137話
夜一話です。
一回間違えて昨日投稿しましたがすぐ消したので大丈夫だと思いたい。
まぁ簡単に言うと、俺だと条件を満たすのが難しそうだったのだ。
彼女の出した条件。内容自体は確かに大したことなかった。ただそこに俺が時間食いそうだったのと、明らかに雪ちゃんの方がいろいろ都合がよかったのだ。
条件の内容は・・・まぁ大体想像できるだろう。スイーツ関連。
元々、彼女がダンジョンを出た理由はそれなんだが、ちゃんと理由があるのだ。
まず第一に、ダンジョンモンスター達は一部の例外を除くと食事をしない。彼女はその例外ではなかった。
そして、スキルで外の様子を見ることができる。外のおいしい食べ物をたくさん見れる。
元々食べないんならそれ見て食欲湧かないんじゃないのかとも思うだろう。
そこで、彼女が特殊個体である理由が来るのだ。彼女は、ダンジョンのモンスターにも関わらず大食らいなのだ。まぁこれはスキルのせいでもらしいんだが。
あ、今はもう旅からは帰ってきてる。そもそも大食らいなのが分かったのは香川でだし。うどん何杯食べたんだ?
そして今は研究所にて報告中。
「そんなわけで、テイム自体は俺がやった」
「よろしくお願いします」
「・・・・・・」
「お?」
「・・・俺はなんて伝えればいいんだ?」
「知らん」
犬でも飼いたいっていえばいいんじゃないの?
まぁ『変化』は持ってないらしくて実際の動物になることはできないんだけど。今も人型・・・彼女的には通常形態のままだし。
「これなんてどうです?」
「きゃ~!かわいい!!」
「ですよね!クッキーが可愛くて!」
「あのスイーツがそうです」
「わかってるわ!!」
「うーうー」(クイクイ
「ん?どうした?」
「う?」
「いやぁ。俺もフミもいいかなぁ」
「せやな。うちら、そこまで甘いもの好きってわけやあららへんし」
そもそもおやつだってみんなが食べてなければ食べないぞ。てか、時々俺だけ何も食べない時あるでしょ?あれ、気分じゃないからよ。
「だが、あの見た目では報告も難しいぞ。報告したところで・・・」
「研究ってことで連れてかれる?」
「それで抵抗されて施設壊滅だな」
「その通りだな」
「お前でも勝てないんだろう?」
「フミが言うには全員でやれば勝てるってさ。俺の主観で言うなら無理」
妨害スキルが厄介すぎる。ただでさえ基礎スペックが違うのだ。フミは速攻でやればいいとか言うが、そもそもそんな風に攻撃できるのがコロちゃんくらいなものだ。
それだって確実に攻撃を届かせられるとは限らない性能差なんだけどな。
「いけるおもうんやけどなぁ」
「フミの場合は俺に関しては多分に贔屓があるからあてにしないで」
「知ってたよ」
「ええ~ほんまやのに」
「ああ~!このケーキって!」
「見たことある!見たことある!!」
暢気すぎやしませんあの子たち。ていうか雪ちゃん。そんなに甘い物好きだったんだ。
ああ、そういえば。神社で感じてた異様な魔力は何?って聞いたところ、
「お姉さまが人間の男性といたので、ここ逃したら多分次はないなと」
そういうことらしい。
数日後、無事に彼女は受け入れられたらしい。雪ちゃんのペットを飼いたいって気持ちが伝わったんだな!
「いや待て」
「なに」
「なんであれで通るんだ。何かしたのか?」
「まぁ。先に少しだけ話してたけど」
大本は、彼女のスキルによるものだ。
フミ曰く、妹は特殊な方面に特化しているとのこと。そのスキルの汎用性、多様性は多岐にわたる。
「その中に、催眠術もあるんだと」
「使ったのか!?」
「いや、流石に使ってない。あくまで例えだよ」
まぁ今の俺の話の流れも悪かったか。正確に使ったのは、『変化』らしい。
・・・持ってないってか。確かにその通り、彼女は『変化』をもってない。それは間違いない。
「どうも、許可さえあれば俺のテイムした皆のスキルを使えるみたいでさ。フミのもコロちゃんのも例外なく使えるみたいなんだよね」
「・・・チートって言うんじゃないかそれ?」
「俺もそう思うわ」
デメリットはもちろんある。まず第一に、スキルの本来の所有者より強い効果は出ない。
そして、使用する度に一定割合で魔力を消費する。例えどんなに弱いスキルであってもだ。それでも20回近く使えるらしいんだが。
今回はフミの『変化』を使ってもらってマジの犬になってもらったのだ。
スキル名は『物真似』。使い道がないスキルだったらしいのだが、俺にテイムされたことで使えるようになったらしい。
これもあったからテイムされることには抵抗がなかったそうだ。
「だから、今のところただの犬だよ。見た目は」
「中身はぶっちぎりちゃうけどな」
