14話
「以上が大門恭輔、コロさんの報告になります」
「了解した。しかし、それほどか」
「はい。我々の装備では太刀打ちできない敵を、一方的に殲滅。スキルの重要性を実感しました」
「そうか。何かスキルについては」
「それについては一つ、助言をいただきました」
「どんなものだ?」
「とりあえず、使い続けろと。弱い敵からでも構わないから、使わないとスキルが育たないそうです」
「スキルも育つのか・・・」
「はい。実際恭輔君が使った魔法が、本当に同じスキルの魔法なのか、と思うほどには」
「そこまでか・・・」
「ってな感じの報告でもしてるんじゃないの」
「がっつりやってきたのな」
「新階層まで届かせてやったよ」
「これで、お前の価値がどれほどのものか、理解させられただろうな」
「目的は達成ってな」
それでも、うちのフルパーティーじゃないわけだから、まだまだ上があるんだけど。えげつなさと殲滅力で言うなら、コロちゃん以上はいるわけだし。
今は、新宿から戻ってきて家にいる。ダンジョンに潜って、いろいろやって帰ってきたら夜になってたけど。夕飯は外で食べてきてしまった。母さんとは途中で合流したし、姉ちゃんも来れたから、久しぶりに一家全員集合だった。姉ちゃんの知らない家族は増えてるけどな。
「それにお土産も渡してきたし」
「お土産?」
「スキルスクロールを一個だけ渡してきた」
「ハァ!?」
たまたま、オーガを討伐した時の宝箱の中に入ってたのだ。ばれないようにすることはできたけど、恩を売るって形で渡してきた。
「正直ちょっと。いや、かなり悩んだけど。後の事を考えれば、まぁいいでしょ」
今回ので、どれだけ手に入れるのが難しいのか分かっただろうし。次からは有料なのは伝えたしな。
「てか、そもそも俺一人で何十人分の戦力になるわけだし。それ分の弾代とかに比べたら安い安い」
「大丈夫かぁ?」
「先行投資って考えれば、そこを惜しむことはないでしょ。オークの肉も渡したし」
「それも渡したのか・・・」
あらかじめ冷凍しておいたものを渡したから。そこまで新宿で潜ったわけじゃないから。食料問題が日本にあるわけじゃないが、食料自給率は低いんだから、食えるものが増えるのはいいことでしょ。下に行けばもっと違う物も手に入るだろうし。
「はぁ。まぁ、その辺は追々確認だな。それで、どうするんだ?」
「何が?」
「ダンジョンだ。うちにあるのを伝えなかったのはいいんだが、新しい階層に行きにくいんじゃないか?」
山の方に潜ってることになってるからな。でも、そこは伝えてしまった。近いうちに管理されるようになるだろうから。そこには行けなくなるかもしれない。行くにしても面倒な条件付きとか。
「まぁ、しばらくは成果を持ち帰らずに、うちので潜ってるかな」
「持ち帰りなしかぁ」
「もともと持ち帰りは親父たちの要望だし。俺の興味はレベリングだよ」
「・・・しばらく新発見はお預けかぁ」
「今度こそ、誰にもバレずに、個人的に研究するならいいけど。次バレたら隠せないよ」
「だよなぁ。ちょっと考えてみるか」
「がんばれ」
親父が、リビングをでて自分の部屋に向かう。
俺はコロちゃん達と遊ぶかね。コロちゃ~んどこ~?・・・あれ?
「庭?珍しいな。この時間に」
大体ご飯終わったら外に出ないんだけど。てか、全員出てるのか。何してるのか。俺も混ぜろ。
「なにしてるん?」
「ワフ」
「ちゅちゅちゅ」
「ききー」
「え、まって、いきなりわかんないこと言わないで」
すらっぴが進化?なにそれ。
「いつからお前らはポケットに入るモンスターになったのだ」
「ちゅ?」
「しらないよなそりゃ」
むしろ知ってたらびっくりなんだが。
・・・何もすらっぴに変化ないんだけど?
「ぴっぴ!」
「あ。喋った。進化完了?何が変わったの」
とりあえず、こういう時はカードの確認を・・・久々に見たなこれ。
・・・種族、ハイスライム?上位種ってことか?
「ぴー」
「その通りと。強くなったってことでOK?」
「ぴぴ!」
期待しときな!とのお言葉。どう強くなったかは次で確認だな。あ、体内?にあった石っぽいのがなくなってる。
ていうか、進化地味じゃね?光らないし。何も起きなかったけど・・・
「他のみんなは派手になるのか?」
「きー」
「ちゅちゅ」
「デスヨネ」
知らんがな、と言われたしまった。
まぁ、いきなり光り始めたら、もはや生物として・・・こいつらに常識は関係ないな。
でも”ハイ”スライムか。バトちゃん達もハイになるのかな?後、コロちゃんが進化するかも気になる。コロちゃんは元々うちの子でダンジョン関係ないけど。
「今思ったけど、今日はコロちゃん大活躍だったから、自衛隊で狼犬が採用されたりして」
「???」
「仲間ができるかもってことだよ」
「ワン!!」
「そうかぁうれしいかぁ」
まぁ、オオカミは無理だろうから、狼犬なんだけど。狼犬はまぁ、簡単に言うと狼と犬のミックスだ。自治体によっては犬扱いだったり、そうじゃなかったりするけど。基本的に、日本でよく見る狼犬は犬扱いだ。
スキルスクロールが手に入れば、いずれはテイムを使える人も出てくるだろう。それは楽しみではあるな。
「そういや俺、夏休みなのに全然遊んでない気が・・・」
レベル上げが遊びみたいなもんか?趣味といえば趣味なわけだし。でも、最近イベント行けてないしなぁ。
「そろそろ、ライブ行きたいんだけど・・・」
「ワン」
「行けばいいって?チケット取れなかったんだよ」
アイドルグループ『マーリル・メープル』
二人組のアイドルユニット。全国的に有名になりつつある、去年デビューしたアイドルだ。
最初期から追っている身としては、是非、今度のアリーナライブに行きたかったが、見事抽選落ち。まじふぁっきゅー。
「ストレス発散も込めてダンジョンだな。それしかない」
「ワン!」
「ちゅ!」
「え?ライブみたい?・・・DVDでいい?」
「ワフー!」「ちゅちゅ~!」
「なら見るか。すらっぴとバトちゃんはどうする~?」
「ぴぴ!」「ききっ!!」
「はいは~い。なら今日は俺の部屋で寝るか」
寝床の移動しなきゃな。と言っても、移動はバトちゃんの止まり木と、コロちゃんのクッションだけか。・・・俺のベットにコロちゃん乗せるか。
でも、まさかこいつらが興味を持つとは。俺に合わせてくれたのか?布教しなきゃ(使命感)
「移動するのはいいけど、ちゃんとかたしてねぇ」
「ウィッス」
お母さま。いつから聞いてらしたんでしょうか。別に聞かれて困る内容ではないんだけれども。
「私は彩香ちゃんが好きよ~」
「聞いてないです母上。後、俺は芽衣ちゃん推しでござる」
夜が明けて・・・
「・・・どうしてこうなった」
「「「「zzzzzzzz」」」」
俺の上にコロちゃん。その上にねっさん。俺の枕横にはすらっぴ。バトちゃんは木にいる。
問題は、俺がうつぶせになっていること。
「おもくるしい」
潰されてるんだが。まあ寝てるから起こしにくいんだが。おかしい。ちゃんと寝る前に、寝床にいたのは確認したのに・・・
「わふ」
「犬パンチやめー」
肉球はきもちいいです。




