恋は落ちるもの
※ハーレムを嫌っている発言
※男の人に対してあまりいい印象を持っていない主人公
※性に対してオープン
※女性のいじめについての発言
と諸々の注意事項がありますのでだめな方はバックしてくださいm(_ _)m
「鳥になりたいな〜」
ふとそんなことを思う私は今陛下の隣で寝ております。
私はこの世界でいう『ウヴェンダ』という国の王の側室であり、元侯爵令嬢であった。
政治に関してはわからないし、現侯爵の父に陛下の妃候補として王宮に送られて
王妃がいる陛下の側室になってから2年が過ぎた。
陛下はプラチナブロンドのサラサラ髪を肩まで伸ばし、切れ長の綺麗な形の目に琥珀色の瞳を持ち、
鼻筋はすっと通っていて口は薄すぎず厚すぎず形の良く、顔は顎からのラインがシュッとして精悍な顔つきである。
190くらいの背丈に見合った筋肉を持っていて、騎士服をまとった姿はどこかに銅像作ったらいいんじゃないかなってくらい極上の男性。
もちろん、性格も悪くない。
王妃でなく側室でも分け隔てなく接してくれるし、見合う贈り物もしてくれる。
もちろん、他に側室がいるのかは気にならないしどうでもよくて。
王妃は王妃で薄いピンクのふわふわな髪を腰まで伸ばして年齢的にもちょっと幼い顔立ちの
陛下と同じ琥珀色の瞳を持った大人しい方で嫌味とか嫌がらせとかなく、会話とかも女子会みたいなお茶会とかも誘ってくれるし。
だからこの生活に不満があるっていうわけではないんだけど、
なんていうか物足りない。
まぁ、私が転生者であるからなんだと思うんだけど。
そう、私は小説とかでよくある転生者。
とか言っても私は天命を全うした記憶があるから特に転生してこれがしたい、
ああやっておけばよかったとかそういうのがなくて。
実際陛下に召されるまで思い出さなかったくらい。
ただ、今のこの生活を送ることになったから満足した人生を送り終えたと思ったからこそ、思い出してしまったのかもしれなくて。
私の前世での職業は世界を股にかけたカメラマンであった。
女性ながらにいろんな奥地へ出向いて野生の動物の写真を撮ったりしていた。
ある時は10時間以上極寒の地で外でひたすらターゲットが巣から出てくるのを待っていたり、
昼間でも薄暗いジャングルに単身で潜ったりしていた。
危うい時は何度もあったし、ここで生涯を終えるかもしれないという場面は何度もあった。
だけど、毎回「この行動に悔いはない」と思ったものだ。
そんな私からすれば平和で味気のない生活なのかと思っても仕方ないと思う。
この世界のことは前世と少々異なるが別に人生において結婚は1回しかできないというわけでもないし、
離婚も普通に成立する。
ただ、女性の職場環境が微妙に成り立っていないのが離婚率の低さを物語っているのかもしれない。
カメラはこの世界にはない技術だから仕方ないとしても
まだ見たことのない世界を見てみたいと思うのは仕方ないことだと思う。
この世界には科学ではなく、魔法がある。
陛下に召される前は、この国の歴史や、魔法、その他の雑学を学ぶため学舎に通っていた。
もちろん、貴族が多くいたけれどそれでも平民もいて学ぶことに特化したところだったと思う。
平民の何人かとつるんだり、競争したりして有意義な時間を過ごしたわ。
ギルドに登録していろいろな場所で自分たちの力量を図りつつ暗躍・活躍したものよね。
それを両親に知られてまぁ、怒られたけど。いい思い出だわ。
それらを生かす職に就けなかったことに少し残念な気持ちはある。
そういえばみんなはどうなったのかしら・・・知る手段があるはずなのに今まで行動をおこなさなかったことに今まで気づかなかったわ。
とりあえず、朝になったことだし起きようかな。
昨日は陛下が部屋に来てからあまり寝かせてもらえなかったけど
その分お腹は減ったしね。
陛下が私の体に腕を回していたからそれを解いて起き上がろうとした時
「どこへ行く?」
ガシッと腕を掴まれて陛下が起きていたことを知った。
あれ?さっきまで横になって寝息たててたのに。
あ〜戦場とかだと寝ていられないもんね。
実際、この世界にはまだ微妙に紛争が残っている。
陛下は大将でもあり戦場に繰り出すことが時々ある。
「朝ですから、朝食を。侍女を呼ぼうかと。」
「あまり寝ていないのではないか?食事はもう少ししてからでも構うまい。」
そう言って私の体は動けなくなる。
だけど私はお腹が減ったしもう寝られないんだっつの。
私は誰かがくっついている状況で熟睡できない。
本当に疲れているときは別だから起きなければ問題なかったが、
誰かが動いたが最後目が冴えてしまう。
以前、そう陛下にお伝えしたのだが、忘れているのか関心がないのか