「それを雪ちゃんの家族は・・・」
「知ってるわけないだろ」
「だよなぁ」
「まぁバレても大丈夫大丈夫」
「なんでだ?例の『催眠術』があるからか?さすがにそれは・・・」
「いや、ダメだったら雪ちゃんごと俺が引き取ろうかなって」
「ハァ!?」
「また幼女増やそうとしてたんか」
「違うからな?」
そもそも、彼女を引き取るのだって雪ちゃんの希望なのだ。
確かに、条件的には難しいが、俺だってその条件を満たすことは出来る。何度も言うが、面倒なのは間違いない。
雪ちゃんは友達がいない。単純に、人間と触れ合った経験だってそんなにないんだ。
だからこそ、雪ちゃんはフミやニホリを受け入れられたのだろう。そして、彼女達と友達になりたいと望んだ。
「なんでかは聞いてないけどな」
「・・・なるほどな」
「そんなわけで、本人たちの希望もあったし。そういう形にした」
「せめて前もって相談くらいしないか?」
「しようとも思ったけど・・・」
「思ったけど?」
「なんか、あの二人見てたらなぁ。一緒にいることが正解な気がしてさ」
「強行したと」
「そういうこと。実際、大きな問題はないんだからいいでしょ」
「大問題なんだよなぁ」
今回の件は、俺のわがままでこうなったと言ってもいい。相談して、俺のところに持ってくることはできたのだから。
「まぁなんかあったら言ってよ。今回のは借り一ってことで」
「・・・まぁその辺が落としどころか」
「あ?」
「いやな?こちら的にも悪い話じゃなかったんだ。少し面倒だが」
「・・・どういうことだ」
「まず、彼女の持っている知識、そしてスキルの効果でこの先一気に研究が進むだろう」
「まぁ元々その目的で探したみたいなところあるし」
「そしてもう一つ。雪ちゃんのことだ」
「・・・雪ちゃん?」
「彼女、実はちょっと厄介なことになっててな」
「・・・何があった」
雪ちゃんは、世界で初めてダンジョンから手に入れた薬。通称ポーションを使った人間だ。
それも、重病だった体が完治し、体質の改善までされている。その結果は、世界中どこにもないデータだ。
「データの提供はしてるが、本人の身柄をよこせとまで言ってくる連中もいる」
「俺と一緒か」
「ある意味では、お前より酷いな。なんせ、雪ちゃん自体は無力だ。いくら父親や祖父が力を持っててもな」
俺の場合、何かあったら俺自身が暴れる。その結果はまさに大惨事だろう。
「つまりなんだ。雪ちゃんを無理やりさらおうとしている連中がいるってことか」
「あくまでもいるかもって段階だけどな。今回お前と一緒に居させたのはそれを確認するためでもある」
「・・・変な気配はなかったぞ」
「らしいな。こちらでも護衛はつけてたさ」
「藤岡さんたち?」
「知ってたのか?」
「姉ちゃんがいない分逆にわかりやすかったよ」
俺の気配の感知範囲と藤岡さんたちではまだ差が大きい。俺の場合、なぜか五感の伸びがいい分ありえないことになってるけど。
気がついたのはパンケーキの店に行った時。あの瞬間に三崎さんの気配が漏れ出た。そこでちょっと集中して探ってみたら大正解ってわけだ。
「姉ちゃんは家でぬか漬けの面倒を見てた」
「まぁ・・・あいつはどっちにしろ不向きってことだったんだけどな」
「それでいいのか姉ちゃん」
俺は順調に脳筋に進む姉ちゃんが心配です。主に嫁の貰い手的な話で。
「じゃあ。雪ちゃんの護衛替わりになると」
「そうなる。お前でも勝てないんだろう?十分だ」
「ああ、うん。そうっすね・・・」
「・・・待て何隠してる」
「いや、本当に誘拐犯とか来たら、犯人たちは可哀そうだなって・・・」
「本当に何があった!?」
彼女の本領は、戦うことではない。ただし、ある条件付きで凶悪さは一気に増す。
俺も受けたあのスキルだけじゃないってわけだ。
「ちなみに俺は、時間が経つほどに感覚が死んでいく結界を受けた」
「なんだそのえげつないスキルは!?」
「直接的な殺傷性能ならフミだけど。結果的に必ず殺せるって意味なら負けてないんだよ」
言ったじゃんか。俺じゃ勝てないって。
領域に踏み込んだ瞬間に全身にかかる重力が増えるとか、方向感覚が狂うとか、最悪催眠術とか。
「本当にどうやって勝つんだこれ」
「スキル使われる前にドーン!!」
「でもスキル使用しながら移動できるんでしょ?」
「移動ってまさか・・・」
「yes。結界とか言いながら正確には本人を中心とした領域の展開だから本人が動けば影響範囲も動きます」
「なんだそのチートは!?」
本当に、最強のボディーガードだよ彼女は。
「でも、フミってそれより強いんでしょ?」
「まぁ、大体の妨害受けてもどうにかできるしなぁ」
「お前も大概だわ」




