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真面目で章(ユウト編)3 竜帝の価値

ガイアスの世界


 竜帝エンペラードラゴン


 竜帝エンペラードラゴンとは、ドラゴンの上位存在に位置する存在のことで、ガイアスに数体しか存在しない。

 竜帝エンペラードラゴンに至ったドラゴンは、人の力だけでは対抗できない強力な力と人類を凌駕する程の知性を持つと言われている。

 現在存在する竜帝エンペラードラゴンの殆どは知性を得たことにより本能に縛られなくなり温厚な性格に変化したものが多い。

 現在確認れている竜帝エンペラードラゴンは、ヒトクイの臍と呼ばれる場所にいる土鎧竜アースアーマードラゴンと、アキの体内に居る黒竜ダークドラゴンである。




真面目で章(ユウト編)3 竜帝の価値


   


剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス




 町一つ、いや小国程の大きさはあろうかという山を背負いその姿を現した土鎧竜アースアーマードラゴン。眼窩から見える光景は何もかもが豆粒ほどに見え人間など羽虫程度にしか見えていない。見えていないはずだった。自分を満面の笑みで見つめるユウトをその巨大な瞳で捉えるまでは。


「それじゃ行くよ!」


そう告げ土鎧竜アースアーマードラゴンの小城程ある巨大な瞳から姿を消すユウト。


《ま、待て!》


視界から消えたユウトに慌てるような声をあげる土鎧竜アースアーマードラゴン


「まずはッ!」


《むッ! 上か!》


そういいながら土鎧竜アースアーマードラゴンの頭上に姿を現したユウトはそのまま落下体勢に入る。

 ユウトの位置に即気付いたものの、その巨体故に体の反応が追い付かない土鎧竜アースアーマードラゴン。しかし今まではそれでも何の問題も無かった。そもそも山を背負う程の巨体が羽虫程度の攻撃を一々避ける必要は無いからだ。攻撃されても蚊に刺された程度、下手をすれば攻撃されたことに気付かない程、土鎧竜アースアーマードラゴンの外皮は堅い。


《ぐぅむ!》


 しかし次の瞬間、土鎧竜アースアーマードラゴンは自分の頭部に強烈な衝撃を感じていた。その威力は凄まじく小さな町一つを軽々と覆い尽くす程の土鎧竜アースアーマードラゴンの頭部は、地面へと落下した。地面と衝突した衝撃で災害級の揺れが周囲を襲う。


「あれ? 思ったよりも柔らかいな」


激しい揺れが続く中、ユウトは土鎧竜アースアーマードラゴンの頭部で首を傾げる。


《ぐぅ……何と言う力……これはやはり時空を超えてきたというだけでは説明がつかない力だ……》


 自分の目の前で満面の笑みを浮かべた時点で、ユウトが得体の知れない力を持っていること気付いた土鎧竜アースアーマードラゴンはその一撃をその身で味わい確信する。


《その力……異質過ぎる……この世界の理すら捻じ曲げるか!》


 例えどれだけ人一人が筋力を鍛えたとしても山を動かすことは出来ない。山を背負う巨大な土鎧竜アースアーマードラゴンに物理的な衝撃を与えるならば与える側も同等かそれ以上の大きさにならなければ衝撃与えることは不可能なはずだ。

 だがそれをユウトはただの自由落下による蹴り一つで行ったのだ。この状況を例えるならば羽虫が人間を地面に叩きつけたようなものだ。

 以前に出会った転移者が持っていたソレとは全く異なる物であること理解する土鎧竜アースアーマードラゴンは、ユウトがこのガイアスにおいて危険な存在であると認識する。


「さあ、次いくよ」


そう言うとユウトは土鎧竜アースアーマードラゴンの頭上から再び姿を消す。


《どこだ、今度はどこから来る!》


再び姿を消したユウトをその目で追う土鎧竜アースアーマードラゴン


「今度は!」


 次にユウトが姿を現したのは大胆にも土鎧竜アースアーマードラゴンの正面。その手には無詠唱で発動させた巨大な火球を携えていた。


《クゥ……見た目はただの火球……しかしこの質量》


土鎧竜アースアーマードラゴンからすれば、ユウトが手に持つ巨大な火球も豆程もない。しかしそんな小さな火球の中には想像を絶する程の力が内包されている。これを正面から受ければ、どれだけ強靭な外皮を持つ土鎧竜アースアーマードラゴンでもただでは済まない。


