真面目に合同で章(スプリング&ソフィア編)9 変態鍛冶師のラブコール
ガイアスの世界
登場人物
名前 ロンキ=シュルイド (猫型獣人)
年齢 56
レベル 50
職業 鍛冶師 レベル不明
今までにマスターした職業
鍛冶師 魔法使い 召喚術師 他多数
装備
武器 鍛冶師道具
防具 防火性耐久ローブ
頭 猫耳付防火性フード
靴 無
アクセサリー 最上級鍛冶師認定ネックレス
突如としてスプリング達の前に姿を現した猫型獣人であるロンキ。彼の正体はガイアスに広く展開している防具屋、日々平穏の創設者であった。
獣人であることから本来鍛冶師のような作業は不得意としているはずなのだが、本人曰く天性の才能と激しい努力によって誰もが唸る鍛冶師になったという。
自分の欲望に忠実で、狙った獲物は逃がさない。現在のターゲットは自我を持つ伝説の武器ポーンである。
真面目に合同で章(スプリング&ソフィア編)9 変態鍛冶師のラブコール
剣と魔法の力渦巻く世界ガイアス
山や洞窟などで採掘される鉱石や金属に熱を加え一度溶かした後、ハンマーで素早く叩き鍛えあげ冒険者や戦闘職が身につける武器や防具から家庭で使われる包丁などを作りだすことを職業にしている鍛冶師。
その職業柄、宿屋や商人のような一般職と鍛冶師も思われがちだが、より質の言い鉱石や金属を求め冒険者や戦闘職と危険な場所やダンジョンへ同行することも多く、自身の身を守れる以上の戦闘力を必要とされる珍しい職業である。
勿論、鉱石や金属の採掘を冒険者や戦闘職に依頼し自分は武器や防具を製作することに集中する鍛冶師もいる。だが冒険者や戦闘職に採掘の依頼をするということは、報酬が発生する。質のいい鉱石や金属を採掘する為には当然それなりの危険な場所へと向かうことになる。
依頼を受けた冒険者や戦闘職も自分達の命を危険に晒すことになる為に報酬の金額は高く設定されることが多い。そのため冒険者や戦闘職に鉱石採掘の依頼を頼める者は、すでに名のある鍛冶師で高額な報酬を支払うことができる鍛冶師か、日々平穏のような大きな店に雇われている鍛冶師だけに限られるのである。それ以外の大半の鍛冶師は、自作した武器や防具を自らの手で売るか、小さな店と契約して自身が製作した武器や防具を売ってもらうことになる為、収入が低い、もしくは安定せず名のある鍛冶師や大手の店と契約している鍛冶師のように簡単に冒険者や戦闘職を雇い採掘の依頼を頼むことは難しい。その為大半の鍛冶師は冒険者や戦闘職に自ら同行し危険な山やダンジョンへと向かうことになるのである。そのため鍛冶師は想像よりも戦闘に適した技術を持っている者が多い。
ただし自ら足を運び鉱石や金属を採掘するのは金銭面に余裕の無い鍛冶師だけかというとそうでも無い。金銭面的に余裕がある鍛冶師の中には今の自分の地位に胡坐をかかず、常に高みを目指しより良い武器や防具を作りだす自ら鉱石や金属を採掘しにいく鍛冶師もいる。
現在、欲望を纏った表情を隠そうともしないでスプリングの腰にぶら下がる打撃用手甲を見つめる鍛冶師、猫型獣人ロンキ=シュルイドもすでに富と名誉も手に入れていたが、それでも高みを目指す鍛冶師の一人であった。
世界全土に広がる日々平穏という名、その創設者であるロンキは、月に数回、多い時には月の半分以上を鉱石や金属を採掘する為の時間に当てていた。
今日は丁度その採掘を終え、自身専用の鍛冶場兼店でもある日々平穏一号店に帰ってきたばかりであった。
店の前に立つ男女を前に最初は昨今流行っているカップル装備を探している冒険者か戦闘職のカップルだと思っていた。だがすぐにその考えを改めるロンキ。現在自身専用の鍛冶場兼店である日々平穏一号店は、自身と通じる感性、もしくは幻術を見破る術を持った者にしか店が見つけられないようにしていたからだ。
