94話
夜分一話です。
「るーるー」
「にゃぁ」
「お、毛づくろいだ」
じいちゃん家二日目。てか、ばあちゃんが帰ってきて二時間後くらい。お土産はちゃんと渡せたそうです。
そしたら、何故かあった猫専用とシールが貼ってあるブラシを使ってピッちゃんがふーりんちゃんを毛づくろいしてた。
「ていうかそもそも、ふーりんちゃん毛って概念があるの?」
「・・・る?」
「わからんでやってたのか」
「・・・にゃ?」
「お前もかい」
さっきの気持ちよさそうな反応はなんだったのよ。
「に」
「他の猫?・・・この辺の動物は雪ってものをなんだと思ってるんだ」
どうもさっきまでばあちゃんが猫に対してやってたのをピッちゃんと見ていて、それを真似していたらしい。
でもここ猫飼ってないんだよね。そうなると野良猫になるんだけど。外、雪でいっぱいなのにどうやって来たんだ・・・
「るー!」
「は?軒下?」
そういわれたのでちらっと覗いてみると
「「「「「・・・・・にゃあ」」」」」
「いや多い多い」
この付近の野良猫皆来てるんじゃないか?
「みんな飼い猫なんだよ」
「ばあちゃん」
「るー!」
「あらあら」
いかにも田舎のばあちゃんって感じのばあちゃんだが、まぁ元気な人だ。腰曲がってないし。
そんなばあちゃん。俺の先生なだけあって偉く動物が寄ってくる。この猫たちもそれだろう。
「なぜうちに」
「どうも寒いらしくってねぇ」
「・・・いや、どこも寒いでしょ」
「それが、そうでもないみたいでねぇ」
「うん?」
「触ってみな」
「どれどれ」
猫の近くの土を触ると確かに温かい。ここは雪に触れないからその差であったかく感じているのかとも一瞬思ったが、明らかにここだけ温かい。
何だろう、下にお湯でも通ってるのか?
「なんだこれ」
「る?」
「触ってみな」
「・・・るー!」
「にゃ?」
「にゃー」
「にゃん!」
「・・・増えた」
ふーりんちゃんが猫の一団に加わったぞ。
「いや、明らかにおかしいでしょ」
「でも、別に悪いことじゃないしねぇ」
「なんかあるかもしんないじゃんか」
「ないでぇ」
「おおおおおお!?!?!?!?!?」
俺の後ろからすぅーっと現れて一言残してニヤニヤする。気配が全く読めないから後ろから来られるとむっちゃ驚くんだよ
「てか後ろから来るなよ!」
「うん?うち、ちゃんと声かけたで?」
「る」
「「「「にゃあ」」」」
「は?え、いつの間に?」
「さっき、地面触って考え込んでるときやなぁ。無視しておばあさまに話しかけるとは思わんかったけど?」
「うわぁまじか。ごめん」
「ええってええって。それだけ真剣やったんやろぉ?」
だからニヤニヤするのやめい。ばあちゃんもなんで、あらあらみたいな反応なんだよ
「ええい、やめやめ。それで、なんで大丈夫って言いきれるんだ?」
「だってこれ、うちがやったやつやし」
「うし終了お疲れー」
「ええ~。詳しく聞かんのぉ」
「聞いても理解できないだろうし」
「ダメでしょう恭輔。女の子の話はちゃんと聞かないと」
「ばあちゃんにはこれが女の子に見えるのか」
いや、確かに見た目は女の子だけど、しっぽあるじゃない。
「・・・?」
「なんでそれくらいみたいな反応するん?」
「なんというか、流石恭輔のおばあちゃんやな」
「自分的にはこの扱いはどう思うの?」
「うれしい♪」
「左様でっか」
モンスターなのに女の子扱いでうれしいのか。うーん・・・
「お前って元々その恰好だったのか?」
「え、ちゃうけど」
「なんだそれで喜ぶんだ?」
「だって今のこの格好はぁ、うちが一生懸命頑張った証やもん」
「何をがんばったんだ?」
「まず、うちら人間なんて基本見ぃひんし」
「ああ、言われてみれば」
でもピッちゃん達みたいな比較的人間的な見た目の子はいるじゃんか。
「ピッちゃんは人間的にかわいい部類だと思うんだけど」
「うーうー///」
「ほら」
「いや、何も人間見始めた時期からこうなりたい思ったわけじゃないんやけど」
「あら」
「恭輔を見てて、それで興味持ったのが最初っちゃ最初になるんかな」
「あらあらぁ」
「ばあちゃん?」
俺たちの話をお茶をすすりながら聞いているばあちゃんの反応がだんだん孫の成長を喜ぶ祖母のそれに。
「それで、よく見てた恭輔の好みをいろいろ考えてぇ」
「あらぁ!」」
「ばあちゃん!?」
なんかこの会話はすぐ切らないとだめな気がするぞ!?