《すまないッ!》


誰かに対して詫びる土鎧竜アースアーマードラゴン。その瞬間、ユウトと土鎧竜アースアーマードラゴンの間を遮るように巨大な土壁が姿を現した。


「はははッ!」


 突如として目の前に現れたあまりにも巨大な土壁に驚き笑うユウト。その土壁は山を背負っている土鎧竜アースアーマードラゴンを覆い隠す程であったからだ。だがユウトの手は止まらない。玉投げをしたことがないのか、ユウトが火球を放る姿は下手くそこの上ないものであったが、そんなことは関係無く放たれた火球は凄い速度で土壁へとぶつかる。その瞬間、町一つは優に飲み込む爆発が周囲に広がった。圧倒的な火力の前に、土壁は瞬時に蒸発し消し飛んでいく。


《ぐぬぬぬぬぬぬ! どうにかして戦いを止めさせなければ》


蒸発する土壁を超え自分の外皮にまでその熱が到達する火球。その熱に耐えながら土鎧竜アースアーマードラゴンはユウトの動きを止める算段を考える。


《駄目だ……抑えるどころか、耐えることすら出来ない》


 しかしユウトが理を捻じ曲げてくる以上、どう足掻いても土鎧竜アースアーマードラゴンにはどうすることも出来ない。既に外皮を蒸発させその熱が土鎧竜アースアーマードラゴンの内部へと到達しようとしていた。


『待ってください坊ちゃん』


その時、ビショップの声が響くと同時に土鎧竜アースアーマードラゴンを消し飛ばそうとしていた火球が忽然と消え去った。


「……邪魔するのビショップ?」


遊んでいた所を邪魔された子供のように機嫌を損ねるユウト。


《……た、助かった……》


ユウトの放った火球によって二割ほど体が消し炭となった土鎧竜アースアーマードラゴンは、どんな思惑があれユウトを止めに入ったビショップに感謝する。


『……坊ちゃんに一つご報告があります』


「報告?」


ビショップの言葉に首を傾げるユウト。


『はい、どうやらこのドラゴン、ヒトクイを守護する存在のようです』


「守護……」


『もしこのまま坊ちゃんがこのドラゴンを倒せば、守護は無くなることになります……守護が無くなれば直ちにこの島国は消滅を始めるでしょう』


《……ッ!》


ビショップの言葉に驚きを隠せない土鎧竜アースアーマードラゴン。何故ならビショップが口にした言葉は土鎧竜アースアーマードラゴンとある人物の間で交された密約であったからだ。


『もし坊ちゃんが今すぐにでも魔王になりたいというのならば、このドラゴンを消し飛ばしヒトクイを消滅させることを私は止めません。しかしもしまだ坊ちゃんの中でどちらを望むのか迷っているなら、残念ですがここで手を引くことをお勧めします』


それは自我を持つ伝説の本、ビシッョプが持つ能力《裁きの選択ジャッジメントセレクト》が発動した瞬間であった。


「……」


土鎧竜アースアーマードラゴンを前に悩むユウト。今攻撃を加えれば万に一つ土鎧竜アースアーマードラゴンでも勝機があるかもしれないと思える程の隙を見せるユウト。しかし土鎧竜アースアーマードラゴンは攻撃を仕掛ける気配は微塵も無い。もしここでユウトに攻撃を仕掛け万が一その攻撃が通ったとしても、理を捻じ曲げる程の力を持つユウトが一撃で死ぬとは思えない。その先の展望が見えない時点で、攻撃を仕掛けるのは土鎧竜アースアーマードラゴンにとって無意味でしかない。だが土鎧竜アースアーマードラゴンが攻撃を仕掛けない本当の理由はそれではない。それはある人物と交した密約にあった。

ただ破壊の限りを尽くしていた頃の自分に新たな喜びを教えてくれたその人物は、土鎧竜アースアーマードラゴンにとって恩人であった。人の子でありながら自分を友だと言い続けたその者の願いを破る訳にはいかない。土鎧竜アースアーマードラゴンはその人物との密約を守るべく死ぬわけにはいかないのだ。


