前置き的なあれ
現代の格闘技事情からすると、スタンドで殴れてマウントで上を取れれば他は50点でも勝てる。現に俺はストリートファイトはもちろんUFCでも負けなしだった。
相手に組み付きマットへ頭から落とすだけで一発ノックアウトも少なく無かったし、ストリートファイトに至っては硬いアスファルトへ頭から落とす技は命を奪いかねない程強力なものになった。
……しかし、俺が転生した異世界ではそうは行かなかった。
今まで鍛えてきたスタンドファイトは魔物や、武器を日常的に扱ってきた盗賊、冒険者には有効性が無く、組み付いての投げに至ってはレンガが敷かれた城下町以外では全て柔らか土や草がクッションになり一瞬の硬直すらさせれなかった。
そんな俺が最終的に行き着いた先は奴隷だった。
喧嘩騒動を起こし過ぎて裏稼業の奴らに捕まり拳奴として売られたんだ。
鉄のガントレットを両拳に巻き、布切れを腰に巻いて貴族や市民の娯楽の一部に成り下がった。
毎日殴り殴られ、蹴り蹴られ、噛みつき噛みつかれ、折り折られ……
折られた指を血の染み込んだ鉄臭い錆び付いたガントレットで固定してまた次の日見世物として相手を殴る。
そんな毎日が続いていくと、やはり体にも変化が現れていく。
拳は度重なる骨折と裂傷で岩のように、
肌は擦り傷や裂傷を塩で消毒してきたため分厚く裂けにくく、
足は闘技場の粗い砂をしっかり踏みしめれるよう内股気味に変形
と、俺は死ぬ55歳まで1日と休まずに拳奴としての責務を果たし、最後は歴代最多優勝者として闘技場の壁に名を刻まれた。