「へいピッちゃん!」
「る?」
「にゃあ」
「なんで!?」
一瞬で無理じゃね?って拒否されたぞ。え、女の子の話はちゃんと聞け?
「その結果がこれやのに、あんまり受けよくないし」
「あら、なら押し倒しましょうか」
「ばあちゃん!?」
「・・・その手があったか」
「ないからな!俺基本みんなと一緒に寝てるからその機会はないからな!!」
なんでだろうか、こいつが来てから・・・違うな。ばあちゃんが帰ってきてから押されっぱなしのような・・・
「・・・結局ばあちゃんの誤解をとく暇もないまま終わったぞ」
「るるー」
「にゃあ」
「なら助けろよぉ」
お疲れさまーじゃないんだよ。
話を聞いて満足したのか、夕飯の準備か、ばあちゃんはサクッと中に戻っていった。
たぬこ(仮称)はそれについていったな。ニホリの声も台所の方から聞こえたし、たぶんだけど、夕飯の準備かな。
・・・ニホリはともかく、あいつって料理できるの?つい昨日までダンジョンにいたのに?
「うー」
「ん?なぁに?」
「う」
「いや、別に嫌ってわけじゃないんだけど」
「うー!」
「・・・まぁ確かにちょっとあれだったか」
たぬこ(仮称)の扱いについて、冷たすぎると怒られてしまった。
確かに女の子に対する扱いとしてはよくないな。それはわかってるんだが。
「なーんか調子狂うというかなぁ」
「う?」
「多分、人間なのかモンスターなのかの線引きが俺の中で微妙なとこにあるせいなんだけど」
あいつは見た目だけ見れば完全に人間だ。コスプレしてるって形にはなるけど。
だが、持っている魔力は間違いなくモンスター。それも化け物級に強い。そのせいで微妙にどう扱っていいかわからんのだ。
「う?」
「ピッちゃんは完全に庇護枠」
「う!?」
「だって見た目がなぁ」
ほら、完全に小人だし。可愛い系だし。別に小さい物に対してそういう感情が湧くってわけじゃないんだけどな。
「・・・よく考えてみると、最初から俺より強いのって初めてか」
親父やじいちゃんたちくらいなものだったが、それは親と祖父だったからなんか違う。
全くの他人で、完全に俺より強い存在。そんな存在に対して、扱いに困ってる?
「しかも、ああもあからさまに好意を向けられるとな・・・」
「うー!」
「お前らのとは違うんだよぉ」
愛っちゃ愛なんだけど、君らのは親愛だしな。家族に向けての愛情だ。
対して、あっちは異性に向けての愛。別にそういうのは・・・なかったなぁ。
まぁ自分の事だからわかるけど、これはいいわけなんだよな。本当の問題はそこじゃない。
「どっちにしろ後回しにしたい」
「・・・る」
「俺お前に言われるほどマズイのか!?」
ダンジョン生まれの妖精に哀れまれるってどんな状態だ!?
え、ダンジョンでもそういうのあった?その辺詳しく・・・