「……うん、わかった、このドラゴンと戦うのは止めるよ」


しばらく考えた末ユウトが出した選択は、土鎧竜アースアーマードラゴンとの戦闘を中止することだった。


『坊ちゃんの選択、承りました』


何処か流動的にユウトの言葉を受け入れるビショップ。


「……それじゃそういう事だから……」


憧れのドラゴンとの戦いに胸躍っていた姿は何処へ、いつも通りの無表情無感情な姿に戻ったユウトは、茫然とする土鎧竜アースアーマードラゴンにそう言うと、まるで意思の疎通がとれているかのように絶妙なタイミングで姿を現した怪鳥の背に飛び乗った。


土鎧竜アースアーマードラゴン……だっけ? この島の守護頑張ってね」


全く応援する気持ちが入っていない無感情な声でそう言葉を残したユウトは、ヒトクイの臍と言われる場所、もうその影も無い竜樹海からヒトクイの主要都市ガウルドの方角へ向け飛び立っていく。


【……命拾いしましたね……まあ再び会いまみえることもあるでしょう……それでは失礼……ああ、あなたの飼い主にもよろしくお伝えください】


ビショップの声が不気味な気配を残しつつ土鎧竜アースアーマードラゴン)の頭に響く。


《あれが……古代の技術によって作りだされた最悪兵器か……》


ビショップの事を知っているのか、土鎧竜アースアーマードラゴンは、ガウルドの方角を見つめながらそう呟くのだった。



― ガウルド城  ―



小さな島国ヒトクイ。その中心都市であるガウルドにある城、ガウルド城では行き来するヒトクイの兵達の姿があった。その様子はまるで魔物の襲撃を受けたように慌ただしい。だがヒトクイの兵達が慌ただしくしているのは、魔物かが襲撃してきた訳でも他国が攻め入ってきた訳でも無い。

他国に侵略させない、他国に侵略しないという理念を持つヒトクイは防衛力に特化した国である。特に中心都市であるガウルドは、先日の魔物達による襲撃を踏まえ更なる防衛強化が施さており他国による侵略行為は勿論、魔物の突然の襲撃にも対応できるようになっていた。現在のガウルドは超が付く程、難攻不落な国と言っても過言では無かった。

ならばなぜヒトクイ兵達は騒がしく動き回っているのか。それは数十分前から発生した断続的な地震の対処に追われていたからだった。

昔から地震が多いとされるヒトクイでは、他の大陸に比べ建築物は地震対策が施されており多少の揺れでは民家一つ崩れることは無い。しかし今回襲った地震は想像以上に大きく、断続して起った為に耐震対策が施された建物が幾つか崩壊したのだ。幸いにも地震による死者は出ていないが、ヒトクイ全土を襲った強い揺れによる被害を調べる為にヒトクイの兵達は奔走している状態であった。


「現在、竜山周辺に一番被害が多く出ているという報告が入りました」


王の間に飛び込んできたヒトクイ兵は、玉座に座るヒトクイの王に向かって早口で報告を始める。


「竜山……他の地域の状況は?」


竜山という単語に反応したヒトクイの王ヒラキは、眉間に皺を寄せながら、報告にきたヒトクイの兵に別の地域の現在の状況を聞いた。


「はッ! 今の所、他の地域での大きな被害は確認されていません、特に北側には殆ど被害は無いようです」


ヒラキに被害情報を求められたヒトクイ兵は、慌ただしくヒトクイ全土の状況を口にしていく。


「分かった、ただちに竜山周囲の村や町に救援部隊を派遣しろ」


「ハッ!」


指示を受けたヒトクイの兵はヒラキにヒトクイの兵は素早く敬礼するとすぐさま王の間からから飛び出そうとする。


「待てッ! 震源地である竜山と樹海に人が迷い込まないよう徹底させろ」


 竜山の周囲に広がる樹海。そこは迷い込めば最後、帰ってこられなくなると言われるヒトクイで危険とされる場所の一つあった。魔物も多く生息しているその場は元々に立ち入り禁止に指定されていた。だが地震が起こり混乱した今、逃げ惑い間違って入りこむ人々がいる可能性もある。それを懸念したヒラキはヒトクイの兵に念を押して指示を出した。