店を視認できるということは、そこに立つ男女はどちらかの要素を持っていることになる。その要素を持っているということは、自分にとって客に値する者達だと思ったロンキは男女に声をかけた。
男も女もどう見ても戦闘職になりたてといういで立ちをしているが、その二人の姿を見たロンキは間違いなく何かとてつもない才を秘めた者達だと確信した。
だがその二人よりもロンキの目を輝かせたのは男の腰にぶら下がった打撃用手甲であった。一見何処にでもあるような品に見える打撃専用手甲であったが、一流、いやガイアス一とも言われる鍛冶師であるロンキの目にはその打撃用手甲が神々しく見えたのだ。
ここ数年、専門としている防具製作に加え武器にも手を出し始めたロンキは男が持つ打撃用手甲に心を奪われ、どうにかしてじっくり観察し手で触れたいとその男女を店へと招き入れたのであった。
そして現在、彼らがこの店にやってきた目的を話半分程度で聞いていたロンキは、次は自分の番だというように男に質問をしてもいいかと尋ねていた。
「……な、何が知りたいんだ?」
ロンキのその言葉に腰に打撃用手甲をぶら下げた男、スプリングは顔を引きつらせた。その欲望まみれな表情もそうだが、目の前にいる猫型獣人が日々平穏の創設者だとはまだ信じられないからだ。
「お、答えてくれるのかニャ! だったら教えて欲しいニャ……その腰にぶら下げた打撃用手甲が……一体何なのかをニャ……」
スプリングの言葉に嬉しそうに欲望にまみれた表情を笑みで歪ませたロンキは視線をスプリングの腰にぶら下がった打撃専用に向けた。
ロンキの視線に誘導されるようにスプリングも自分の腰にぶら下がった打撃用手甲に視線を向ける。
「……何なのか? ……な、何なのかと言われても……こ、これは何処にでもある打撃用手甲だが……」
見ただけでそれが打撃用手甲である事は、冒険者や戦闘職ならばすぐに分かる。それが鍛冶師ならば尚更のはずなのに、目の前に立つロンキは何故か妙な言い回しで打撃用手甲に付いて聞いてきた。その言葉の言い回しに妙な引っかかりを感じたスプリングは、ロンキに対して自分が持つ打撃用手甲は何処にでもあるものであると口にした。
「んー、信じられないニャ……どう見ても何処にでもあるような打撃用手甲には見えないニャ、絶対に何か隠しているニャ……」
そこら辺にいる半人前の鍛冶師は騙せても自分は騙せないぞという目でロンキはスプリングの言葉を疑う。ロンキの目はやはり正しく、スプリングの腰にぶら下がる打撃用手甲は何処にでもある代物などではなく、このガイアスという世界に一つしかないといっても過言では無い代物であった。
その正体は冒険者や戦闘職ならば誰しもが喉から手が出るほどに欲する代物、伝説と名の付いた武器であった。重ねて言えば、スプリングが持つその伝説の武器は、その伝説の更に上を行く代物である。
その事実を他人に知られたくないスプリングはロンキに嘘をついたのだ。それは伝説の武器自身も同じ思いであった。
《主殿、何処にでもあるというのは少し引っかかる物があるが、私の正体を口にしなかった事、感謝する》
自我を持つ伝説の武器、スプリングが所有する武器、打撃用手甲が伝説の更に上をいく理由がそれであった。武器でありながら自我を持ち、会話することが出来て、自らで判断することが出来る彼の名はポーン。
その自我を持つ伝説の武器ポーンは所有者にしか聞こえない声で何処にでもある打撃用手甲という発言に多少不満を漏らしながらも自分の正体を明かさなかったスプリングに感謝の言葉を告げた。
「……うーん、どう見てもただの打撃用手甲にはみえないニャ……ちょっと……ほんのちょっとでいいから近くで見せて触らせてほしいニャ」
