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 何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。

 何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。何回も。


 僕はただの肉塊になったそれに、先端の尖ったそれを振り下ろす。感情はまったく動かない。肉塊も動かない。

 赤い液体だけが、面白いほどに飛び散って僕の顔に張り付く。鉄のような匂いと、ベタベタと粘り着くような感覚が顔から離れない。

 だけど、それでも、僕は先端の尖ったそれを振り下ろすことを止めない。


 グシャッ、グチャッ、ベチャッ


 そんな音がこの部屋に充満して、外に漏れることはない。これがアパートだったなら、すぐに僕のこの行為は止められていたのだろう。一軒家だったのが、不幸中の幸い…いや、この場合不幸中の不幸だったのかもしれない。


 ふと、振り下ろす手を止めて横を見やる。

 肉塊がもう1つ。もはや原型すら分からないくらいになってしまっているけれど、原型がなんだとしても、もうどうでもいい事だ。その時の僕は本気でそう思った。

 どうせ、僕に未来なんてやって来ない。

 こんな事件を起こして仕舞えば、真っ当な人生なんて夢のまた夢だ。それもやっぱりどうでもいい。


 死のっかな、首でも吊って。下手をすると狂気じみた思考さえ頭に浮かぶ。

 やっている事は狂気をとうに通り越していたけれど、頭は意外にも冷静に働いていた。


 あーあ、この後僕は捕まるんだ。あれ?でもこれって人じゃないから捕まらないんだっけ?


 これとは、言うまでもなく肉塊のことである。元は人だったはずの、九十九だったはずの肉塊。


 だから僕は肉塊にナイフを振り下ろしながら、少し弾んだ声で、狂気じみたトーンで問う。


「先生、九十九は人間に入りますか?」


*************


 呼び出した方法は、好きに捉えてくれて構わない。下駄箱ラブレターでも、普通に呼び出したってことでも、その他の方法でも。それは重要ではないしね。


「いや〜、遠路はるばる悪いねC君。こんな屋上まで」

「それで、なんで僕君が僕を呼び出したんだい?前も言ったように、今はほっといてほしいのだけど」

「僕もさ、あの2人の弔いをしたいんだ。弔い合戦をしたいんだ。その為には、C君が必要なんだよ、分かってくれるかい?」

「弔い合戦?」

「分かりにくいなら、仇討ちと言ってもいいね。つまりさ、僕らのクラスメイトにいるはずの九十九を見つけ出して、やっつけようって話さ」

「そんなのが出来るなら僕だってもうやってるよ。第一、九十九なんて見つけようがないじゃないか」


 僕は無駄話が嫌いなんだ。

 だから、単刀直入に話を運ぶ。

 これは会話劇じゃあないんだ。会話に必然性はいらない。会話に繋がりなんていらない。会話に複雑さすら必要ない。


 僕は一言。


「何言ってるんだい?C君が九十九じゃないか。だってあの2人と1番関わりがあるのはC君なんだから」


 一歩近付く。


「は?僕が九十九なワケないじゃないか!」

「まあ、九十九ってのは自分で気付かないから、厄介なんだよね。人間と九十九の判断が難しくなっちゃうんだよね。だけど多分、C君が九十九なのは間違いない」


 自分で言っておいてアレなんだけれど、多分と間違いないを2つとも使っているのは矛盾してるよね。

 どっちなんだよ!?的な。

 どっちでもいいんだけど。


「しょ、証拠は?僕が九十九だっていう証拠はあるのか?」

「いやなに推理小説で出てくる犯人みたいな発言をしてるんだい。残念ながら僕は、体が子供でもないし、頭脳も大人でもないよ」


 更に一歩近付く。ジリジリと。

 けれど、僕は途中で面倒くさくなって大胆に距離を詰めていった。


「止めてくれ!ただの人間なんだよ、僕は!」


 そこでの僕からの返答はたった一言。


「あっそ」


 そのままC君に、にじり寄る。


 この学校の屋上は色々と不備がある。

 例えば、フェンスに穴が空いてたり。

 実を言うとこの穴は事前に空けておいたものだったりする。勿論、誰が、なんて言わなくても聡明な君の事だ。分かるだろ?


 そしてそして、あら不思議。

 その穴は丁度、C君の後ろにある。これはまあ、立ち位置のトリックだ。人と話す時の距離感とか、ドアを開けて屋上に上がった時の僕のいる位置とかから、C君の立ち位置をある程度操作出来る。

 この日の為に何回シミュレーションした事やら。努力が報われて僕も一息ついた。


「こんなの間違ってる!!」

「僕だって本当はこんな事したくないんだけどね。仕方ないんだよ。クラスメイトの命がかかってるんだ。C君が九十九だとしたら放っとくワケにもいかない事くらい分かるよね?」


 大丈夫。今回だって平気だ。

 早鐘を打つ胸を収めようと、僕は内心そう言った。

 前も平気だったろ?

 なら、今回だって平気なはずだ。

 僕が九十九を殺さないと、色んな人が九十九に殺されるんだ。だから僕が殺さないと。


 人が死ぬ時は思ったよりも呆気ない。あっという間だ。すぐに息絶えるし、生き絶える。


 チョンと。軽くC君を押した。


 そしたら、その後に響いた音は…


 人が死ぬ音だった。

残暑が厳しいでザンショ。

皆さんもどうかお体を大切にして下さい。そして健康な体で、この物語を読んでいただけると幸いです(露骨な宣伝)。

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