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光の中での攻防

 【Everything is laughing singing

  All the pretty flowers are springing

  See the kitten full of fun

  Sporting in the brilliant sun

  Children too many sport and play

  For it is a pleasant day】


 詠唱が進むにつれ魔力が高まる。

『冷静に考えればどちらが得であろうか』

 そんな中でも、エリスは眼前の情景を冷静に観察する。


 とるべき手段は二つ。

 突撃か、待つのか。


 つい先ほどまでなら、何も考えずに突撃しただろう。

『相手の狙いは二つだろうな。

 一つは遠距離攻撃。

 この場合、抱えているこいつの生還は絶望的。

 これまで人質に気を使っておったしな。

 恐らくは無いであろう。

 もう一つは待ちの戦法。

 こちらがもう一度、人質を放り投げ突撃するのを待っている』


 魔法を詠唱中の騎士の前には、シアノを含めた数人が警戒しているだけだ。

 突撃すれば何とかなりそうと思える。

 明らかな釣りだった。


『待ちの一択だな』

 そもそも、エリスは魔法をよく知らない。

 どんな現象か予想できないのは怖いが、今まで使ってこなかった。

 使えない理由があると予想していた。


『地形であろうか』

 これからする行為が高位力の物なら、洞窟そのものが崩れかねない。

『ならば、牽制以外の遠距離攻撃はないな」

 よって、向こうがくるしかない。

『それなら遠距離攻撃手段がない私には好都合だな』


 エリスは待つことを選んだ。


 そして詠唱が終わった。



 直後。

 ―――世界が光で包まれた。


「クッ!! 目つぶしか」

 エリスは人質を離さないよう、首筋に回す力を強めた。


 シアノは突撃する。


 仲間を傷つけないよう放たれた斬撃は、腕をこするように切り裂いた。

 エリスは攻撃を感知。

 即座に撤退。


 左右からも騎士が迫る。

 先ほど見せた高速移動によって。


 だが、エリスが踏みとどまった。


 エリスの視界は未だに閉ざされている。

 だが、それ以外の感覚はある。


 前方を蹴り上げた。

 確かな手ごたえ。

 その正体は人質である。


 これがなんなのか、エリスは知らない。

 空気の流れから足元に何かあると感じたから、反射的に動いただけなのだから。

 エリスが首筋に手を回したから、彼女の方に倒れこんだのだ。


 ただの偶然。

 だが、もたらした効果は劇的だった


 蹴り上げられた騎士は、シアノへ方に向かう。

 仲間の救援を優先。

 動きを止めざるを得ない。


 追撃していれば勝負は決していただろうに。

 

 双方が鎧をまとっている。

 ぶつかった瞬間。

 かすかな金属音が生じた。


「やばいぞ」


 エリスは敵の位置を把握。

 敵は真近に迫っていた。

 自身の命が風前の灯だということに気が付いた。


 こんな状況でも、エリスは前へと進む。

 防御や闘争ではなく、攻撃を選択したのだ。


『これ、俺死んだ』

 人ひとり抱えているので、視界は制限されている。

 その僅かな視界だけでも、シアノは絶望した。

 エリスは大きく前進。


『このままでは……、俺はこいつに殺されちまう』

 彼は土壇場でそう思ったのである。

 この少女には殺されたくないと。

 だが、その心配は杞憂に終わる。


 左右から迫っていた騎士が間に合った。

 とらえたのは左腕一本。


 シアノが付けた傷が動きを阻害したのだ。


 エリスは進路を変えない。

 勢いのままシアノへと向かう。


 とっさに、手刀から掌へと攻撃手段を変更した。


 理由は単純。

 手が肉に沈み、それを引き抜く時間のロスを疎んだのである。


 シアノは抱えていた騎士ごと数m吹き飛ばされる。

 爪で串刺しにしていれば、シアノは即座に復帰していただろう。

 エリスの爪も、鎧を着込んだ二人の人間を貫けるほど鋭くはないのだから。


 敵は右側。 

 そう判断し、反転。


 結果からいうと、悪手だった。

 突撃したメンバーは三人。


「これで、終わりだアアアァァァあああ!!」


 最後の一人に無防備な背中を見せたのだから。


「カヒュ!?」


 気道に穴が開いた。

 苦痛の呻きに空気が漏れ出る音が混じる。


 エリスは地面に崩れ落ちた。

 後はめったざしだ。


 これまでの恨みを晴らすかのように、剣が迫る。


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