自分の願いに応じてくれないスプリングに対して欲望を更にむき出しにしたロンキの表情は、さながら特殊な性癖を爆発させたような者のそれと非常に酷似していた。
《あ、主殿……頼む絶対にあの者に私を触れさせるなッ!》
武器に背筋というものがあるならば、ポーンの背筋は凍っていた。スプリングが初めてロンキと対峙した時からポーンはロンキに異様な気配を感じていた。その正体が今はっきりと分かったポーンは、取り乱すように必至でスプリングにロンキを自分に近づけさせるなと願った。
「……」
今までに無いポーンの取り乱し様に戸惑いながらも、ポーンの存在がばれてはいけないと必至で平静を装うスプリング。
《あの変態的な目、奴は、私を隅から隅まで弄ぶ気だ、それは断じておこなってはならない……私という存在自体が崩壊する可能性がある!》
更にロンキを近づけさせてはならない理由を重ねるポーン。存在が崩壊ってそれは大げさすぎないかと思うスプリングではあったが、普段冷静であるポーンがここまで慌て乱れるからにはそれなりの理由があるのだろうと納得した。
「わ、悪いなそれは出来ない、さっきは何処にでもあると言ったが、こ、これはその……そう! 形見なんだ、とても大切な物だから他人には、あまりみせたくないし触らせたくないんだ」
今まで二度、大きな迷惑を被ったが、それ以上に色々と助けられたひとも多いスプリングはポーンを守ろうと必至で苦し紛れな嘘を重ねる。
「形見か……うーん、その武器から感じられる不調の原因が分かったかも知れないのだがニャ、それじゃしょうがないニャ……」
「不調……だとッ!」
『主殿ッ! ……あっ……』
ロンキが発した不調という発言に思わず素の声が零れだすスプリング。何を隠そう、その不調こそがスプリングが被った迷惑の原因であった。その不調すらロンキの目には見えていたのだ。
スプリングの失言に髪入れずに注意するポーンであったが、既に遅かった。
「あちゃー」
スプリングとポーン、ロンキの会話に入る隙が無くただ静観していたソフィアは、突然発せられたこの場の誰のものでも無い声に頭を抱えた。
「……今の声は何ニャ……?」
スプリングの腰に視線を向けていたロンキの猫耳がピンと反応する。だがその耳や言葉とは裏腹にロンキの表情は、突然発せられた声に驚くと言うよりもやっと尻尾をだしたなという好奇心のほうが強かった。
スプリング達にとって嫌な時間が流れる。
「……はぁ……ドジを踏んだのはお前だ、後はお前が何とかしろ、ポーン」
もう隠しきれないと判断したスプリングは、一つため息を吐くとポーンに話しかけた。
『そ、そんな酷いぞ主殿! 私をこの毛玉から守ってくれないのかッ!』
今までロンキにその存在が知られないよう配慮していたポーンであったが、スプリングの言葉に思わず声を荒げた。
「ふむふむ、喋る……いや自我を持つ武器かニャ……」
そう言いながらロンキは猫特有の気配を感じさせない動きでスプリングに近づくと腰にぶら下がったポーンをマジマジと見つめゆっくりと手を伸ばした。
『主殿ッ!』
「お、おおお!」
ポーンと言い合っていたスプリングは、そのポーンの叫びでロンキが接近していたことに気付き驚きの声を上げながら素早く距離をとった。
「ああ、後少しだったのにニャ……」
ポーンに触れることが出来なかったをことこれでもかという程に悔しがるロンキ。
「そうだ、拳士君、その打撃用手甲を私に譲ってくれないかニャ、その代わり全身全霊を込めて私が代わりの打撃用手甲を無料で作ってあげるニャ!」
「……いやそれは……」
『その間は何だ主殿!』
「……ああ、そうだったニャ、拳士君は剣聖を目指していたんだったニャ……だったら剣聖になった時、私が全ての装備を作ってやるニャ……」
