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この話は忘れていいで章 2 復活! 



この話は忘れていいで章2 復活ッ!



 剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス……では無い場所



 遥か上空、すでに空との境界線を脱しガイアスという世界の外。音も無く空気も無く到底生物が生きていけない漆黒の世界があった。その漆黒の世界に漂う人の手によって造られただろう建造物があった。 

 ガイアス各地に存在する遺跡に酷似したその建造物は、ガイアスにある物とは違い現在も使用されているようで所有者は、自我を持つ伝説の武具達であった。

 だが彼らは常時この建造物に居る訳では無い。普段は自分の所有者と共にガイアスの地で行動している。その為居ないことが多いはずなのだが、それでもこの建造物からは何やら人の気配が消えない。まるで彼ら伝説の武具達がいないことをいいことに我が物顔で建造物に入り浸っている存在がいるのだ。

 ガイアスの世界にも神はいる。例えばガイアスを産み落としたとされる女神フリーダや世界を巻き込んだ兄弟喧嘩で有名な双頭の双子神、『聖』を司るハル―ドなどである。ガイアスの人々は己が信じる神を崇め奉っているわけだが、実はこの神達すら生み出した存在がいる。それが創造主という存在だ。

 その存在こそが神なのではと思うかもしれないがそれは少し違う。確かにガイアスという世界からすれば創造主は神なのかもしれないが、創造主とは名ばかりのどうしようもない人間以下の無能であった。全知全能な力も無ければ、人間が簡単にこなすことができるような作業すらも出来ないような無能、それがガイアスの創造主の実体である。

 さて人間でいう所の最底辺のクズである創造主は、伝説の武具達が所有する建造物を占領し何をしているかといえば、伝説の武具達が集まる部屋、円卓の間で箱のような物を前に何とも下品な笑みを浮かべていた。


「ふふふ……私は手に入れた! 新な情報端末……膝上情報端末ノートパソコンを!」


 明らかに異常なテンションでそう叫ぶ創造主は円卓に置かれた箱を指差した。創造主が指差した箱は、ガイアスの世界を作りだす為に必要な古代道具ロストアイテムであった。


「これでガイアスの続きが書ける!」


そう彼がこの建造物の中で行っていること、それはガイアスという世界で広がる物語を作りだすことであった。そして創造主が指差す古代道具ロストアイテムとはガイアスという世界で広がる物語を作りだすために必要な道具であった。

 以前使っていた古代道具ロストアイテムは先日、創造主が作業中に突然壊れていた。直すこともできずただただ途方に暮れていた創造主は無い知恵を振り絞り今までは古代道具ロストアイテムの親戚のような板状の物体を使いどうにか騙し騙しガイアスの世界の物語を作り上げていた。だが指をスンスンして物語を作りだすのに限界を感じたのか創造主は無い袖を振り新たな古代道具ロストアイテムをヤマーダという店で購入したようであった。ガイアスでは既に失われた技術を買うことが出来るヤマーダという店が一体どこにあるのか全く見当がつかないが、兎に角創造主は新たな古代道具ロストアイテムを手に入れホクホク顔であった。


「早い……起動が早いのだよ……すぐに立ち上がるのだ!」


 以前の古代道具ロストアイテムよりも遥かに性能が良いらしく歓喜の声を上げる創造主。機動するのが早いとは何なのか、すぐ立ち上がるとは新たな箱には足が付いているのか、よくわからない独り言を叫ぶ創造主の言動は見ていられないものがあるが、そんなこと本人にはどうでもよく新たなに加わった古代道具ロストアイテムにご満悦、気分は上機嫌であった。


「……ふふふ……ふふふ……これで……これで女体のはだ……」


 今日一番の下衆クズ顔を浮かべながらガイアスの物語を作る事とは全く関係無いことを口走る創造主。どうやら古代道具ロストアイテムにはガイアスの物語を作り出す以外にも色々と使用用途があるようで創造主本人の様子を見ているどちらかといえばそちらが本命だったのではと疑いたくなる。


