幸せ
僕は頭がおかしいらしいです。
どこら辺がおかしいのかは分からないけれど、僕はよくそう言われるのです。
大人しすぎる、とか。考えてることと表情が一致してない、とか。相手を思いやることが出来ない、とか。
そんなよく分からないことを言われます。学校の先生や、近所の大人からは気味悪がられることは少なくありません。それがなんだと言う話でも、まぁないのです。別に周りからどう見られても僕は構わないのです。
家族が、お父さんとお母さん。それに弟がいる。三人が僕を見てくれるなら他はどうだっていいと思ってしまうのが、僕という人間なのでしょう。
そういう考え方がきっと気味悪がられる理由なのかなとは、思いますけど。
だからと言って直す気もないし、必要もないのです。
だって今、割と幸せなのですから。
ただいまと言ったら、お母さんや弟が返してくれる。お父さんが帰ってきたら、おかえりと言う。他愛ない会話をして食卓を囲んで、三人におやすみって笑う。そして朝はおはよう。
この程度で幸せを感じてしまう僕は、感性がお年寄りになっているのかもしれません。
でも実際、幸せです。
なので家族の話をしましょう。
「ただいま」
僕の言葉に真っ先に返したのは弟。
「おかえりぃ」
弟はまだ幼稚園児で舌ったらずな話し方が、まだ直らない。それはそれで可愛いので、僕は急いで直すようなことでもないと思うのですが。なんて、ブラコンですかね?
「お兄ちゃんのご帰還です!」
最近の弟はアニメの影響を受けています。なんのアニメかは知りませんけれど、きっと教育上よくないやつだとはなんとなく察していますよ、ええ。
「あら、僕君おかえり」
お母さんはどうやら夜ご飯の支度をしていた様子で、エプロンを着けていました。
「ただいま、今日のご飯は?」
玉ねぎの匂いが漂っているので、ハンバーグだと僕は予想します。ハンバーグの時だけはなんとなく直感で分かるんですよね…ピンと来ると言いますか、何かが舞い降りて来るみたいな感じです。そんな大層なことでもないですけど。
「ハンバーグよ~、僕君好きでしょ?」
案の定ハンバーグでした。
しかし、なんでしょうね。この…子供はハンバーグが好きで当たり前と決めつけているような言い方。
いえいえ、ハンバーグが嫌いなわけじゃありませんし、お母さんに反発したい『反抗期』ってやつでもないのです、ただの疑問です。
なんなら僕はどっちかと言うと、魚の方が好きです。サンマの塩焼きとか美味しいじゃないですか。ブリの照り焼きとかも。
でも僕はお母さんをがっかりさせたくないので、いつもこう言うのです。
「うん、好きだよ。お母さんの作るものなら何でもだけどね」
気を使っているわけでもないのですが、親しき仲にも礼儀ありってやつです。
「パパが帰ってくる!」
弟が唐突に玄関へと走り抜けて、お父さんを待ち構える姿勢になりました。
弟はエスパーなのか何なのか、家族の帰ってくる時間が分かってるみたいな発言をよくします。しかもそれが十中八九当たるので、馬鹿に出来ないですね、エスパーも。
ガチャリ、と。
「ただいま」
きっとそう言いかけたお父さんに弟が飛び付く。
「提督、お帰りぃ」
あ~、弟がどんなアニメを見ているのか分かってしまったかもしれない自分が嫌ですね…まだ幼稚園児なんですけど、弟は。
「おかえり」
取り敢えず僕もお父さんに、そう言います。
お父さんは飛び付いてくる弟をいなしながら、返事をくれます。
「ただいま僕、今日の学校はどうだった?」
「いつもと変わらない1日だったよ」
そんな日々は楽しく、幸せ。
いつも通り、一番簡単で一番気付かない。普通の日々が、当たり前が当たり前でしかなく、当たり前に幸せ。そんな事を思ったりするのです。子供のくせに悟りすぎていて僕自身でさえ、若干引くところですけれど。
弟は最近幼稚園に通うようになったばかりで、楽しそうに幼稚園に行く姿は、見ていて気持ちがいいです。僕も頑張ろうという気持ちになる程に。
お母さんは、料理教室を開いているほど料理が上手です。一昨日にまた生徒が増えて喜んでいました。そんなお母さんの得意料理は、肉じゃが。
お父さんは大きな仕事を任せてもらえるようになったと、自慢してきます。ほぼ毎日、お酒が入ると面倒なくらい絡んでくるところを直してもらえれば完璧です。
もう一度だけ、念を押しておこうと思います。あまり深い意味はないので、邪推しないで下さいね。
え?子供なのになんで難しい言葉を多用するのかって?ほら、あるじゃないですか。覚えたての言葉を使いたくなるあれです。意外って言うと失礼かもですけど、アニメや漫画のおかげで覚える事柄も少なくないんですよ。
まぁいいや。
念のために。
家族の話をしましょう。
これは家族のお話です。
だから家族の話をしましょう。
時系列が入り乱れる。
今回はほのぼの回ということで。たまにはね?ホラー以外もね?




