ちょっとしたアドバイス的なあれ
「よく居るんだよなー。五感で必要の無いところは遮断すればいいと思っている輩がさぁ」
暴風雨のように吹き荒れる拳圧で動きを封じられ、ボウリングの玉が音速で体に当たったかのような衝撃でじわじわと瀕死へと追い込まれていく。
「戦闘において五感で必要の無いところは無いんだよ。視覚、触覚は言わずもがな。聴覚は大音量の音波攻撃や催眠術をいち早く察知して軽減もしくは遮断するために必要だし、嗅覚は鉄や人の匂いを感じ取ってあらかじめ設置された罠を回避するのに役立つ。味覚だって空気中に噴射された毒物を胃に入れる前に発見できるし」
「あまり実感がわかないな」
「分かった。じゃあさっきと同じ状況にして」
半信半疑ながらも俺は言われた通りに視覚以外の全てを絶った。
次の瞬間。急激に視界が歪み俺はブラックアウトした。
「ほら次」
二回目は唾を飲み込んだ瞬間大量に血を吐き出し、内臓から舌まで焼けた鉛を流し込まれたような激痛が襲う
「ほら次」
次は息を吸った瞬間にブラックアウト
最後は目の前に設置されたトラバサミに挟まれて終わった
「はい、何をされたか分かる?」
「…一回目は大音量の何か」
「そう、大きいな声を鼓膜目掛けて放ったんだ。君は反射が利かず鼓膜を通して脳まで大ダメージを負ってブラックアウトしたんだね。耳が聞こえいたら鼓膜が破れるか、ちょっと遅くても平衡感覚が狂うくらいですんだのにね。さて、二回目は?」
「…毒物?」
「そう、無味無臭の毒物を君の口に向かって噴射したんだよ。味覚があれば無味無臭だろうと違和感を感じ取れる筈なのにね。ちなみに三回目も同じ毒物。なんの躊躇いもなく吸い込んだね。ちなみこれ真緑色してたんだけどわかった?」
「?!?!」
「やっぱりね。じゃあ最後。なにこれ、こんな血で錆び付いたようなトラバサミも分からなかったんだ」
「……」
「一回失敗した事を改善しないからまた嗅覚につけ込まれて罠に引っかかるんだよ」
「……」
「何が言いたいかって言うと、五感を遮断しないといけないほど弱いままで居るなって事だよ。分かったように五感は重要なんだから、何にでも対応出来るようにしないとね。日本と違ってなんでも有りが普通なんだから」
「じゃあ再開しようか。五感は切らないで動いてね」