一代で日々平穏という防具屋をガイアス一にしたロンキ。鍛冶師としての才能ばかりでは無くしっかりと商人としての才も待ち合わせているロンキは、スプリングがこの交渉に確実に落ちるだろう条件を提示してみせる。
「グッハっ! ……ぜ、是非おね……」
『主殿! こんな毛玉が作った武器よりも私の方が優秀なはずだ!』
提示された条件にスプリングの欲望が負けた瞬間、すかさずその言葉を遮るポーンは、自分の方が優位であることを叫ぶ。
「うーん、中々に難しいニャ……それならそこの剣士のお嬢さんの武器や防具も私が全て作るというのはどうだニャ?」
スプリングとの交渉がポーンによって阻まれたロンキは、それならと更に条件を追加する。
「……残念、私あなたのことよく知らないから……」
自分に視線を向けたロンキの条件にソフィアは全く反応を示さず冷たくあしらった。
『ソ、ソフィア殿ッ!』
もし剣に目があるのならば、ポーンはソフィアの言葉に感動の涙を流していた。
「それに、ポーンは最終的には私の物になるのよ……交渉はそれからにして」
『えッ?』
感動の涙を流していたはずのポーンの目から突然涙が消える。
「あーなるほど、なるほどニャ……中々に剣士のお嬢さんはがめつい所があるニャ……」
ソフィアに商人としての素質を感じるロンキ。
『と、兎に角だ、私が嫌だと言っている、この交渉は不成立だ! わかったかこの変態毛玉が!』
「私は毛玉じゃないニャ」
「ああ、変態は認めるんだ」
『ええい五月蠅い! さあもう用はないだろう帰るぞ主殿!』
無理矢理話を終わらせ、この場から立ち去ろうとスプリングに話しかけるポーン。
「……」
しかしスプリングは全くポーンの言葉に従おうとはしない。
『主殿ぉおおおおお~!』
剣に腹があるならばねポーンは腹の底から声を振り絞りスプリングを呼ぶ。
「まあ待てポーン、真面目な話、お前をこいつに渡すことはしない……だが……」
そう言って一旦言葉を切ったスプリングは自分の腰にぶら下がるポーンに視線を向けた。
「お前もいつまでも不調のままだと困るだろう? というかそれだと俺が困るんだ」
『わ、私は不調になってなど……』
「だったら今俺は、拳士になんてなってないだろう……」
ポーンの言葉に少し呆れながらスプリングは再度ロンキに視線を向ける。
「……こいつの不調の原因を調べてくれないか……触れずに……という条件付きだが……」
ポーンの不調の原因が何であるのか、それが気になっていたブリング。そもそもその原因が分からなければ、自分の夢である剣聖への道が一向に遠のいていくと考えていたスプリングは、ポーンに不調がある事を見抜いたロンキにその原因が何であるか触れずにという条件付きで調べて欲しいと依頼を出した。
「触れずにって……それは難しいニャ……」
「ふん、無理とは言わないんだな……流石ガイアス一の鍛冶師……だ」
それが鍛冶師の意地なのか、それとも鍛冶師としての自信からくる言葉なのかスプリングには分からない。だが無理と口にしなかったロンキの言葉にスプリングはニヤリと笑みを浮かべる。
「もし不調の原因が分かったら、その不調を直す作業もお願いするってのはどうだ? 勿論その時は触れてもいい……」
「ニャ!」
両耳をこれでもかという程伸ばし興奮した顔つきになるロンキ。
「ただし……変な事をしたら即座にお前を殴り殺すから覚悟しておけ……」
だが釘を打つのは忘れないスプリングはロンキがへんな事をしないよう脅しを入れた。
「うんうん、大丈夫ニャ! 私に任せるニャ!」
だがその脅しが効いていないのかロンキは興奮した顔つきのまま慌ただしく何かの準備を始めるため鍛冶場を右往左往する。
「……ポーン……そういうことだ、大人しく我慢してくれ」
