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状況考察

一日開いてしまった。

 まずは洞窟を調べてみよう。


 目の前の洞窟の裂け目、つまり出口からは光が漏れている。


 確実に外につながって入るけど、夜を待たないと外には出れないわね。


 高さは10数mってところだね。

 

 う~ん、この体なら登れる気がするから後回しにしないといけないっていうのが悔しいわ。


 後は……、何か役立つ物はないかしら。

 理想を言うならば何らかの設備を操作するスイッチや類や隠し通路がベストだけど、高望みしすぎね。

 せいぜい便利な道具類が見つかればいいや。

 そんな、軽い気持ちで辺りを見回したのだけど、現実は甘くはなかった。


 ちょっとした日用品の類から死体に至るまで、通路には何もなかった。


 うん?

 なんで通路に死体がないのかしら。

 普通なら逃走経路であるここに死体が転がっているはず、それがないってことは逃走防止用の何かがあったってことだね。

 

 だとすると、元来た場所に帰るのが怖くなる。が、虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。



 何より、あそこが最も怪しいのは疑いようのない事実だしね。

 


 そんなとりとめもないことを考察していると、元が一つの洞窟の中なのでやや大げさかもしれないが私は戻ってきた。

 改めて見渡してみると、逃走防止用の何かがあったことが確信できた。

 だって、そうでしょ。死体が円形に並べられてるんだもの。

 特に私が立っている場所は二番目くらいに死体が多い、ここが出口に近いからかしら。


 一番多いのは見るからに怪しいドームの周りだけどね。


 そっと、爪先を部屋の中へ。

 下手をしたら、いや、下手をしなくても、部屋に入った瞬間逃走防止用トラップが作動するかもしれないのだ。

 慎重にもなるわよ。

 

 それを二、三度繰り返したら、今度は体ごと部屋に飛び込みすぐさまでる。

 反復横跳びの要領だ。


 それを何度も何度も繰り返した私は、ようやく部屋に入る決心がついた。


 向かう先はもちろん、部屋の中でもひときわ異彩を放つドームだ。

 

「怪しいわね。

 怪しすぎて推理小説だと逆に潔白が証明されるレベルだね」


 だけど、現実ではそんなことは起こり得ないだろう。

 詳しく調べようと手を伸ばすと、


「イッ!!」


 指先に電流に似た刺激が走り、反射的に手をひっこめる。

 怪我はないが、痛い物は痛い。


 やはりというか、調査は一筋縄ではいかなそうだ。

 

 とりあえず、骨で触ってみる。


 触れる程度なら熱を発するだけ。

 強く押し付けると、骨がはじけ飛んだ。


 強度が足りないみたいね。


「もっと固い物はないかしら」


 あたりを見渡すと、壁際に大きな石があった。

 

 ピッチャをイメージし、全力で投げつける。

 

 気分は時速160㎞。


 正確な速度は分からないが、吸血鬼の贅力もあってか、我ながらほれぼれするスピードだ。

 だというのに、ボール()はあっさりと砕けてしまう。


「フフッ、フフフ、フフフフフッ」


 ―――おのれ、無機物の分際で。


 大切な何かがブツンと切れた。


 ボールがはじかれた、よろしいならば連投だ。

 石を集めた。

 これで補給体制は完璧だ。


「死ねぇ~~!!」


 次々と繰り出される剛速球。

 一つ一つが必殺。

 だというのに、壁はあまりにも硬かった。


 単純な威力では無理そうね。

 ならば――


「圧殺してやるわ!」


 土と骨で壁を作る。


「これならばはじけ飛ぶまい」

 

 ゆっくりと、だが、確実に穴をあけてやる!


 まぁ、結果は想像道理といっておきましょう。



「死ねッ‼」


 最後は、苛立ち任せにけりを放った。

 自分の体がどうなるかなんて一切考慮せずにね。






【少女悶絶中】 【少女悶絶中】 【少女悶絶中】






 怒りのあまりここが死地であることも忘れて結界の破壊を刊行してしまった。

 まずいわね。

 でも、逃走防止の罠が発動することはなかった。

 うん、これは新情報だね。

 考えられるとしたら、管理者に何かあったのかしら?

 これだけの死体をこしらえたのだ。

 儀式を遂行したのは全員が相当な気違いだね、間違いない。

 途中で自殺したり、仲間割れを起こしたとしても不思議じゃないわ。

 もしそうなら、考えられる限り最高の展開だね。

 

 だからそう、私がここに長居したのも、調査に多大な時間をかけたのも、ドームを破壊できなかったのもすべて計算道理だ。


 すいません、嘘です。


 理解した、無機物に当たり散らしても仕方ないと。

 疲れていたのよ。だから、こんな簡単なことにも気が付かなかった。

 

 違う、違うわよ。

 決して逃げたんじゃ……


 ハッハッハッハ、私ったらうっかりさん。

 テヘぺロ☆


 ドームを調べるのが無理とわかっただけでも良しとしよう。

 外から観察するに留めよう。


「他にも分かったことは、どこかに黒幕か協力者がいること。これは確実だね」


 ドーム中にあるのは白骨死体。

 外側にはまだ腐りかけの死体もある。

 

 ドームの死体は重要参考人。なのだが、犯人と断定するなら死亡推定時刻に矛盾が生じてしまう。

 つまり、ドーム内の人物が死んだ後も、人間を供給した真犯人か共犯者がいるはずだ。


 他に気になったのはドームの人が手に持っている本とマントね。

 地面に黒い煤? があって衛生状態最悪なのに妙に新しい。

 後はドームの周りに死体が多いことね。


 けれど、このドームは不可侵領域。

 絶対に暴き立ててやるといった知的好奇心が湧き上がろうとも後回しだね。


 なので、外周部を調査する。


 すると、先ほどがら探し続けたドームの操作スイッチらしきものを見つけた。

 部屋の四か所に、取り調べをしたドームと同質の守りで覆われたお札のようなものを。


 これを壊せばドームを調べられる気がする。

 何というかそう、ゲームのお約束的に。


 取りあえず石を投げつけ確認するが、中央のドームと強度に違いはないみたいね。

 

 それからも部屋を調べてみたがめぼしいものは何もなかった。


 分かった事をまとめると

1、私は吸血鬼。日光に触れると死ぬ。

2、どこかに、この惨劇を作り出した存在がいる。

3、部屋の中央に怪しいドームがあるが、調べることは不可能。

4、この部屋には生贄を閉じ超える為の装置があった。

5、手の届く範囲にドームの制御装置は存在しない。


 以上の五つが、調査の収穫だ。


 さて、これからどうしようか。

 

 いざという時、閉じ込められないように通路に座り込んで考え込む。


 すると、吸血鬼の聴力は侵入者をとらえた。

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