144話
なんかようやくここまで来れたって気がしてます。
予定外ですがなんか今日はよく書けたので追加で投稿。一話です。
俺が入った時?どういうことだ。
「恭輔が初めてあのダンジョンに入った時。それが世界で初めて人間がダンジョンに入った時なんよ」
「まぁ・・・それは想像できてたけど」
「あの時に、足を踏み入れた瞬間に、ダンジョンは恭輔を見つけたんや」
「見つけた?ダンジョンが?」
「うちもさっき聞いたんやけどな」
「・・・聞いたって」
「よっぽど恭輔が大事らしいで?この子まで送って来よってからに」
「・・・お前が連れてきたんじゃ」
「そや、うちが連れてきた。たまたまいると思ったんよ。違ったんやけど」
「意図的に生み出されたと」
「そういうことや」
「」(コテン
この子が何かの意思によって俺の元によこされた・・・
「え、バッチ来いなんだけど」
「だぁ!?」
「う~・・・」
「今シリアスなところだったよな!?」
「え、何が・・・」
「」(ギュー
「可愛いからよくね?」
誰の意思とか、ダンジョンとかはどうでもいい。来てくれたのならなんでもいい。
「お礼を言いたいくらいだな」
「・・・はぁ。悩んでたうちがバカみたいやんか」
「ああ、ずっと教えてくれなかったしな」
「一歩間違えれば人外コースまっしぐらなんやけど?」
「・・・まぁあんま変わんないんじゃね?」
俺が人間かどうかなんて関係ないしなぁ。
「流石恭輔というべきか・・・なんやこいつと突っ込むべきかむっちゃ悩むぅぅぅぅ!!!」
「うーうー」(ポンポン
「ぴ~」
「ていうか、なんで今そんな話したんだ?」
今までなんか隠してたことってこの事みたいなんだけど。
なんで今になって俺に話してくれたのか。
「・・・この子のテイムん時に聞こえなかった言うたやろ?」
「言ったね」
「こら完全に名前決めさせにきたな思ったんよ」
「決めさせる。俺に?」
「そうや。ああー、何を悩んでたんやうちわぁ!!」
「うーうー」(ナデナデ
「ニホリー!!」
「うぶ!?」
ていうか、その声に干渉出来るからってなんで人間やめるのかとかいろいろ聞きたいんだけど。
「・・・絶対におしえへん!!!!」
「ここにきて!?」
「言うたって無駄やもん!恭輔なんも考えへんもん!!」
「否定はしませんけど」
なるようになっていただいて結構なんですけど。
「う!」
「お、おう?ニホリ?」
「うー!うー!!」
「ああ・・・うん。それは悪かった」
まぁ俺自身のことは俺的には割とどうでもいい。
だけど、フミは俺のことを心配してくれているのは間違いないのだ。それに対して、この反応はダメだ。
「すまん。フミ」
「・・・ふーん」
「・・・ニホリ、場所代わって」
「う」
「逃げられない?じゃあそのままで」
ニホリに抱き着いているフミを後ろから抱きしめる。拗ねて聞いてくれないかもしれないけど。
「フミ」
「・・・」
「大丈夫だ」
「・・・っ」
「人間じゃなくっても。俺は俺だよ」
「・・・ホンマか?」
「おう。ダンジョンだろうがなんだろうが負けないよ」
「・・・」
「俺は、負けないよ」
あの後、機嫌は完全には直らなかったが、話は聞いてくれるようになった。
まぁみんなでフミを慰める会するとかで今日は俺だけ一人で寝ることになったけど。
完全に一人で寝るなんてどんだけぶりなんだか・・・
「一人ってのは、やっぱり静かだな・・・」
たまにはと思ってカーテンを開けて月とか眺めてみるけど、なんも思わんな。月だなって感じ。
「それで?いつまで隠れてるつもりだ?」
「・・・否定。私は常にいる」
「・・・はぁ」
いやだなぁ。
「一応聞いとくけど、あんたは?」
「ダンジョン」
「はは。答える気あんのか?」
俺の知ってるダンジョンは、倉庫の中で勝手に穴開けるタイプとか、山に中に洞穴みたいになるとか。コンクリートぶち抜いてくるとかそういうやつのことで、
今俺の目の前にいる人型みたいなやつのことではない。
「声はあの、アナウンスと一緒なんだな」
「肯定。あれは私が伝えている」
「そうかい。どうだった。動物とモンスターの違いは」
「わかりにくい」
「そらそうだろな。お前にとっては」
ダンジョンに入ると常に感じる。魔力の流れを、モンスターたちの生きる音が。この人型から、同じものを感じる。
まるでダンジョンすべてをこの人型の中に詰め込んだような感じだ。ごちゃ混ぜで気持ち悪い。
「謝罪。収める」
「は?・・・マジかよ」
一瞬で違和感がなくなった。
「まぁいいか。何しに来た」
「こちらの意を伝えに」
「ああ?」
「彼女・・・あの変異体はあなたを気にしていた。故に伝えに来た」
「何を」
「こちらには、あなたを害する意思はない」
「じゃあなんでフミはお前を怖がってる。正確には、お前が俺にすることを怖がっているかな」
「害する意思はない。しかし、結果的にあなたは変わる」
「・・・どういうことだ」
「人間をやめる」
「・・・っは。またそれかよ」
いい加減聞き飽きた話だ。人間をやめてどうなるんだ。フミたちと一緒に居られなくなるんなら怒るな。
「これを」
「スキルスクロール?」
「中身は決まっている」
そういって、俺にスクロールを渡してすぐに、人型は消えていく。
どこかいなくなる気だ。
「おい待てよ!まだ聞きたいことが」
「50層」
「ああ!?」
「待ってる」
「おい!!・・・クッソマジでいなくなりやがった」
そこには何もいなかった。あれだけ巨大な魔力があった存在が目の前にいたのに、今はもう何も感じない。
まるで、最初からそうだったように。何も残されていない。
「恭輔!!」
「フm!?」
「大丈夫か?何もされてへんな!?」
「・・・大丈夫だから離れろ」
「ホンマか?ホンマやな?」
「大丈夫だよ。いつから気がついてた?」
「最初からやけど、部屋に入れへんくって・・・」
「だろうな。あれはそういう類のやつだよ」
フミみたいに、圧倒的な力を感じない。
戦って勝てないとかそういうレベルじゃなくて、そもそも戦う気になれない。多分、精神的にも何かされてたな。
明かな不審人物相手なのに、構える気も起きなかった。
50層・・・早めに行かなきゃダメかもな・・・。
「知らなきゃ行けないことが増えたな」
「恭輔・・・」
「大丈夫だ。なんとなくだけど、大丈夫な気がしてきた」
なんでかはわからない。わからないけど、俺にとって、決して悪い相手ではないような気がするのだ。
フミが危惧してた内容もいまならわかる。あれの行動次第で、俺が簡単に死ねる。文字通り、命がなくなる。
でも、あの人型は害する意思はないと言っていた。信じられるようなことはなかったのだが、何故だか大丈夫だと思うのだ。
・・・わかんねえなぁ