「いやいや、何を言っている……これはそんなことの為に買った訳では……な、何だと指が勝手に……!」


 誰に言い訳をしているのか下手な芝居を挟みつつその指はカタカタと古代道具ロストアイテムに付いているボタンのような物を叩き始める。


「ち、違う……これは私の意思じゃ……意思じゃ……」


 大根役者と比較するのも失礼な下手な芝居を挟みつつ古代道具ロストアイテムに映しだされる映像にガイアスの人々には見せられない程に卑猥で無様な表情を晒す創造主。


「うっひょよよよよよ!」


 こんな創造主に運命を左右されるガイアスの人々に同情の気持ちしか浮かばない。果たしてこんな調子で創造主はガイアスの物語を作り上げることはできるのだろうか……。





― 熱波渦巻く砂漠の大陸ムハード近海 ―



「……ん?」


ガイアスの世界に生息する鳥の中で一、二の巨大さを誇る怪鳥の背に立つ少年は突然背筋に悪寒を感じ空を見つめた。


『どうしました坊ちゃん?』


すると少年を坊ちゃんと呼び心配するような声が突然怪鳥の背に響く。だが怪鳥の背には少年以外人の姿は無い。


「いや……なんかとてつもなくクズで下品な気配を感じたんだけど……」


しかし少年はこの状況が普通であるというように主の居ない声と会話を続ける。


『下品でクズな気配……? ……はて私はそんな気配感じませんでしたが……』


「そう……気のせいかな……」


自分の感じた悪寒が気のせいであるのかと首を傾げた少年は、眠たそうな目を手に持つ分厚い本に落とした。


「……まあ、どうでもいいんだけど……」


一瞬にして興味を失った少年はそう言いながら分厚い本を開く。


「どうでもいい……それならば問題ないのでしょうね……』


その声はよく聞けば少年が開いた分厚い本から発せられているものであった。


「……それで、目的地までは後どれくらい?」


何も書かれていない空白のページを見つめながらそう分厚い本に尋ねる少年。


『この怪鳥の速度からして後一日と言ったところでしょうか……』


 すると空白であったページに突然絵がが浮かび上がる。その絵はガイアスの世界が正確に描かれた世界地図であった。ガイアスの隅から隅まで正確に描かれたその地図は、人間が足を踏み入れたことの無い未開の大陸まで完全に描かれており世界を冒険する冒険者ならば喉から手がでるほどの価値を持った代物であった。だがその地図のありがたみを全く理解していない少年はその地図を軽く見るとすぐに視線を逸らした。


「一日か……」


先程から僅かばかりも変化の無い少年の表情が分厚い本の言葉で退屈そうに変化する。


『退屈ですか?』


退屈そうな少年の表情を瞬時に察した分厚い本は、すぐさま言葉にする。


「……退屈……」


『そうですか』


フルード大陸を飛び立って以来、少年の目に映るのは青い空、もしくは星々が輝く夜の空だけ。下をみれば永遠と続くのではないかと思える青い海だけで退屈するのは仕方ないと思う分厚い本。

 ここで魔物が襲って来れば多少なりとも退屈凌ぎになるのにと考えはするのだが、少年が乗る巨大な怪鳥を襲うような魔物は滅多にいる訳でも無いと分厚い本はどうするべきかと悩んでいた。


海竜シードラゴンとかいないなのかな……」


突然そう呟いた少年は怪鳥の背から身を乗り出す。かなり早い速度で飛ぶ怪鳥の背から身を乗り出すのはかなり危険な行動であったが、少年はやはり顔色一つ変えず平然としていた。


『……うーん、どうでしょう、海竜シードラゴンがこの海域に生息ししている可能性は低いと思いますが……』


少年の突拍子も無い行動に別段慌てるわけでも危険だと怒る訳でも無い分厚い本は、少年が口にした魔物海竜シードラゴンが現在自分達が居る場所には生息していないと説明する。

 海竜シードラゴンとはムウラガ大陸とフルード大陸の間の海域でよく目撃される魔物で、その付近を航海する船をよく狙うことで有名であった。しかし現在少年がいる場所はムハード大陸付近の海。海竜シードラゴンが目撃された話は聞かず望みを薄かった。


『それに坊ちゃん、名前こそドラゴンと付いてますが海竜シードラゴンは正式に言えば、ドラゴン種では無く親戚にあたる魔物ですよ」


 分厚い本が説明するように海竜シードラゴンはドラゴンと名称されてはいるが、正確にはドラゴンでは無く進化の過程でその血が薄まったその名を冠するにはあまりにも非力な魔物であった。だがそれはあくまで少年の実力や目的を知る分厚い本の主観であり本来冒険者や戦闘職が海で出会えば生きて帰れるかは分からないと緊張を走らせるほどの力を持った魔物であった。


