103話
夜分一話です。
「・・・!!」
「まぁ広いわな」
22層だしな。
ユニちゃん初ダンジョンとふーちゃんの戦力確認、これらを兼ねるいい感じの階層だとここしかないんだよね。
みんないれば違うところでもいいんだけど、戦力的に捕まえられたのはすらっぴだけなのだ。
「ぴ!!」
「!!!」
「ぴ!!」
「!!!」
「元気やねぇ」
「いや元気すぎ」
「「「「「メェェェェェェ」」」」」」
そして仲良くなるの速すぎ。
ここの羊ちゃん達はなぜか攻撃してこない。これはフミ曰く、ある条件を満たすと攻撃が来るとのことだった。
まぁ羊ちゃん達とは結構仲良くなってるし、もう攻撃できない・・・初めからできてなかったけど、戦うのは論外なので絶対にその条件は満たしません。
あ、条件は、平原の草を燃やし尽くすことだ。ようするに、あの炎骸骨をここに引っ張ってくると大変なことになる。
「じゃ、護衛よろしくな」
「はいなぁ」
「ふーちゃんは俺とな」
「クゥ♪」
そんなわけで、護衛のフミ、護衛兼遊び相手のすらっぴを平原に置いて行って俺たちは海の方の洞窟へ。
なんか同じ炎で相性よくなさそうだけど、最悪俺一人でも倒せるし、フミのお墨付きでふーちゃんも倒せるって聞いてるから、あくまでどんなものかを直接見るだけだ。
「■■■■■■■■■!?!?!?」
「うわぁ」
「クゥ・・・」
火を纏っているはずの骸骨が燃えている。正確には、火ごと燃えている?って感じだ。
ともかく、効きにくそうなものなのにむっちゃ効いている。
骸骨の纏っている炎は赤色何だが、今のふーちゃんの魔法は蒼い。蒼炎ってやつだ。かっこいい。
そんなわけで、まぁ燃えている様子がわかりやすいことわかりやすいこと。
フミのお墨付きはこういうことか・・・こりゃ楽勝だわな。
「でも、やっぱり火力上がってるな」
「クゥ?」
「ほれ、倒すまでの時間が速いだろ。俺とすらっぴとバトちゃんが一斉に攻撃すればこれくらいか?」
「・・・クゥ!?」
「そうそう」
元々火力は高かったのだ。そら強化されればこうなるか。
でも、本来見たいふーちゃんの強化はこういうことじゃないんだ。
「さて、どうせならここで見るか」
「クゥ!」
「とりあえずは出来るだけやってみてくれ」
ふーちゃんの欠点ともいうべき点は、応用力だ。魔法を変わった形で使うことが苦手なのだ。
火の玉を浮かばせたり、火炎放射みたいな感じに使うことは出来るんだが、それ以外ができない。
俺ならゴーレム、すらっぴは『溶解液』との同時使用。しーちゃんは雷を束ねて光線を撃つ。そういった特殊な攻撃ができないせいで、火が効かない敵だと活躍しにくいのだ。俺たちは効きにくい敵でも別の形で魔法を使って丁寧にゴリ押す。
そんなふーちゃんの応用魔法。今回は新スキル『変化』との同時に使う物のようだ。
この『変化』は、なんとなくわかる通りのスキルだ。フミもこれで姿を変えているらしい。
まだふーちゃんは人間にはなれないし、させる気もないんだけど。もふもふ減るし。
おっとそうじゃないな。まぁそれでも、簡単な物ならできるわけで。
「クゥオ」(シャキーン
「おお!かっこいい!」
しっぽを刀に変化させてそれに火を纏わせている。魔法剣的なやつや!
