさ。もうちょっと前兆というか、伝えるなりあると思うんですよ。それでお使いに走り回るのは俺なわけで。・・・親父は知ってるのか?知ってるよな?・・・不安だ。
『あ、あとダンジョンに行く準備もしておいてね』
「へ?何故に?」
『???』
「なんでわからないの?みたいな沈黙はよくないと思います」
『ふーちゃんにもダンジョンに潜ってもらうから。コロちゃんみたいに』
「・・・・・・」
あ、これ面倒な奴じゃ・・・・・
大柿動物園。
どっかで話したか忘れたけど、知り合いの人が経営している動物園。ここも例に漏れず、親の知り合いだが。昔はよく入り浸っていた。
「それで?親父と母さんの姿が見えずに、何故に園長がいるのさ」
「あの二人はまだ来れてなくてね。車だからもう少しで来るはずなんだけど」
「マジかよ・・・」
折角人が、自転車にいろいろ詰んで来たというのにこれである。コロちゃんもいる。どうやって来た?走ってだよ。
大体今のコロちゃんは、自転車より早いんだよ。自転車で20分くらいだし。そのくらいの距離なら俺でも問題ない。
「てか、なんでここに呼ばれたの俺?」
「相変わらずみたいだねぇ」
今、目の前にいる人は園長先生。
ふざけてるとかではなく、名前を知らないのだ。親は二人とも先生としか呼ばないし。俺は俺で、園長よびだから名前を聞く機会がないのだ。園で働いている人も全員どっちかだし。
「うちの子を一匹譲ることになってね。だからじゃないかい?」
「園長はなんでそうなったかもちろん知ってるよな」
「もちろん。ダンジョン関係なんだろう。詳しくは聞かなかったが、君たちがかなり重要な位置にいるのは聞いたよ」
「重要っとはいうけど、重要参考人とかだろうに」
「ワン」
「はっはっは。相変わらず仲がいいな君たちは」
俺とコロちゃんはマブダチなんで。・・・そういえば、この言葉古いってマジ?
「ワンワンワン!!」
「いきなりどうした?・・・・あ、親父たち来たな」
「よく聞こえるねぇ」
今日は休園日だから静かだしな。じゃなきゃ、さすがに聞こえる距離じゃないわな、
コロちゃんも、よくうちの車の音ってわかったな。さして珍しい車種じゃなかったと思うんだけど。
暫くして、入り口の方から親父たちがやってきた。親父はなんか疲れ気味だし、母さんは・・・機嫌がよさそうですね。ルンルンって効果音が見える。
「お待たせ~。ふーちゃんは?」
「息子と飼い狼に声をかけず、第一声がそうきたか」
「まだきてないの?」
「聞いてよ」
「ワン」
コロちゃんもあきれてるじゃん。てか、ふーちゃんってだれ。買い物の内容的に想像はつくんだけど。
「ふーちゃん。連れてきましたよ」
「ふーちゃん~!!」
「やっぱり狐か」
「わかってたのか」
「買い物の内容的にな」
基本は犬の買い物なのにキャットフードとか。ほかにもちょこちょこ変わってたし。
「ああ、そこからか」
「条件的に狐かなってだけだったけど」
知らない動物だったら当てようもないしな。あくまで、知ってる中で該当したのが狐だっただけだ。
「それにしてもアカギツネか。普通だな」
「そう思うか?」
「動物園でって話だったし。てっきり別のかと。アカギツネとか、フェネックとかなら、ペットショップにいるじゃん」
比較的に、狐って聞いたらこの二種類が浮かぶだろう人は多いはずだ。それくらい狐的に有名なんだから。
「さて、そろそろ聞かせていただきましょうか」
「な、何をだ?」
「なんで狐を引き取ることになったのか」
母さんがいきなり引き取るって言いだすのは、今に始まったことじゃないからいいんだよ。
そこじゃなくて、なんで母さんがわざわざ携帯に、そして、ダンジョンの準備まで言ってくるのですか?
「実はなぁ・・・・」
まとめるとこうだ。
ダンジョンに潜った際のコロちゃんの強さが報告される。その報告から、動物をダンジョンに同行させるのは有効なのではないかと、どっかの誰かが考える。
何故か話が進み、計画実行まであと一歩。しかし、ダンジョンの中で安全確実に動ける人間はそういない。「ならうちの子が」と、なぜか手をあげる母上。「時代は狐だわ」と、謎の主張。
そして現在へ
「なんでそうなった!?」
「俺も知らないんだよ!外に出てて、気が付いたら決まってたんだよ!!」
「まずそういうのって、もっと余裕できてからじゃないんかい」
「まぁそうなんだが」
自衛隊が現在戦力強化中。そのせいでダンジョン探索、研究は停滞気味に。しかし、世界で一番深くまで潜り、成果まで持ち帰ることに成功している。さらに、ペットの可能性を示した張本人がフリーだ。
「なんでそれが通るんだよ!?どんな超展開だ!!!」
「諦めてくれ。母さんは狐が飼えてうれしいらしい」
「完全に私事じゃないですかヤダー」
動物チョイスが、母さんが飼いたい動物で選ぶのはなんでだ・・・。
「一応、理にかなっててな」
「ほう」
「狐は、元々肉食寄りの雑食だ。狩りもする。比較的、飼育も犬猫と変わらないからな。
確かめるのにちょうどいいと力説されてな」
「・・・そういうのってもっと進んでから・・・・・・・」
なんか・・・もう・・・いいよ。がんばるよ・・・。
 