一緒に過ごした夜は必ず体を密着して寝る。
抱かれるのは私にもある欲求不満を解消するにはもってこいだし、
別に構わないんだが、熟睡できないとその日の行動に支障が出るし、
私としては肌にも悪いから抱き終わったら陛下の寝室におかえり願いたい。
溜息を心の中で吐きつつ、目を閉じて時間が過ぎるのを待った。
と、冒頭に戻る。
陛下に恋をしているわけでもなく、愛しているわけでもなく、
ただここが可もなく不可もないところだから長居している気がするけど、
やっぱり違う気がするのよね〜
陛下がゆっくりと起きて朝食を頼もうと言ってきた。
あれから2時間後のことである。
呼び鈴を鳴らして侍女を呼び朝食の用意をお願いする。
その間に陛下は繋ぎの部屋で着替えて私は侍女に着替えを手伝ってもらう。
この世界に生まれ落ちて何が窮屈かって・・・
コルセットですよ・・・。
何がどうして苦しめなければいけないのか。
男性もクラバットとか本当に意味不明。
もっと楽にしたらいいのに。
まぁ、陛下は堅苦しいのはお嫌いみたいだから必要最低限のときしかつけているのを見たことはないけれど。
そういえば本日はお客様がいらっしゃるって聞いたな。
披露宴とかあるんだよね。面倒だな。
「ねぇミラ、今日いらっしゃるお客様は王妃様だけで構わないんじゃないかしら?」
ミラは私の侍女だが王妃様に以前仕えていた。
素行が悪くてチェンジしたんじゃなくて、王妃様が素晴らしいからってミラを私に寄こしたのだ。
ミラ・・・いい迷惑である。
王妃様付きってステータスなのにね・・ドンマイ!
「王妃様からヴェラ様にも出ていただきたいと。」
ヴェラとは私の名である。
今の私は、170近く身長があって、赤に近いブロンドヘアに翡翠の瞳を持つちょっときつそうな顔だち。
王妃様と並ぶと、私がいじめているように見えるって前に誰かに言われたことがあるのよね。
確かに。
はたから見たらそういう風に取られてもおかしくない構図になる。
まぁ、出ろと言われるなら出るけど、今回は王妃様のそばにはいない方がいいな。
それに陛下もいるってことでしょ。そばに。
なんかそれってあんまり見たくないのよね。
私が前世で毛嫌いしたものがハーレム。
あのなんとも煮え切らない気持ち。だって、一人の男を何人もの女が共有しあう。
以前言われたわ。
今彼に身近で男を作ったら昔の男に「『兄弟だな』って言われた!最悪な気持ちだ!」って。
こっちが最低な気持ちだわ。
つまり、男だってそんなことを言われるんだから、女だってそういう気持ちになるわけよ。
そんなこと思っても言わないのがマナーだしそれを彼女に愚痴るってどうなの。
私があいつと付き合ってたってわかって私と付き合ったくせに文句を言ってくるってケツの小さい男ね!!
ってなって結局別れたけど、ダメ男ってやっぱりどの世界にもきっといる気がするのよね。
そうじゃない男もきっといるし前世の旦那様もそうなんだけど・・それまでの男がね!!もう・・・
着付けられているのについつい頭を抱えてしまう。
あぁ、一つ思い出すと思い出すわ思い出すわ・・・
女のいじめも最悪よね。
ちょっと見目がいい男に好きって言われたら付き合うでしょう?!
自分を鑑みてみなさいよ!
付き合えなかったことに腹を立てて女性陣にシカトを要求するのやめなさいよ!
だから好かれなかったのよ!陰険女め!!
まぁ・・・・私も悪かったところもあるけど。
地団駄するのを堪え・・・・
そのあとに付き合った男は既婚者だと知らなかったのに奥様からの直接の電話よ?
なんなのこれ、昼ドラ?って思うでしょう?
なんかイライラしてきたのにこれからパーティだなんて冗談みたいだわ。
頭を揺するのを堪え・・・・
「ヴェラ様まとっている空気がものすごく怖いです。落ち着いていただけます?」
おっと・・・ごめんなさいね。
ん?
よく考えたら今世では陛下一人しか私知らないのよね。
前世と今世ってやっぱりいろいろ違うのかもしれないわ〜
やっぱり籠の鳥状態な今ってどうしても耐えられない。
「ごめんなさいね、ミラ」
「いえ、優しい雰囲気に戻っていだければ私はそれで構いませんから。」
ミラが私に微笑んでくれる。
ごめんなさいね、そういう意味ではないのだけど。
前世もいろいろあったけど、最終的には本当に愛する旦那様に巡り合えたのよね。
それもカメラマンと言ういろいろな場所に自分が赴いたから出会えたのかもしれない。
本当に不思議な出会いだったから・・・
だからかしら・・・
ここまで尽くしてくれたのに、王妃さまの元にしっかり返してあげるからね!
すごく良くしてくれたことをしっかりお伝えしなければ!
そして、私やっぱり・・・逃げ出すわ!