「ハッ!」


念押しされたヒトクイ兵は、再び敬礼すると慌ただしく王の間を飛び出していく。


「はぁ……」


王の間に自分以外誰も居なくなったことを確認するとヒラキは深いため息を吐く。ヒラキ王の表情は暗くそして疲労が見える。何かを思い悩んでいるようにも見えるヒラキは、玉座から腰を上げると寝室へとその足を進めた。


 普段ならば自然現象として終わる地震。だが今回の震源地が竜山という所にヒラキは不安を抱く。出入りが禁止されている竜山とその麓に広がる樹海。迷い込めば帰ってこられなくなるという話は本当であるもののそれとは別にヒラキは人々を竜山や樹海に近づけさせたくない理由があった。

 寝室に入ったヒラキはその足でガウルドの町が一望できるテラスへ向かった。テラスから覗くガウルドの町は地震の影響で何個か崩壊した建物が見られるが、それでも大きな混乱も無く人々は町を行き来している。

地震に対しての対策はどの国よりも徹底しているヒトクイ。ヒトクイの人々も地震が多い土地に住んでいることを自覚していることから、地震に対しての耐性が高い。その為、今回の大きな地震でも最小限の被害で済み既に人々は日常生活へと戻っている。


 テラスから町へ視線を向けていたヒラキは、その視線を震源地である竜山方面へと向けるヒラキ。


「やはり……」


それは些細な変化で、普通ならば変化したことにも気付かない。だがヒラキはその僅かな変化を見逃すことは無かった。城のテラスからその姿を拝むことが出来る竜山。だがその竜山の位置が少しずれていたのだ。


(……一体何が起こったのですか?)


 山の位置が変わることなど有り得ない。だが山の位置が動くという本来ならば有り得ない状況が起こりえる理由を知っているヒラキは、竜山を見つめまるで話しかけるように心の中で呟いた。心の中で呟かれたその声はヒラキではない女性のものであった。


《……レー……いやヒラキか……》


ヒラキの問に対して重厚な音圧を持つ声が返ってくる。その声は、竜帝エンペラードラゴンである土鎧竜アースアーマードラゴンのものであった。


(はい、ヒラキです、先日の『闇』の輩に対してのご支援感謝します」


先日ガウルドで起った魔物襲撃の事件、その事件を裏で操っていた『闇』の輩を封印することに成功したヒラキはその時に力を貸してくれた土鎧竜アースアーマードラゴンに感謝の言葉を伝える。


《ああ、あれぐらい容易い……あの封印にお前が巻き込まれそうになった時は冷や冷やしたがな》


『闇』の輩と共に封印に巻き込まれそうになったヒラキ。いやその実、ヒラキは『闇』の輩と共に自らも封印されようとしていた事を理解しつつも知らない体でそう話す土鎧竜アースアーマードラゴン


(ご心配おかけしました)


心配かけたことを心の中で頭を下げて詫びるヒラキ。


(ところで……お聞きしたいことがあるのですが……ヒトクイ全土に起った地震、これはあなたが引き起こしたのですか?)


《……ああ……》


ヒラキの問にその重厚な音圧を持つ声は何処か覇気が無いように頷く声を発した。


(……なぜ、そんな事に)


土鎧竜アースアーマードラゴンがそこに根付いた理由を知っているヒラキは、どうして突然そんなことをしたのか聞いた。


《……我に戦いを挑んできた者がいた、その者を迎撃すべく止む無く動くしか無かった》


竜山を背負う巨大なドラゴンである土鎧竜アースアーマードラゴン。僅かに動くだけで周辺には被害がでる。それを分かったうえで土鎧竜アースアーマードラゴンは、自分に戦いを挑んできた者を迎撃する為に動く必要があったと説明した。


(待ってください、人が立ち入らないよう、樹海にはあなた自身が展開する結界があるはず……)


土鎧竜アースアーマードラゴンの存在を知る者はヒトクイでヒラキしかいない。しかし竜山にドラゴンが住むという話は昔からある噂話で、自分の腕を過信した戦闘職やドラゴンが隠し持つ財宝目当てに樹海に入り込む冒険者は年に数人いる。そんな者達を速やかに追い払う為、樹海には土鎧竜アースアーマードラゴン自らが作りだした結界が展開されているはずであった。


(いえ、そもそも……あなたが動くことを余儀なくされた存在……何者ですか?)


