141話
夜分一話です。いい感じに温かくなってきましたね。風強いですけど
「ほれ、キメラの牙」
「おお!またでかいな!!」
「ちなみに、獅子頭の牙みたいなんだよねー」
「キメラだから、他の部位の素材もありそうだと」
「次の階層でわかるでしょ。すぐ行ってみようかと思うんだけど」
「わかった。こっちでもこれの加工を考えてみるか」
「・・・余裕あんのかよ」
「今は割とな。お前のその籠手が壊れん限り問題ない」
「壊れたら?」
「・・・また硬いのを作らなきゃいけないな」
むしろ今がチャンスなのね・・・。
29層突入。
ボスのいた空間的に、夜であるのはわかってた。他にも小さい山というか、荒野って感じのフィールドでもあった。
視界を遮るものは岩の塊のみ。それ以外は何もないから特に問題ないかも。
「そもそも夜で視界よくないけど」
「きき~♪」
「お前は余裕そうだな」
「ワフ?」
「クゥ?」
「ぴぴ?」
「ちゅちゅ?」
「・・・うちの子達に夜は障害じゃないのか」
まぁそうだよな。コロちゃんバトちゃんは言わずもがな、夜の住民みたいなところあるし、ネズミと狐だって野生の場合いは夜も問題なく動く。
すらっぴは視界っていう問題じゃないしな。
やっぱり、人間の俺とかはこういう時に不利だよな。
「魔力感知も万能じゃないしなぁ」
「そこは頑張りどこやね」
「そういうお前は見えるのか?」
「そらな」
「ニホリは?」
「うーうー」(フルフル
「ニホリはやっぱ視界関係は俺と同じだよな」
この様子だとピッちゃんもか。ふーりんちゃんは・・・どうなんだろ。
「どうなんすか」
「にゃうん」
「ふーりんちゃん達は、うちらよりいろいろ鋭いからなぁ」
「それは五感的な意味で?」
「ん~それもあるけど、もっと感覚的なとこやな」
第六感とかか・・・まぁ精霊だしな。そうでもおかしくないけど。
まぁしーちゃんは・・・俺とかわらんかな。
「よっし。じゃあ行くか」
「ワンワン!」
「ん?いる?・・・ああ」
キメラって嫌に隠れるの上手いな。ちょっと意識逸らすとすぐにわからなくなる。
今いる場所は階段降りてすぐのところ。その時点で岩陰に三体。
「いや殺意高いね」
「ここの階層は、そこらでうろうろしとるからなぁ」
「ああ、純粋に運がなかったと」
たまたま三体くらい重なってここにいただけで、俺は運悪く見つかったって感じか。
まぁ三体ならどうにかなるか。
「ピッちゃんとふーりんちゃん。一体もてる?」
『にゃ!!』
「るる!」
「うるせ。まぁ行けるならいいや。じゃあ俺とコロちゃんで一体、残りはみんなで。あ、分けてもいいよ」
「ぴ?」
「きき!!」
「めぇ」
「ちゅちゅ!」
「クゥ~」
「はいはい。危なくなったら参加しろよ」
残りの一体は、バトちゃんねっさんがメイン。援護にふーちゃんすらっぴで、しーちゃんはお休みだ。『雷魔法が』怖いけど、まぁその辺はどうにかできるんだろう。
しーちゃんが参加しないってことはそういうことだろうし。
「あ、コロちゃんは暴れてていいぞ。全部落とすし」
「ワン!」
「んじゃ、戦闘開始!」
俺たちのキメラはコロちゃんによりだるま状態に。ぴっちゃんふーりんちゃんは上空にかち上げて落下死。
残りは一体だけなんだけど・・・
「遊んでんなぁ」
「まぁちょうどええ敵やしな」
「うー」
「あ、ありがと」
最近ニホリはダンジョン内に普通にお茶セット持ち歩いたりしてるからこういう余裕があるときはゆったりできていいな。
ちゃんと荷物も自分で背負ってるから俺たちの負担になってるわけじゃないし。まぁ『浮遊』で浮かしてるからニホリの負担にもなってないけど。
