145話
朝昼夜で一話づつ投稿します。
「・・・見えねぇ」
「なんも書いてへんねぇ」
「うー」
あのダンジョンを名乗る人型。あれからもらったスキルスクロール。中身は決まってるとのことだったが、何も書いてないのだ。
文字通り、空白。
「中身もクソもないんだけど」
「使えへんの?」
「・・・ダメだわ。反応なし」
「お手上げやん」
まぁどうしようもないのは仕方ないか。
それ以前にフミに聴きたいことはあるし。
「それで?お前はあれにいつから会ってた?」
「会ってたいうか・・・会ったんは本当に昨日が初めてなんよ」
「昨日?お前ずっと家に・・・洗濯物の時?」
「そうや。気がついたら後ろにおるんやもん」
気がついたら?フミが気がつかなかったのか?俺は何かいるのはわかってたけど・・・。
「その一回きりで、あんなん本当にいると思わんかったし」
「その時に俺の事を聞いたのか?」
「ほっとんど話してくれへんかったけどな」
「例えば?」
「恭輔を害する気はないとしか言わへんのよ」
「・・・俺もそうだったな」
そもそもあれはなんだ?ダンジョンと名乗り、実際にダンジョンが中にあるかのような魔力の流れ、存在の強さがあった。
「ああ、それならうちらは少しわかるわ」
「うー!」
「ニホリも?」
「あれは、なんというか、ダンジョンの意思なんよ」
「・・・ちょっとまって」
急によくわかんないこと言わないで。急にそういう設定くるとい混乱するでしょ。
「うーうー」
「管理人いうた方がええんかなぁ」
「あれがダンジョンを作ったのか?」
「違うで?本質的にはうちらと同じや。悔しいけど、格は全然あっちが上やけど」
「格・・・強さってことか?」
「まぁそれでええわ。間違っとらんし」
「それで?俺が目をつけられたと」
「そうなるわ。ホンマに何する気なんや・・・」
俺を害する気はない。スキルスクロールくれた。
・・・うーん。
「案外、俺に頼み事あるだけだったりな」
「ええーあれがぁ?」
「うー?」
「そんな疑問に思うのか」
「だって、簡単に言うてもあれってうちの上位互換やで?できないことなんてないんちゃうか?」
「うー!」
「要するに、頼むようなことがないってか」
「そうなるわなぁ」
「うーん・・・わからん!一端保留!!」
「ええんか?」
「う?」
「だってわかんないもの。50層まで行けば待ってるらしいし。そこまで行くしかないでしょ」
現時点では何もできないのだ。
何かされても対策もできない。ていうか、フミの上位互換とかどっちにしろ対策とか意味なさそうだしな。
今の俺に出来ることは普通にダンジョンの進んでいくことだろう。
「強くなれば、そのうち分かるでしょ」
「・・・はぁ。まぁ確かにそうやな」
「そんなわけで、今から戦おうか」
「・・・はい?」
「う?」
「しゃー‼いくぞコロちゃん!」
「ワンワン!!」
「・・・ホンマにやるんか」
22層の羊ちゃんエリアにてフミと向き合う。
俺の近くにはコロちゃんだけだ。他のみんなは少し離れたところで見守っている。
周囲にはここの羊ちゃん達も見ている。
なんでこうなったか。
そもそもレベルアップ時に自分の身体能力・・・わかりやすくステータスというけど、
このステータスの伸び幅は、レベルが上がるまでにどれだけ濃い経験をしたかで決まる。
強い敵とがむしゃらに戦えばいいってわけじゃない。魔法を多く使えばその分魔力が上がる。動きの速い敵を戦えばその分こちらも速くなる。
筋力もそうだ。重い敵を持ち上げたり、敵を多く殴ったりすれば上がる。
だが問題がある。俺の現時点でのレベルとステータスがすでに今行ける階層の敵では苦戦しないのだ。
本気でやった場合、大方の敵は瞬殺できるレベルまできてる。できない敵は環境に阻まれている敵なんだが、そういった敵は倒してもいまいちいい経験にならないらしい。
そこでフミだ。
何をとっても俺たちの誰よりも強い。
俺たちが本気を出してもまるでかなわない存在。そんなフミと戦えばどうなるか。
「間違いなく、いい経験ができるってな」
「ワン!」
コロちゃんも超乗り気だ。まぁ最近の伸びの悪さはコロちゃんが一番実感してただろうしな。
まぁ戦うと言っても、俺たちは本気だが、フミは手抜きだ。じゃないと勝負にならんし・・・悔しいことに。
これの問題点は一つ。
「・・・ホンマにやるん?」
「やる」
「ワン」
フミがやる気じゃないこと。ていうか、いくら本気じゃなくても俺とかコロちゃん達、家族と戦うのが嫌らしい。
その気持ちはうれしいし、俺もフミは大事なんだけど・・・
「でも、やらなきゃいけないのはわかってるだろ?」
「・・・」
あの人型は待ってると言ってたけど、いつまで待つとは言ってない。出来る限り、早めに50まで行く必要がある。
現在の階層が25層。最初から考えてみればまだ半分ってところだ。
ここまで来るのに半年近くかかってる。これが速いのかわからないけど・・・
「今以上に早く下に行ければ、問題ないだろ?」
「まぁ・・・そらそうやな・・・ああ。いややわ」
「悪いって・・・そうだな。終わったら、今度どっか出かけるか?」
「・・・二人っきり?」
「もちろん」
「・・・はぁ。じゃあやるかぁ」
「お、やる気になったか」
「一戦につき一回お願い聞いてな?」
「・・・まぁいいでしょう」
「・・・ワン」
「・・・頑張りまーす」
コロちゃんに心配されたけど、たぶん心配するところ違うぞ。
「じゃあ、最初はそっちからきてええで」
「コロちゃん。マジで手加減するな。本気でやらなきゃ届かないぞ」
「グルルルル!!」
「そうだ。それだ。手も足もでないとか悔しいもんな」
フミがちょっと戦闘態勢にはいる。その時点で俺たちの周りの空気が重くなったような感覚に陥る。
初めてフミに会った時以来の感覚だ。圧倒的な格上を目の前にするこの感覚。今までダンジョンの中で感じたのは一回だけ。
初めて10層のボス。狂化オーガと戦った時。
あの時の俺たちは、死んでてもおかしくなかった。だけど、生き残った。勝ったのは俺たちだ。
「思い出せ。あの時の俺たちを。本気で相手に勝とうとしたあの時を」
「ァァァァァ!!!」
「・・・ホンマに、あの二人はおっかないわなぁ」
負けない。勝てないのはわかってるけど勝つのはあきらめない。
足りないなら、今この瞬間も強くなればいい。強くなって、勝てばいい。
だから・・・ここで・・・
「ハッタオス」
「ワォォォォォォォォォン!!!!!」
見せてやる。
もうちょい後の方がいろいろ進むのでそこまで速く行きたいなと。
地味にPSO2時間取られてますが




