聞き込み 2
九十九ってのは案外、増えすぎた人類を減らすために地球が生み出したのかもしれない。
地球からしたらたまったもんじゃない。
人類が増えると、二酸化炭素も増える。
人類が増えると、自然が減る。
せっかく地球が造り上げた世界を壊しているのだから、人類が邪魔なのは言わなくても分かることだろう。
まあそれは、地球に感情があったなら、という仮定があってこそだと言うことは明確にしておこう。
結局九十九がなんだろうと、僕がやることはかわりがない。九十九を殺ることだけだ。
金が目的ではない。
…金だけが目的ではないと、そう言い換えておこう。何故なら既に金は腐るほどあるからだ。
腐るって言っても比喩表現なので、実際に腐るわけではないけれども。
…金の出所は聞かないで欲しいな。
いくら君が×××だからって、話せないことだってあるさ。けれども、いつか明らかにはなるんだろうと僕は思うね。多分、その時になったら僕から話すことになるのだろう。その時までのお楽しみってことにしておいて。
「…るか?僕君聞いてるか?」
「あぁ、ごめんごめん。最近ちょっとバイトが忙しくってさ~、寝れてないのなんのって」
「僕君から話しかけてきたんだろ、まったく…」
今はクラスの中にいる九十九探しに専念しよう。
僕が話している相手はB君としよう。
死んだ二人のうち、一人と仲良くしていた。
もう一人とは仲が悪かったわけではないんだろうけど、かといって良かったかと聞かれれば、そうでない。友達関係のあるあるだね。
「だから謝ってるじゃん。それでさ、最近あの二人とはつるんでたの?」
「いや、あんまり。ほら、俺らそろそろ総体じゃん?だから部活が厳しくって」
総体、まあ一番大きな大会だとでも言っておこう。どうせみんな何となく想像つくでしょ?
「ふぅん、ありがと。B君」
「僕君の聞きたいことってそれだけ?」
「うん、そうだよ。この後もバイトあるんだ~、うちのバイト先の先輩が口うるさい人で、遅れたらまずいんだ」
「んじゃ、また明日。僕君」
もちろん、バイトなんてない。
ってかそもそもバイトなんてしたことすらない。
お金には困らないし。
家に帰るだけだ。
帰り道に少し考える。
B君も、九十九ではない。と、思う。
最近つるんでないって言ってたし。
まぁ、あの言葉が嘘だったとしても、死んだ一人とは仲が良かったけど、もう一人とはそれほどではなかったところを見ると、二人が死ぬのは不自然だ。
三人でつるんでいたとは、考えにくい。
よって僕の結論は、B君は九十九ではない。
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気付くともう家の前に着いていた。
ガチャッ。
「ただいま~」
誰もいないと分かっていても、ついうっかり何となく、言ってしまう。
カバンを玄関におろして、制服を脱ぎながら、洗面所にある洗濯機まで向かい、洗濯機に制服をいれる。そしてそのまま洗濯機を回して、お風呂のお湯を沸かしてからやっと、蛇口をひねり手を洗う。
パンツ一丁のまま、自室へと向かいパジャマを取り出して着る。
ここまでが、一連の動作だ。
僕は一人暮らしをしているから、周りに気を使うことなく好きなときにお風呂に入り、好きなときに洗濯機を回して、好きなときにご飯を食べることが出来る。
一人暮らしの特権だ。
なんで一人暮らしをしているのかは、やっぱり聞かないでいただきたい。後々に話す機会があったら、ってことで。
リビングにあるソファーに飛び込んで、テレビのリモコンを手にとって点ける。
どこも大して面白くない。
テンプレートの様なバラエティー番組。
どこにでもある漫才。
演技力を活かしきれていないドラマ。
やっぱ、アニメだな。
アニメは凄いと僕は思う。
日に日に進化していく作画、演技力、音楽、演出、ストーリー。
いやもう、どこをとっても完璧。
…ただ単に、僕がアニオタなだけかもしれないけれど(かもしれないのではなく、アニオタなだけだ)。
夜飯を食べながら、アニメを見て、お風呂に入って、歯磨きをして寝る。
さぁ、また明日から九十九探しだ。
ゆっくりと、でも確実にお話が進んでいきます。意外と今までの作品の中で一番手応えがある作品になる気がします。
気がするだけかもしれないですけど。