残りの一体って何で遊んでるかというと。まぁ、簡単に言うと的当てだよね。
キメラが同時に処理できる魔法の数は多くても3つか4つ。それに対して、今戦ってるこちらのみんなの数は4。それも、同時に魔法を使用できる子と、異常に火力の高い子がいる。
まぁ簡単にキャパオーバーで対処できなくなっている。それでもいくつかはちゃんと撃ち落とすんだけど、かなり被弾してる。
ここまでなら普通に戦ってるだけなんだけど、何が質悪いって、ねっさんだよ。相手の動きに合わせて分身たちを動かす。回避されるなと思ったらその時点で爆発させて相手の動きを止める。
本来なら爆発させた時点で次の爆発がまっているんだけど、遊んでるから爆発は一回のみ。趣味悪いぞ。
「ちゅ!!」
「ええ、心外な?」
「ちゅっちゅ!」
「はぁ、そういうこと」
本当は魔法のみで倒しきりたいらしいのだが、まだできないので手伝っているとのこと。遊んでるわけじゃないのか。
「ちゅ?」
「コツか・・・ん~そうだな。敵の魔法を見て、何が撃ち落とされるかちゃんと見極めることかな」
「ちゅ~?」
「二つ撃って、片方が撃ち落とされたなら、残った一個は相手に行くだろう?」
「ちゅ」(コク
「相手がどっちを先に落とすか、残った物は避けるのかどうなのか。それを見てれば相手の隙だって狙えるわけさ」
「ちゅ~」
まぁ数の暴力の権化であるねっさんには関係ない話なんだけど。基本的に、相手の動きを見なくても対処できないほどの数で押せばいいしな。
「お、終わるな」
「ぴぴぴ!」
すらっぴの水ビームが相手ののど元を貫く。ふーちゃんの炎が羊を焼き、バトちゃんの風が蛇を切り裂いた。
流石に限界だったようで、そのままキメラは倒れる。ちゃんとドロップも落した。
「お疲れ様」
「ぴ!」
「きき!」
「クゥ!」
「ちゅ~」
「めぇ」
「ぴぴ~」
「クゥ・・・」
「めぇめぇ」
「クゥ?」
「ちゅ!」
「き~」
「反省会は後でな。まだ今日は先に行くんだから」
ドロップも確認しなきゃな。
ええっと、牙と、角?かこれ。もう一個も牙か。獅子頭の牙が一番落ちやすいのかな。
倒し方によって変わったりして。まぁ要検証ってことで。
「とりあえずはちゃんと倒せるし。俺とコロちゃんは次はソロで倒せそうだな」
「ワフ」
「俺もそうだけど、調子にのんなよ」
一応強い敵であることは間違いないのだ。倒せる=弱いってわけじゃないしな。
「うー?」
「クゥ!」
「ちゅ!」
「うー」
ニホリが水を出してくれた。
ニホリ、みんな分の水飲み皿持ってきてるのか。『浮遊』で重くないとは言え、かさばるだろうに。
ゴクゴク飲んでる姿もかわいいから一枚パシャリ。
「ちゅ?」
「気にせず飲んでていいぞー」
ねっさんの分身(偵察)がまたキメラを見つけたらしい。なんか多いなキメラ。ボスだったくせに。
まぁ蛇の何かも落とすだろうし、そこそこに倒すか。
「じゃあしーちゃん行くか」
「めぇ」
「あ、うちもちょい運動がてら行ってきてもええ?」
「お?珍しいな。運動にならんだろうに」
「ちょいおもろいのが近くにおるみたいなんよ」
「・・・ほう?」
キメラの他のもう一体ってところか。気になるところだけど、フミがわざわざ俺の言ってくるってことは、強いか、場所が面倒かのどちらかだろう。
それにしても本当におもろいのって言うのは珍しいな。フミとっちゃ、大体力押しできるだろうに。
「いや、全然苦戦はせぇへんよ。見るのがおもろいねん」
「ええ~・・・」
「恭輔はあかんかもしれへんけどなぁ」
「おおん?」
一体何がいるんだか。