「ふーん……」


分厚い本の言葉に一瞬にして海竜シードラゴンに興味を失う少年は、怪鳥の背に体を引っ込めると分厚い本に描かれた世界地図に目を落とす。


「……ん?」


その時であった。少年は吸い込まれるように世界地図のある部分に視線を向ける。


「ねぇビショップ……この島は何て言う島なの?」


 少年は自分の視線が留まった島の名を分厚い本、自我を持つ伝説の本ビショップに聞いた。


『ああ、この島はヒトクイと呼ばれる島です、ここ数十年で目まぐるしい発展を遂げた国ですね』


「へーヒトクイねぇ……」


島の名を知った少年は何か納得するようにビショップの言葉に頷いた。


『ああ、なるほど確かに坊ちゃんが探しているドラゴンに形が似ているかもしれませんね」


言動や雰囲気は大人顔負けのように落ち着いている少年にも、子供ぽい所があるなと自分の所有者である少年の新たな一面に少し嬉しがるビショップ。


「違うよビショップ、この形の場合、ドラゴンじゃなくて龍だ」


『リュウ……? はて、ドラゴンとの違いが私にはわかりませんが……』


少年が言うようにその島は何処となく龍の形に似ていた。しかしビショップはドラゴンと龍の違いが分からないのか、首を傾げたような声をあげる。


「まあ、僕が気になったのはそこじゃないんだけどね」


少年はヒトクイの形が龍に似ていたから興味を持った訳では無いと告げるとビショップに描かれたガイアスの世界地図を見つめる。


「……なるほど……何となく理解したよこの世界の仕組みを」


『仕組み……ですか?』


この世界の仕組みを理解したと告げた少年の言葉に、再び首を傾げたような声を発するビショップ。


「ビショップ、目的地変更だ、今からヒトクイに向かうよ」


そう言うと少年は開いていたビショップを閉じて視線を凄い速度で流れていく雲に向ける。


『あら、砂漠はいいのですか? きっと坊ちゃんが探しているドラゴンはムハードにいると思いますよ』


突然の目的地変更に少々戸惑いを見せるビショップは、少年が探し求めるドラゴンはいいのかと質問を重ねた。


「うん……でもいいや……どうせそのドラゴンとはヒトクイで出会うことになると思うから」


何か全てを悟ったようにビショップにそう告げる少年。


『……そうですか、ならばヒトクイに向かいましょう……』


何かを考え少し間を開けたビショップはヒトクイ行きを承諾する。そのビショップの声は何処か楽しそうであった。


「……方向転換だ」


ビショップの楽しそうな声を耳に少年は特に表情を変えず自分を乗せた怪鳥の首元を摩ると進路変更を指示する。


《キィィィィィィィ!》


するとまるで少年の言葉を理解したように怪鳥はけたたましく鳴き声を発すると急旋回を始める。


「よし、いい子だ……それじゃ速度も上げてみようか」


《キィィィィィィィ!》


少年の言葉に返事するように再び鳴き声を発した怪鳥は、飛ぶ速度を上げる。その速度は本来怪鳥が持つ最高速度を軽く超えていた。


『ああ、坊ちゃんあまり無理をさせると怪鳥が疲れてしまいますよ』


「大丈夫、こいつはやればできる子だから……」


そう言いながら優しく怪鳥の首元を再び撫でる少年。怪鳥は嬉しいのか更に飛ぶ速度をあげながら突然急降下すると海面ギリギリで再び浮上する。恐ろしい程の怪鳥の飛ぶ速度によって海面は暴れだし嵐が起こったように波打つのであった。


『……全く坊ちゃんの力の底は一体どこにあるのか……魔物まで簡単に手なずけてしまうとは』


怪鳥の急降下にも全く動じない少年の顔を見ながら、それが少年が持つ力の一つに過ぎない事を示唆するビショップ。その声は呆れているようでもあり嬉しそうでもあった。

 こうして進路を変更しヒトクイへと向かう少年。彼は一体何を目的としてヒトクイに向かうことにしたのか。それは定かではないが彼の気まぐれは、ある者達の首の皮一枚を残す結果となった。