本来であれば土鎧竜アースアーマードラゴンが展開した結界だけで普通の人間ならば事足りはずであった。だがその結界を超え、土鎧竜アースアーマードラゴン自らが動かなくてはならない存在、それは異常な状況を意味していた。


《……転移者だ……我の前に転移者が現れた》


(転移者……ですが転移者であっても普通ならば……)


別の世界からやってきた異邦人、転移者という存在はその殆どが強力な力を持っていることが多い。だがその転移者の力を持ってしても土鎧竜アースアーマードラゴンの結界を破ることは難しい。だが今までに一人だけ土鎧竜アースアーマードラゴンの結界を破った者がいるという話を思い出したヒラキは言葉を失う。


《……そうだ、先代の王と同じ……いやそれ以上の力を持った人の子が我の前に現れた》


「……ッ!」


土鎧竜アースアーマードラゴンの言葉に衝撃が走るヒラキ。

 しかし土鎧竜アースアーマードラゴンの言葉にはおかしなところがある。ヒトクイはその急速な発展から忘れられがちだが、まだ誕生して日の浅い国である。その為、ヒトクイの王はまだ一人しか存在しないはずである。それにも関わらず土鎧竜アースアーマードラゴンは、ヒラキに対して先代の王がと口にしたのである。


(ヒラキと同じ力……それ以上の力を持った存在……)


自分を示すはずの名をまるで別にいるかのように口にするヒラキ。


《我と先代の王が交わした密約をお前に引き継いだ時、もう我と直接会うことができる人の子は居ないと思っていた……しかし時は巡る……あの人の子は……もしかすると……》


(やめてください! 彼は……ヒラキは、私の中にいます……そんなはずありません)


土鎧竜アースアーマードラゴンの言葉に声を荒げるヒラキ。


《あ、ああ……私も確かにお前の中にヒラキは感じている……有り得ないことだということも理解はしている。だが……あれは……》


声を荒げたヒラキに申し訳なさそうにする土鎧竜アースアーマードラゴン。しかし理解してはいるが、その力を目の当たりにした以上、納得することが出来ない土鎧竜アースアーマードラゴン


《ただ、この件はこれだけに終わらない……我の前に現れた人の子は……古代に作られた兵器……その中で最悪とされる『ジョブミラー』を所持している》


「ッ!」


土鎧竜アースアーマードラゴンの言葉に更なる衝撃を受けるヒラキ。


《他の古代兵器ならばまだ問題は無いが、この世界の運命すら握るとされるジョブミラーは危険すぎる。ヒラキよ……現在このガイアスに取り巻く『闇』の気配……いや、魔王の種子の存在と共に警戒せねばならないと我は考える》


現在不穏な気配がガイアスを包み込んでいることを察している土鎧竜アースアーマードラゴンは、それに加え自分の前に現れた人の子に警戒しろとヒラキに告げた。


(……分かりました……調べてみます……)


土鎧竜アースアーマードラゴンの言葉に衝撃を受けたヒラキは、心を落ち着かせるように一度深く呼吸すると頷いた。


《もしジョブミラーの力が発動すれば、その所有者は選択を強いられることになる、そうなる前に他の古代兵器を持つ所有者を探し出すんだ》


「はい、分かっています……情報提供ありがとうございました」


地震を引き起こした理由を聞くはずが、とんでもない話を聞かされてしまったヒラキは土鎧竜アースアーマードラゴンとの話を終え竜山から視線を外す。


「はぁ……」


再び深いため息を吐いたヒラキは手で顔を覆う。


「……」


顔を覆っていたヒラキは何かを決心したように寝室の扉に目を向ける。


「誰か、誰かいないか!」


扉の前に立つヒトクイ兵に声をかけるヒラキ。その声はいつものヒトクイの王の声に戻っていた。





ガイアスの世界


 ヒトクイを守護する土鎧竜アースアーマードラゴン


それが何時交されたものなのか現時点では分からないが、土鎧竜アースアーマードラゴンはヒトクイの王ヒラキと密約を交わしている。その内容は、ヒトクイという島の守護であった。

 本来人間よりも遥かに上位の存在、竜帝エンペラードラゴンである土鎧竜アースアーマードラゴンと契約を交わすことなど本来は出来ないことであるが、ヒラキはそれを可能としたようだ。

 土鎧竜アースアーマードラゴンが守護に着いたお蔭で、ヒトクイは急速な発展を遂げているといってもいい。

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