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言い争い

 僕が教室に入った時点で言い争っていた。

 理由、と言うか話題は予想がつく。

「俺が」

「私が」

「僕が」

「あたしが」

 それぞれが口に出す。

 大方、C君のことを誰が殺したかということを、言っているのだろう。僕のクラスメイトは。

 つまり、誰がお金を貰えるかということを、言い争っているのだろう。


「俺が屋上から突き落としたんだ!」

「ちょっと、さっきから嘘言わないで!私がやったのよ!Cを屋上に呼び出したのも私なんだから!」


 いやいや、それ全部僕がやったから。

 絶対口にはすまい。

 こんな醜い争いに参加したくない。こんな人間と一緒にされたくない。

 人を殺すのにこの言葉は相応しくないだろうけど、敢えて使わせて欲しい。

 人を殺す勇気もないやつが、口だけで争うな。やってもないのに威張るな、と。僕のクラスメイトは、どうやらお金は欲しいけど行動出来ない人達らしい。じゃあ、お金も諦めればいいのに、と僕は思う。


「おい、僕君も言ってやれよ。俺が殺ったのを見てただろ?」


 A君が僕に言ってきた。

 クラスの人気者であるA君は、周りが協調してくれると踏んだらしい。さっきから、らしいとしか言えてないな、僕は。でも、らしいとしか言えないんだよね。なに考えてるか分かんないし、僕の憶測になっているのだからさ。

 さ、話を戻そう。

 A君が僕に話を振ってきたところだったね。


 それは卑怯だろ。まあ思うだけで口に出したら負けな気がするので意地でも言わない。

 だから僕は、濁した言葉で対応する。スルーする。聞き流す。


「みんなまずは、C君が死んだことを悲しもうよ。曲がりなりにも、クラスメイトだったんだから」


 …全然流してないな。むしろ煽ってる。


「は?そんなこと今、どうでもいいだろ」


 誰かは分からなかったけれど、確かに誰かが口にした。


 ほら、聞いたかい?

 これが、僕らのクラスメイトだ。人が1人死んでも、この反応だ。どうでもいい?そんなわけないだろ。殺した本人が言うことでもないけどさ。

 でもこれでも僕は悲しんでいる。

 C君が死んだことで、ではないけど。

 C君が九十九になったことで、だ。

 悲しんでいるし、嘆いている。


 だけど、それと九十九を殺すことは別問題だ。

 C君が九十九になったその時点で、C君は死んだのと同然だ。九十九はC君ではなく、C君は九十九ではない。

 九十九は九十九だ。


 けれど、僕のクラスメイトはそこをいっしょくたにしている。してしまっている。だから、C君が九十九になったことを悲しまない。嘆かない。どころか、どうでもいいとのたまう。


 君もああは、なっちゃいけない。

 九十九は九十九だし、人間は人間だ。

 あのクラスメイトも人間だ。醜い争いをしている、醜いアヒルの子よりも、もっと醜い人間だ。


 だから、僕はこう表現したんだよ。

 人間は九十九より九十九らしい、と。


 人間は、知らず知らずの間に人を傷付ける。知らず知らずに、人を死に至らしめる。九十九だってそうだ。九十九も、知らないうちに人を殺してしまう。自分の仕業だと気付かないままに。気付けないままに。


 人間は九十九よりそれが如実に現れる。

 例えば、いじめ。例えば、セクハラ。例えば、パワハラ。例えば、何気ない一言。例えば、ふとした行動。例えば、寂しげな笑顔。


 気付かない内に、相手を傷付ける。

 相手を死に追いやる。


 だから、あまり人と関わらない方が賢明だよ。僕のようにさ。ある程度で十分なんだよ。十二分なんだよ。


「Cを殺したのはこの俺だッ!」


 未だに終わらない争い。


 …言っとくけど、もう僕の口座にそのお金入ってるからね?そんな争いしてても無駄だよ?


 しばらくその争いを外野から眺めていると、担任の先生が教室に入ってきた。

 もう朝礼の時間か。

 この言い合いも終わるのかな?


 長かったなあ、まあ前の時よりはマシかな?

 君にはまだ言ってなかったね、前の時の話もそろそろしなければならないなぁ。その時は終わった話として聞いておくれ。ただの昔話としてさ。

 本当に酷かったんだよ、僕なんか殺されかけたからね。九十九を殺したやつを殺せばお金が手に入るって勘違いした人から、ナイフを突き付けられたんだよ?

 それただの人殺しじゃん、って心の中で突っ込んだよ。何でやねんってさ。

 幸い、僕には傷ひとつなかったけど。

 …あれ?かすり傷くらいはついたっけ?

 あんまり覚えてないや。なにせ怖かったからね。それに大分昔の話だから。


 おっと、そろそろ先生が口を開く。

 先生らしい言葉を期待しよう。


「ほら、みんな席につきなさい。朝礼をするぞ。C君のことで言い争うな。嘘はダメだろう?私がやったんだから」


 何故か、その言葉で静かになった。

 多分みんなそれを信じて、無駄だと悟ったのだろう。席に着き、さっきまでの言い争いがなかったかのように、普通でなんの変鉄もない学校生活へと戻った。


 それより、さっきあの担任は何て言った?

 私がやったんだから?


 絶望を通り過ぎて、呆れが生まれた。


 僕も1つ悟った。

 このクラスはどうやら担任を含め、全員が頭のネジを親のお腹の中に忘れてしまったらしい。


 …あぁ、もちろん。

 僕も君も含めてね。

この話と前の話を繋げようか迷ったんですが、分けることにしました。

区切りって大事な気がするので。

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