104話
果たして人間キャラ増やして場面増やせるのかっていう疑問とは常に戦っております。
今日も昼分一話。夜分一話です。
「ちょっとやってみたいんだけど」
「ちゅ?」(モグモグ
「分身してくんね?」
「「「「ちゅ」」」」
「その状態で俺の周りに」
「「「「ちゅ」」」」
「・・・あ、これいいわ」
ねっさんが回りにいて温かーい。
「・・・なにしてるんだ?」
「・・・見てわかろうなのだ」
「・・・温まってる?」
「大正解なのだ」
ねっさん×40体によるネズミ布団的な状態。
くっそいい。柔らかい。
「ぷにぷにする~」
「頭とろけてんな?」
「かれこれ2時間はこの調子やでぇ」
「おお!?」
「ちな、最初に言っておくと初めからいたよ」
人間形態でニホリの服作ってるけど。最近買った手編みグッズを広げながらこれはこれでくつろいでいる。
作ってるのはセーター。ぶっちゃけニホリは人形になれば寒さ関係なくなるんだけど、人型だと寒いだろ!と一着編んでいる。
まぁ普通にニホリ用の暖房着はあるんだけど。俺のはすでに貰っている。
「親父たちはみんなの後らしい」
「まっててなぁ」
「いや、俺のは母さんが編んでるしな」
「ああーそういやそうか」
「あら?そうなん?」
「割と毎年恒例」
「あら~。なら作らん方がええかね」
「まぁ任せる」
「好きにしたらいいんじゃい?」
「とりあえずお前は一回ねっさんたちどかさないか」
ちゅちゅ~と一斉に消えていく。分身だから動く時は消えるだけでいいからだいぶ楽だ。ねっさんが。
本体は俺のお腹の上に乗ってるけど。どかないの?
「ちゅ~」
「・・・じゃあこのままで」
「なんでだ・・・」
「話はちゃんと聞かなあかんよ~」
でも俺が動物と触れ合ってない状態てすごく違和感ない?
「風邪でも引いたかと思う」
「気でも触れたんちゃうか?」
「信頼が厚い」
この方向性の信頼でいいのかいささか疑問に思わんでもないけどな。
「それで?わざわざ俺の部屋まで来るって何さ」
「・・・ああ、用があったんだ」
「だろうね」
そうじゃなきゃ来ないでしょうよ。
大体用があっても一階のリビングで話すから来ることもほとんどないけどな。
「ほれ」
「おん?・・・なんで手紙?」
「俺も部屋に行くついでだからなー」
「おお。それが手紙なんか」
「そうだけど。俺に手紙って・・・」
ていうか今のご時世手紙送ってくるってなんだよ・・・
とりあえず、宛名を確認してみる。
「・・・マジか」
「ん?どないしたん?」
「・・・いやね?うん」
「どったの?」
「親父は宛名見た?」
「見てないが・・・誰だったんだ?」
「・・・雪ちゃん」
「うわぁ」
「誰?」
フミの知らない人であることは間違いない。
そもそも、俺だって直接会ったのは一回だけだし。
会ったのはまだ全然みんながいないときの事だ。いたのは・・・ふーちゃん?までくらいか?
ポーション?が手に入った時の事だ。ていうか、いろいろ試していた段階のあれを使った唯一の人間・・・らしい。
いろいろあったのはそうなんだが、ピッちゃんの家とかくれた社長さんの関係者の人ってことしか知らない。
もしかしたら娘さんかもしれないし、違うかもしれない。
「その辺はしーらない」
「へぇ~。ちなみに、それって何色やった?」
「赤」
「ええやんか~。やっぱり恭輔は運がええんやなぁ」
「いい方なのか?」
「せやねぇ。上から三番目やで」
いいんだろうかそれって・・・・
いや、浅い階層でそれを出せるってことはいいのか?
「それで、結局その手紙はなんなん?」
「ん~基本は日常をつらつらと書いてる感じ」
「ん?普通やんか」
「これを見ても同じことが言えるか」
封筒から紙を取り出す。そこにはなんと、10枚を超える紙が。しかも全部文字びっしり書いてある。
「・・・うわぁ」
「これだからな・・・」
そろそろ年越しだから送ってきたか。そうじゃなくても一月に一回送られてくるけど。
「ほら、見てみろ」
「・・・恭輔様って書いてあるんやけど?」
「それだけなら、まだいいな」
「・・・これラブレターいうやつやないの?」
「そうだった方がまだいいわ」
最初はいたって普通のお手紙。日頃の様子や、最近あったこと。そんな感じに普通の手紙だ。
ただ、進みにつれてだんだん怪しくなってくる。お慕いしておりますなんて序の口だ。
直接会ったのは一回きりだけど、明らかに俺に執着してた。手紙の内容もなんかこう・・・言葉にしにくいが重い。
「重い・・・」
「何したらこうなるんや・・・」
「割と初めからこうだったよ。なぁ親父・・・いない」
いつの間にいなくなったよ。
いや、まったく思い当たることがないわけじゃないのだ。
そもそも、雪ちゃんは病弱だった。ポーションの段階で大体わかるだろうが、それはもう病弱だった。
元々長くは生きられないと宣告されており、医者もさじを投げている状態だった。
俺がポーションを手に入れた時には余命数日とかそういうレベルだった。
本人もすでに生きる気力を失っていた。親や周囲に迷惑をかけるだけの自分は、いなくなった方がいいと。
そんな時に、俺がポーションを手に入れて、研究所に全部送った。正確には一本残してあるけど。
実のところ、そのポーションが使われてたのを知ったのは雪ちゃんに会う前の日とかの話だったんだけど。
俺が直接雪ちゃんに会ったのは結構元気になった時の事だ。どういった子なのかは前もって聞いていた。
そこで会った雪ちゃんは・・・
「既にこんな感じ」
「そらそうなるわな」
「やっぱり?」
「命の恩人やしな。かわいい子なんやろ?」
「・・・まぁ可愛い?」
「なんや歯切れの悪い」
「だってなぁ・・・」
「・・・なんか、言いづらいことあるんか?大体ならどうにかできるで?」
「うん。そこについては後で聞くけどさ」
そこでちょっと思い出してほしいのは、俺とフミが二人きりで話した雪の日だ。
俺はそもそも、人間から向けられる好意が無くなるのが怖かった。だから今までそういった感情とは縁遠かったし。そもそも、そういう経験はなかった。あったらもうちょい簡単にフミの事を受け入れられたと思う。
だが、雪ちゃんは俺に・・・自分で言うのもなんだがかなり好意を向けていると思う。
あれ、経験あるじゃんとお思いのそこのあなた。
「雪ちゃん・・・10歳」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・そういうことだ」
「・・・うわぁ」
流石に10歳の女の子から好意を向けられても・・・ねぇ?
「ん?ちょいまち」
「あい」
「10歳の女の子にここまで言わせる・・・?」
「・・・雪ちゃんは病弱でずっとネット少女でな?」
「あ・・・」
「ま、まぁ今まであんまり他人と話したことなかったみたいだし!」
「お、おう」
「友達との距離感がわかんないんだよ!!」
「・・・せやな!!!」
とりあえず・・・返事書くか・・・
おまけ
「そういや、なんで手紙なん?めーるでもええやないの」
「これの方が私の気持ちが乗せられるんですって」
「・・・なんか仕込まれとる?」
「10歳だから流石に・・・」
ないと信じたい。そんな日もある。