「でもこれちょっと違くない?」
「・・・クゥ」
「ああ、やっぱり」
ふーちゃん曰く、思いつかなかったんですですって。
まぁ覚えたのさっきだし・・・今は仕方ないわな。
「でも、これができるなら他のもできるようになるって」
「クゥ!」
「ねっさんみたいなの?・・・あれかぁ」
要するに『分身』して突撃させて『爆発』させたいと。似たようなことは出来そうだけどさ。
「どっちだって言うと、俺のゴーレムに近い?」
「クゥン?」
「いや、炎で何かしら形を作って動かすんだろ?俺じゃね?」
「・・・クゥ♪」
「そっちの方がいい?愛いやつめ~」
「クゥ~」
ウリウリ撫でながら帰ろう。ユニちゃん達も待ってるでしょ。
・・・それにしても、やっぱりしっぽ三つだといいなぁ。
「ただいまー」
「クゥー」
「あら、早かったやん」
「ぴっぴー!」
「!!」
「「「「「メェ」」」」」
「いや本当に仲いいなおい」
おかしい・・・ここ来たの30分くらい前なのにおかしい・・・ユニちゃん、実はコミュ力が高い?
なんか、ユニちゃんとすらっぴの周りに羊ちゃん達が座っている。
なんかいい感じにくつろいでいるのだ。フミは外側で持ち込んだシートの上で座ってお茶飲んでるけど。
ん?あれ?
「・・・しーちゃん?」
「めぇ」
「なに混じってんだ」
一匹だけなんか見覚えがある・・・というか、明らかにダンジョンモンスターがつけていないスカーフを巻いている子が一匹。
しーちゃんが普通に羊ちゃん達の群れの中にいたのだ。何してるの?
「めぇ」
「え、ご飯?・・・あ、お昼の時間か」
そういや急だったから時計つけてなかったわ。てか、もうそんな時間か。
家出たの10時くらいだった気がするけど。
「そら、すらっぴ君捕まえるのに時間かかったからなぁ」
「ぴ~ぴ~ぴ~」
「あ、これ煽られてる」
捕まえてもみせねば。水まんじゅう。
「ぴっぴ!」
「甘い」
「ぴ!?」
うちの庭では出来なかったが、ここではあんまり環境に気を使わなくていいので容赦なく魔法で囲う。
もちろん完全に囲むんじゃなくて、すらっぴの身長と同じくらいの高さにして進むのを止めるだけだ。それだけでも、一瞬止められるので捕まえるのは容易い。
「ほれほれ~」(モミモミ
「ぴえんぴえん」
「また聞いたことない声を」
でもまぁ気持ちよさそうだしいいか。あ、ふーちゃんもやる?
「クゥ」
「めぇ」
「そっちか」
しーちゃんの毛の中にダイブしてた。
「・・・フミもやる?」
「ぴえん」
「むしろ、うちのこと触ってほしいなぁ」
「じゃあ狸モードで」
「ぶー」
ぶーって。ぶーてあんた。子供か。
でもぶーぶー言いながら狸モードでこっち来るのでそれでもいいのだろう。
ん~。やっぱり、ふーちゃんと違う感触が良い。ふーちゃんはふさふさで、フミはちょい固い。しーちゃんはどこまでもクッションみたいだよ。
「これがええんにゃろ~」
頭を俺の腹に押し付けてきてしっぽは俺の手に当てる。
甘えてくる仕草と毛並みの良さを同時に体感できる非常に得点の高い媚具合だ。ふーちゃん達は基本されるがままなこと多いしな。
フミの毛並みを味わっていると、ふーちゃんが俺の横っ腹に突撃してきた。
「クゥ!」
「うぼあ」
「あら?」
「クゥゥゥ」
何故かフミに負けじと俺に体をこすりつけてくるふーちゃん。フミもそれに合わせて時々肉球で軽くパンチしてくる。
「なるほどここがそうか・・・」
天国はここであったか・・・
「やっといてなんやけど、どんだけ好きなん?」
「どこまでも」
「うちとしてはもうちょい別の評価が欲しいなぁ」
「クゥ」
「お前らが可愛いのがいけない」
「・・・それを人間の時に言うてほしいわ」
「む、じゃあもっとお腹撫でてあげよう」
「ちょ・・・!!」
「クゥ!!」(ペチペチ
「ほいほい。ふーちゃんもなー」
「クゥ♪」
今考えたら、フミもある意味ふーちゃんだな!『変化』もお揃いだな