 彼の名はユウト。自我を持つ伝説の本ビショップの所有者にしてガイアスに降り立った最強の力を持つ少年であった。




― 同時刻 ムハード近海 ―



《キィィィィィィィ!》


「の、のあああ!」


甲高くけたたましい何かの鳴き声と共に突然の激しい揺れが船内を大きく揺らす。その大きな揺れによって男は少し頼りない印象の叫び声を上げた。


「……お、おい冗談じゃねぇぞ、また船が転覆なんてしないだろうな……」


漆黒の全身防具フルアーマーを纏った男アキはそう呟きながら以前ムウラガからフルードにボロ舟で渡った時の苦い経験を思いだし顔を引きつらせる。


「……もしそうなったら今度ことお前の出番……」


「ス―ス―」


自分の隣にいた少女に声をかけるアキ。しかし何かを期待していた少女が気持ち良さそうな寝息を立て眠る姿に言葉を失うアキ。


「またこのパターンかッ! ウルディネ、お前は海に出ると寝ちまう病気かなにかなのか!」


その少女の寝顔に以前ボロ舟でムウラガからフルードへ向かっている途中大嵐に巻き込まれても一切起きなかった少女ウルディネの事を思いだしたアキは今回も一切起きる気配が無いウルディネに発狂する。


「海は水を司る精霊のお前が一番活躍できる場所だろッ!」


 そう言いながらウルディネの肩を激しく揺さぶるアキ。しかしそれでも一切目覚める気配が無いウルディネ。

 その姿は少女のようではあるが、いや正確には少女で間違いないのだが、その中に宿る魂の正体は、水を司る上位精霊であるウルディネ。海という水が多くある場所であれば水を司る精霊の真価を発揮できるはずなのだがウルディネはその役目を放棄したように眠り続けていた。


「アキさん……うるさいですよ……ウルディネさんは疲れて……ス―ス―」


アキの発狂に反応したのは少し離れた所で大盾を枕に眠っていたもう一人の少女であった。少女は寝ぼけた表情で騒ぐアキを注意しようとするのだが睡魔に勝てなかったのか力尽きたように寝息を上げた。


「……ブリザラお前もか……」


恨むような目で大盾を枕に眠る少女ブリザラを見つめるアキ。

 何の因果かアキが一緒に旅をすることになってまった相手はフルード大陸にあるサイデリー王国の王ブリザラであった。


「はぁ……」


フカフカのベッドでもなければ布団すらも無い場所でね無駄に堅い大盾を枕に眠る一国の王らしからぬブリザラの様子に呆れため息を吐くアキ。


「たく、このオウサマは、本当に王様らしくない……変な鳴き声が気になる……様子を見てくるか……」


 少女の容姿こそ王に相応しい美しさを持っているものの今の様子は全く王には見えないブリザラをから視線を外したアキは突然の揺れの前に聞こえた謎の甲高い鳴き声が気になり船の操舵室へと移動しようとその場を離れた。



「……お前か……」


 操舵室に辿りついたアキに声をかけたのは、その場には似つかわしくないメイド姿の女性であった。メイド姿の女性は一切振り返ること無く気配だけでこの操舵室にアキが来たことに気付き声をかけた。


「お、おう……よく見もしないで俺が来たことわかったな」


「ふん、これぐらい出来なければブリザラの護衛などできない、それで何のようだ」


そのメイド姿の女性は王であるブリザラの護衛の任も任されているらしく見もせずにこの場にやってきた者がアキであることがわかったことの説明をした。


「それ説明になってないよな……まあいいや、何か変な鳴き声が気になってな」


「なるほど、お前も気になったか……」


アキの言葉に頷くメイド姿の女性。

 その言葉使いは王の専属メイドとしてはどうなのだろうと思ったがメイド姿の女性の素性を知るアキはまあ仕方がないよなと納得する。


「それで、あの鳴き声の正体が何だかわかるか?」


 船の進路を操作する舵輪を握るメイド姿の女性の背を見つめながら鳴き声の正体を知っているかと尋ねるアキ。


「……多分怪鳥の類が我々の船の頭上を飛んでいたのだろう、その影響で海面が暴れて船が揺れたんだ」


アキの問に淡々と答えるメイド姿の女性。


「なるほど……怪鳥ね……この様子だと襲ってはこないみたいだな」


その正体が怪鳥であると聞いて少し安堵の表情を浮かべるアキ。怪鳥ならば産卵期かこちらから手を出さない限り襲ってこないからだ。


「それにしてもよかったよ、あんたみたいにまともな人間がこの船に乗っていてくれて……」


そう言いながら甲板の壁に背中を預けるアキ。


「一国の王が国を出るっていうのに護衛やお付は愚か船の操舵士や船員もいなかったからな……」


そう言いながらアキは船の舵をとるメイド姿の女性の背に現在の状況の愚痴を零す。


「それは仕方ない、ブリザラは自分達の所為で他の者達が危険に晒されることをよしとはしていないからな」


 アキとムハード大陸へと向かうことになったサイデリー王国の王ブリザラ。本来一国の王が自分の国を離れ旅や外交にでる場合、最低でも護衛や世話係をかならず付けるはずなのたが、ブリザラはそれを全て断り唯一今アキと話しているメイド姿の女性ピーランだけを連れてアキと共にこの船に乗り込んでいた。

