95話
昼一話夜一話です
「なぁんかどっと疲れたぞ・・・」
「ぴー」
「き?」
「いやなぁ。なんというか・・・」
完全にばあちゃんに振り回されたというか、じいちゃんも相変わらずパワフルだし。
親父はよくまだ飲んでられる・・・いや、親父だしな。
飲めや歌えで大騒ぎ、しまいには近所の人も来たので軽い宴会状態。
時間はもう10時を過ぎているんだが、一部の人はまだ飲んでる。
俺はニホリもいるし、先に寝室に避難してきた。たぬこ(仮称)は台所で皿洗いとかしてたけど、そろそろ来るだろう。
「ていうか、あいつちゃんと家事出来るタイプだったか」
「ワン」
「結構手際もよかった?マジか」
どこで覚えたんだが。
ニホリも驚いていたが、本当にうまかったか。
「得意料理は肉じゃがってとか思ったけど。普通にうまかったもんなぁ」
「ぴ!」
「きき?」
「うん。時間ないわりにちゃんと味がしみ込んでてな」
「ワフ」
「え、魔力が動いてた?・・・いつ見れるようになったの?」
「・・・ワン」
「ああ、あいつに教えてもらったか」
ちょっと言いにくそうに、教えてもらったと言いながら顔を軽くそむけるコロちゃん。
俺に気を使ったか。
「別に俺も嫌いってわけじゃないんだぞ?」
「??」
「ただ。なんとなーくだな。お前らと違うってのがどうにも」
「ぴ~」
「絶対あいつには言わないけど、確かにあの姿は俺の好みドンピシャなのよ」
「き!」
「ぴぴ!?」
「ワン!」
「なんでちょっと嬉しそうなの君ら」
え、その年でまったく女っ気がないんだから心配にもなる?
そんなこと言ったらお前らもそうだろ?
ペットだからいい?それありか。
「まぁ確かに?コロちゃんからしてみればそんなこと話す俺は初めてか」
「ワフー」
「俺だって一応性欲はあるわ」
ただそれ以上にお前らが好きなだけでな
「・・・クゥン」
「わかっとるわ」
自分たちとは番いになれないよ?なんて知ってるわ。てかそういう意味じゃないわ
「知ってて言ってるでしょ?」
「・・・ワン」
「ぴ!」
「きー」
「あ、話逸らした」
すらっぴ達に、お前らはどう思う?じゃないよ。
完全に分が悪くなった時の動きだったぞ。
「てか何。君ら的には歓迎なの?」
「ぴぴ~」
「き~」
「ああ、そういう感じか」
モンスターな観点なのか、強い存在と一緒になるのはいい事だと。それに俺を思ってくれているのには違いない。とのこと。
まぁ確かにその視点で言うなら間違いなくいい人・・・?なんだろうな。
俺を思うってのは・・・どうも違和感抜けないけど、
「なぁんか。俺じゃなくてもいいんじゃないかなぁとか思ったりしてます。はい」
「ぴぴ?」
「いやだってなぁ。俺に興味を持ったというより、人間に興味を持って、そのとっかかりが俺だろ?」
「ぴ~」
「話し方的にそんな感じだと思ったんだよ」
かなりネガティブに見た考えだが、あながち間違ってないんじゃないかと思う。
俺を見始めた理由だって、俺の魔力が一番強かったから。なら、俺より強く、興味深い存在が出てきたら?
