プロローグ
思いつきで始める作品ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
作者の拙い文章力にどうかお付き合いください。
では、始まりです
二年生一学期の終業式も終わりを告げ、放課後を迎えた少年は窓側にある自分の席に降り注ぐ太陽を鬱陶しそうに睨みつけている。
「ねぇ大和、一緒に帰るよね?」
後ろからかけられた声に少年は振り返る。声の主である幼馴染みの「夜鈴見梨緒」は黒く長い髪を揺らしながら満面の笑みで彼の方を見ていた。その手には既に鞄が握られていた。
「えぇ〜、どうせ梨緒の事だから買い物に付き合えとか言うんだろう?」
そう言って「藤堂大和」は面倒臭そうに顔をしかめる。
「まぁまぁいいじゃないの別に」
少し離れた席からこれまた幼馴染みの「木嶋哲也」が苦笑いを浮かべながら大和の席に来る。190近くある身長に少し薄めの茶色の髪はどう見ても不良と間違えられそうな風貌だったがその声は優しく安心できる声だった。
「てっちゃんの言うとおり!男なら黙って付いてくるべきだよ。大和はもっと男らしくしっかりしないと!」
梨緒が大和に小言を漏らしている
「あらあら、私は大和君は今のままがいいと思いますが?」
隣の席にいたクラスメイトの「綴円」がころころと可愛いらしく微笑みながら会話に参加してくる。
「うちの大和の教育方針に口を出さないでください円さん」
トーンが一段階低くなった声で梨緒が切り返すが円はうふふと微笑むだけである。何故だか真夏の筈なのに少し肌寒くなって来た教室から残り少なくなってきたクラスメイト達が逃げるように帰って行く。残るのはもう大和たち四人だけである。
「綴さんも一緒に帰る?」
その肌寒さに気付かない大和は自分の席から立ち上がりながら円に声を掛ける。その隣では哲也が頭に手を当てながら溜息をついている。
「まぁ!よろしいのですか?では、お言葉に甘えさせていただきますね?」と上品に返す円の脇で梨緒が下品にチッと舌打ちをしていた。
「何で、こいつもなのよ…」
大和に聞こえないくらいの声で呟く梨緒に哲也はどんまいと肩を叩く。
そんないつもと同じようなやりとりを終えて帰路に着こうと教室のドアに手を掛ける。その瞬間、パキッ!と言う軋むような音が教室中に鳴り響く。
「何?今の音…」
梨緒が不安げに呟くとその答えとでも言うかの如く教室の中心から全体を張り巡らせるように、アニメで魔法を使うときに出るような模様が広がる。
「なんか、ヤバそうだぞこれ!」
大和は瞬時に判断しドアを開け放ち顔を歪める。
其処に広がっている光景はいつも見ていたあの廊下では無く、暗く一点の光も無い「闇」だったからである。
「なんだよコレ!訳わかんねぇ!」と哲也は珍しく動揺している。いやこの状況で落ち着けるやつがいるはずもないのだが…
「わかんねぇけど行くしかねぇ…」と皆が二の足を踏む中大和は「闇」に向かって足を踏み出す。そして、それは間違いであったと、教室に残るべきであったと、「闇」に向かって足を踏み出す大和を止めるべきだったと全員が大いに後悔することになる。
そこから数歩進んで見ると奥にいつも見ていた風景があった、廊下がある!それをみんなに伝えようと振り返り声を上げる
「お前らもはや「大和!何かいる!早く戻れ!」よ?」
自分の声に被せて必死に叫ぶ哲也達、そして大和は何がいるのか?と背後を振り返った
其処にあったのは「紅」だった
とても大きな「紅」、周りに白く鋭いナイフを並べた「紅」徐々に大和に向かって近づいてくる「紅」
大和が最期に見たのは、余りにも現実離れしたそんな「紅」だった
次回は大和君転生(?)しちゃいます