スプリングにはポーンの我儘を聞いているだけの時間は無い。早く剣聖にならなければならない理由、そしてその先に待つ復讐を遂げるという使命があるからだ。
『主殿……ふぅ……分かった、私も覚悟を決めよう』
納得してはいないという雰囲気を持ちつつも、心を決めたようにも聞こえるポーンの声がスプリングの耳に触れる。
「それじゃ! ここにそのポーンちゃんを置いてほしいニャ!」
そう言いながらロンキは、武器を置く為の台座を指差す。
『ちゃ……ちゃんだと!』
心を決めたのも束の間、まるで愛しい愛玩動物を愛でるような口調で自分の名を呼ぶロンキにすぐにその決めたはずの心が揺れ始めるポーン。
「ここでいいんだな」
スプリングはロンキが指差す台座にポーンを置く。
「それじゃ始めるニャ」
そういうと先程の欲望に満ちた表情が嘘と思える程にロンキの表情は鍛冶師のソレに変わり台座に置かれたポーンをマジマジと見つめ始める。
「……」
時間にしてみればものの数分。だがロンキから発せられた鍛冶師としての雰囲気が周囲に緊張をもたらし長時間そうしているかのような錯覚を生み出す。
「ふぅ……見れば見る程凄い代物だニャ……」
「……何か分かったのか?」
一息つくロンキの言葉に何か分かったのかと話しかけるスプリング。
「……うーん、原因については中々……ただポーンちゃんが何の鉱石で作られているかははっきりと分かったニャ」
「鉱石?」
「うん、こりゃ物凄く珍しい鉱石、月石ニャ」
「月石(ムーンロック?)
聞き覚えの無い鉱石の名に首を傾げるスプリング。
「うん、鉱石はその性質や強度によってランク訳されているのは知っているかニャ?」
「確かオリハルコンとかアダマンタイトとかが最高ランクだったよね」
ロンキが話す腰売石の話に興味があるのか静かに話を聞いていたソフィアが二人の会話に入ってきた。
「そう、現在その二つの他に数種類の鉱石や金属が最高ランクに位置付けられているニャ……ただ、その最高ランクを超えるランクに位置付けられる鉱石が一つだけあるのニャ」
「それが……月石」
「そうニャ……その名の通り月から採掘された石と言われているニャ……鉱石自体は少ないけど発見されているがどうやって採掘されたのかは何処で採掘されたのかは不明、現在の技術では加工することは愚か砕く術も無いニャ……」
「月で採掘されたんじゃないの?」
「剣士のお嬢ちゃん、何で月にいけると思うんだニャ?」
ソフィアの発言に驚いた表情を浮かべるロンキ。
「え? ……だって……あれ何で私、月にいけると思ったんだろう?」
自分が口にした言葉に首を傾げるソフィア。
「まあ、兎に角ニャ……月石はその色と何処で採掘されたか分からないことから、月で採掘された鉱石なのではないかという意味を込めてその名が付いたのニャ」
「へー」「ほー」
ロンキの月石の説明に感心するスプリングとソフィア。
『私が月石で作られていることは事実だ』
月石で自分が作られているという事を肯定するポーン。
「もしかして月石の採掘場所や加工の仕方なんかも知ってはいないかニャポーンちゃん」
自我を持つからこそ、会話できるからこそと月石について何か情報を持っているのではないかとロンキはポーンに月石のことについて聞いた。
『ちゃんは止めろ! ……残念だがその情報に対して現在封印が欠けられている』
「封印……はぁぁぁぁ流石伝説を超える武器ニャ、ただ今のポーンちゃんの言葉で更に分かったことがあるニャ」
「分かった事って?」
喰いつくようにロンキの話に体を乗り出すソフィア。
「君達は古代人形という存在を知っているかニャ?」
「古代人形?」
ロンキの問に首を傾げるソフィア。