「そう考えると、どうもなぁ」
「・・・ぴ?」
「考えすぎなのはわかってるけど。こればっかりはなぁ」
まさか自分がこんなことで悩むとは思わなかったが。
「ぴ?」
「はは。確かに、独占欲強いかもな」
どこでそんな言い回し覚えたんだか。
「今でこれなんだから、お前らがいなくなったらどうなることやら」
「・・・ワン」
「ぴ!」
「きき!」
「・・・はは。ありがとな」
死ぬまで一緒にいる。今はそう言ってくれるだけでうれしい。
「ちょっとトイレ言ってくるわ。先に寝てていいぞ」
「ワフー」
「ぴ~」
「き~」
俺たちの寝室からからちょっと離れたところにトイレはある。ちゃんと水洗式のやつな。
その間の廊下は親父たちが飲んでいる部屋からは遠いが、賑やかな声が聞こえてくる。
外では、再び雪が降り始めた。明日も積もりそうだ。
「それで、いつまで隠れてるんだ?」
「・・・よぉわかったなぁ」
「そら、あんだけ近くにいたんだ。嫌でもいろいろ覚える」
匂いもそうだが、魔力の流れ、存在の大きさ。これだけわかってれば、気配を隠してても大体わかるものだ。
「立ってるのもあれだしな」
「ここは暖かいで」
そういって指さされた場所に腰掛ける。
廊下の途中にある部屋だが、小さい部屋だ。昔、俺の小さいころの写真が飾ってある。
部屋には写真と机とソファがある。
そのソファに二人で並んで腰かける。
「それで?ドっから聞いてた?」
「全部やな」
「そっか。全部か」
「・・・あの。恭輔?」
「ん?」
「うちの事。怖い?」
「・・・逆に聞くけど。俺の事は怖いか?」
「怖いわ。すっごく怖い」
「なんでだ?」
「・・・あんたは人間や。間違いなくそのはずなんや」
「・・・」
「でもな?見れば見るほど。あんたがわからなくなるねん」
「・・・だから。俺のそばにいようとした」
「そうや。あそこの子たちに何かされたない」
「俺程度なら、殺すの簡単だろ」
「そう思ってたんよ。直接見るまではな」
こいつは、大体俺の目の前に立たない。立ったのは一度だけ、ダンジョンんの中で話したその時のみ。
「恭輔のことを好いとるんわ本当やで?」
「わかってるよ。そこをわからない奴じゃないのはわかってるだろ」
「ふふ。せやったなぁ。君はうちらの事をよーく理解できる人や」
「・・・俺もさ。お前が怖いよ。どうやったって勝てる気がしないんだもんな」
「変やねぇ。お互いに怖がっとるんやもん」
「本当にな」
こういうものなのだろうか。この関係は、どういったものなのだろうか。
「俺さ、むっちゃ友達少ないんだよ」
「そうなん?」
「知らなかったのか?」
「うちが見始めたのはダンジョンが出てきてちょい後くらいやしな」
「ああ、そうか。まぁこういう感じだからな」
俺に確かに友人はいるのだ。ただ、そいつらは俺が動物と話せるってことを知っている。
ていうか、それを知ってて話しかけてきたやつらだし。
「それ以外の連中は、基本的に遠目で見てるだけ。だって不気味だろ。動物と話せるなんて」
「・・・」
「俺はさ、独占欲が強いんじゃないんだよ」
俺は、誰かが俺から離れていくのが嫌なんだ。
「だから俺はお前が怖い。強くて、いつでも俺から離れていきそうなお前が」
「・・・そっかぁ」
「幻滅したか?俺は、こんな人間だよ」
どれだけ強くなっても、知識を増やしても、どうしても、これだけは変わらなかった。
友達ができても、家族が増えても、守るべきものができても、何一つ変わることのなかった。
「ほんと。嫌になるなぁ」
「・・・だから、ダンジョンに行きたいん?」
「どうだろ、そこは趣味だし。人とかかわらなくていいって言うのはいい所だな」
「ふふ。なんやそれ」
「ダンジョンに入って、研究所の連中とは話すけど。あれはみんな頭おかしいから」
「あかんでぇ。そんなこと言うたら」
「わかってるよ」
「・・・なぁ?」
「なんだ?」
「うちが言ったこと、覚えてる?」
「もう帰るん?」
「そこやないわ」
「最初じゃん」
「いや最初やけど・・・」
正確じゃないけど、大体こんな感じだった気がする。後ろから驚かされたし。
「インパクトは大きかった」
「それやなくてぇ」
「流れ的に告白されたやつ?」
「ほんまいけずやな」
「そういう性分なもので」
ひねくれたのも友達が少なかったからかな?
「もう。まぁええわ」
「それで?」
「・・・あの時言うたんわ。本気やからな」
「・・・わかってて言ってる?」
「もちろんや。伊達に強くないでぇ私」
「関係ないだろ。・・・でもそっか。本気か」
テイムはしていない。だけど、近くにいると感情が伝わってくる。
本気なのだ。間違いなく、俺の事が好きで言っているのだ。一時の感情でなく、本気で考えて出した結論なのだ。
「俺の事怖いのに?」
「せやけど、見たときから好きになってしまったんやからしゃーないやん」
「・・・それ聞いてないぞ」
「あれ?・・・あ!ちゃう!今のなし!」
「くははは。マジか。そうだったかぁ」
「ちゃうねん!」
「なーに悩んでたんだか俺は。ハハハハハ」
「うー//」
ニホリみたいになってんぞこいつ。
でもそうか、ひとめぼれか。じゃあ俺があーだこうだ悩んでたのは無駄だったわけだ。
「・・・なぁ」
「うぅぅぅ」
「お前の名前、今決めていいか?」
「あうぅぅ・・・へ?」
「名前。決めていいか?」
「へ?あ?はいぃ」
「なーに力抜けてんだ」
「だってぇ」
「悪かったて」
「うぅぅ。ええ名前つけへんとぶっ飛ばすで」
「おお。怖い怖い」
こりゃちゃんと考えなきゃな。
「お前の名前は・・・」
ポーン
『■■■■のテイムに成功しました』