 それは自分達にこれからふりかかる危険を危惧した物であったのだが、正直アキにとってはいい迷惑でしかなかった。


「それにしても、あんた船の操縦もできるんだな、本当だったらクイーンか盾野郎にやらせようと思っていたんだが……なんかまた急に黙り込んでよ」


そう言いながらアキは自分が纏う全身防具フルアーマーを軽く叩いた。

 アキが纏う漆黒の全身防具フルアーマーはただの全身防具フルアーマーでは無く、伝説と名の付く代物であった。それに加えその伝説の全身防具フルアーマーには自我がありその名をクイーン名まであった。

 そして船内で気持ち良く眠っているブリザラが枕にしている大盾もアキが纏うクイーンと同様に自我を持つキングという名を持つ伝説の盾であった。

 元々この二つ、いやこの二人が船の操舵を担当するはずだったのだが、現在何故かその活動を停止したかのように黙り込んだまま一切の会話が出来ない状態にあった。


「……そうか……それは……中々に問題だ……」


「問題? どうしてだ?」


舵を握るピーランが口にした言葉に疑問を抱くアキ。


「すまない……もう限界だ……」


そういうと突然倒れ込むピーラン。


「お、おいどうした!」


倒れ込んだピーランに駆け寄ったアキはピーランの体を起こす。


「や、やめろ……ゆ、ゆらすな……ウプッ!」


そう言って口元を抑えるピーラン。その表情は海のように青くなっていた。


「……おい……まさかとは思うが……」


「そのまさかだ……先程の強い揺れの影響で……酔っ……ウププッ!」


今にもキラキラした物を吐き出しそうな様子のピーランは力なくそう言うとアキの肩に手を置いた。


「後は……頼むッ!」


ピーランはそういうとバネの如く起き上がり操舵室から離れていく。


「……まじかよ……」


走り去っていたピーランの後ろ姿を見送りながら顔を引きつらせるアキ。


「何で……何で俺の船旅はいつもこうなんだあああああああああ!」


 船旅をすると不幸に見舞われるアキの切ない叫び声が穏やかになった海上に響き渡る。しかしその穏やかな海上とは裏腹に海中ではアキの叫びに反応したのかどうかは分からないが、得体の知れぬ何かが蠢いていた。ゆっくりとではあるが確実にその得体の知れない何かはアキ達の乗る船に向かっているようであった。




 ご無沙汰しております、山田です。


前回のこのこの話忘れていいで章でPCが壊れたというお話をさせていただきましたが、どうにか新しいのを購入することができました。

 いや実は5月の後半にはすでに購入できていたのですが、中々タイミングがとれませんでした。

 まあこの話は忘れていいで章は、文字通り忘れて貰って全然かまわないお話ですので、許していただけると幸いです(汗


ここまで読んでくださった皆様本当にありがとうございます、これからまだ続くと思うのでよろしくお願いします。

 ちなみに前回こんな神はいませんと書きましたが、それだと色々面倒なので創造主に変えました。

 ということでガイアスの世界にこんな屑な創造主はいません(笑


2015年 8月14日 蒸す朝方より


再びお久しぶりです、山田です。


一応一区切りなので後書きの後書きなるものを一つ。


いや『この話は忘れてもいいで章』は別に修正しなくてもと考えたのですが、まあここまで来たのでこれもと手を加えました。

 手を加えた結果、更にややこしいことになって正直後悔しております(汗


 いやそれにしてももう約四年も前なのですね……正直当時新品だったパソコンは、それなりにポンコツ化をはじめてる状況です……ですが誤解しないでください、現在使っているパソコンでやらしいサイトとかには行ってませんから……本当ですよ本当に行ってないんですよ!(必至)

 ま、まあ兎に角次からは新章、新たなお話となります。……正直具体的なことは何一つ考えていないので荒れに荒れるのだろうなと思っております。

 なにとぞ、なにとぞ温かい目で……生暖かい目で見守っていただけるとありがたいです(汗


それでは! ……あ、ちなみに作中に登場した創造主は私とは一切関係ありません、関係ありません!


2019年5月17日   三人の女性に翻弄される某昇る系パズルの主人公を羨ましいなと思いながら

 


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