「遺跡何かでよく転がっている古代の遺物だろ? 時たままだ動いている奴もいるって話だが俺はまだ見たことがないな……」
自分の記憶を掘り起こし、今まではいったことがある遺跡で見た古代人形の残骸を思いだすスプリング。
「そう、古代の遺物といわれる古代人形には、ポーンちゃんに使われている封印と同じ術式が組み込まれている……そして唯一現在現存している月石の加工品が古代人形なんだニャ」
「て、ことは……」
「そう、少なくとポーンちゃんは古代人形と同じ事態、もしくはそれよりも以前の時代に作られたということになるニャ……」
「お、お前……一体どんだけこの世界にいるんだよ? ……古代人形がしっかりと動いていたっていうと……」
「約4000千年前だニャ……」
「よ、4000千年ッ!」
その数字に驚きを隠しきれないソフィア。
「そうだニャ~いや、本当にポーンちゃんは凄いニャ!」
驚くスプリングとソフィアを前にホクホク顔でポーンの凄さを再確認するロンキ。
「とりあえず、途方もないことは分かったな……ああ、何か疲れたな……」
全く想像も付かない話をされ瞬時に疲労が顔に出るスプリング。
「……今日はこんな所にしてこの話はまた明日にしようよ、私も話が壮大になりすぎて頭がパンパン」
スプリング同様、ポーンの新たな情報に疲れが表情に浮かべるソフィアは、もう今日は話を聞きたくないとこの話を次の日に持ちこそうと提案する。
「そうだな、俺も腹が減った……」
スプリングは腹を摩りながらポーンが置かれた台座に近づく。
「それなら今日はここにポーンちゃんを置いていくといいニャ!」
『ふざけるなお前と一緒に一晩過ごすなど絶対にありえん!』
全身全霊を持ってロンキの言葉を拒絶するポーン。
「ああ、悪いがポーンは持ち帰る、また明日来るから、絶対にここにいろよ」
「うーん、残念ニャ……でも分かったニャ! また明日ここに来るニャ!」
ポーンと一晩を過ごせない事を心底残念がるロンキ。だがまた明日会えるという事実に満面の笑みを浮かべていた。
― ヒトクイ ガウルド 日々平穏一号店前 ―
「それにしてもただ防具を買いに来ただけのはずが……なんか濃い一日になったな」
すっかり陽が落ち、暗くなった空を見上げながらスプリングは疲れた表情でそう呟いた。
「そうね……本当、濃い一日……」
スプリングの言葉に頷き今日の事を振り返るソフィアは突然言葉を止めた。
「ん? どうしたソフィア?」
突然喋ることを止めたソフィアに首を傾げるスプリング。
「な、何でも無いわよ、さあ宿に戻ろう」
スプリングの視線を避けるように背を向けたソフィアはそのまま自分達が泊まる安宿がある方角へと歩き始めた。
「なんだ急に?」
突然様子がおかしくなったソフィアに再度首を傾げるスプリング。
『はぁ……全く主殿は馬鹿が付くほどに鈍感だな……』
「はぁ? お前、そんなこと言うとあいつの所に置いていくぞ」
『なッ! それは勘弁だ主殿ッ!』
「二ヒヒッ」
ポーンの弱点を握ったスプリングは満足そうに笑みを浮かべると小走りで先を行くソフィアの後を追うのであった。
陽が沈みいつものようにガウルドに夜が訪れる。しかしこの日は、いつもの夜とは異なっていた。それが微々たる変化なのかそれても大きく変化した夜なのか、気付く者は少ないかも知れない。
だがガウルドの夜空に昇る月がまるで赤い血を垂れ流すように真っ赤に染まっていたのは事実だ。
その赤い月が何を示しているのか今は分からない。だがそれが幸運を告げるような代物では無く、何か悪いことが起こる前兆であることは明らかであった。
ガイアスの世界
月石
自我を持つ伝説の武器ポーンに使われている素材が月石であることが判明した。だが現段階では、その月石が物凄く珍しい鉱石であるということとだけである。




